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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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戻ってくる者たち

「首領……どうして」

「コウガおじさん……」


 完全にコウガの気が遠くへ確認し振り返ると、サガとカノンが呆然しながら涙を流している。二人のことを思えばバラしてしまった方が良いのだろうけど、ヨシズミ国の内情を敵に流していた罪が消えなくなってしまう。


勇者によって撃退され死んだ、そのていがあってこそ彼がこの国へ帰って来られるのだ。自分を勇者というなど虫唾が走るが、しょうがない相棒を助けるためには喜んで使おうと思った。イーシャさんには二人を連れて先に帰ってもらい、町長に勇者ジンによってコウガは倒され死んだと報告してもらう。


「う……」

「ここは」


 三人が去って少し間があってからアラクネと大型花が目覚める。二人に具合はどうかと尋ねてみたところ頭が痛いという。本来ならすぐに休ませてあげたいが、念のため警護を付ける必要があるのでこれまでの状況を説明した。


自分たちがこちらに対して攻撃を行っていたと知り、二人はショックを受けうつむいたものの、すぐに顔を上げテオドールに対し復讐をしたいと言ってくる。個人的には二人は戦力になるので有難いし、洗脳される前であれば連れて行きたかった。


今回の件がありもう一度洗脳されないとは言い切れないため、さすがに連れていけないと断る。二人だけではなく他にも最後の戦いには連れて行かないので、彼女たちと協力し帰ってくる者たちのフォローを頼むと告げた。


アラクネにまるで遺言のようだと言われたが否定せず、笑顔で約束を守ってくれたら有難いともう一度頼んだ。二人は頷いてくれ出来る範囲内で守ると約束してくれる。別の種族だし自分たちの身の安全を第一に考えて欲しいとも伝えると、言われなくともそうすると答えた。


 三人で町に戻ると町長が待っており事情を改めて説明する。大型花は町営の畑でいつも立っている兵士が見ることになり、アラクネも同じ場所で自分の種族を連れず待機すると言う。テオドールを倒せば彼女たちを操る者は居なくなる、戦いが終われば大丈夫ですと町長に伝えた。


「娘のことを頼む」


 こちらの報告が終わり、町長からギルドのその後の報告が終わるとそう言われる。彼女はとてつもなく強くなったし自分も出来る限りフォローします、最後の戦いには連れて行かないので大丈夫でしょうと答えた。次が最後ではないのかと聞かれるも、スの国がありそこにあちらの切り札がいるのでと言うと、町長は大きく溜息を吐く。


「早く無事終わって、お前と出会った頃くらいに平和になると良いなぁ」


 苦笑いしながらそう言って彼は去る。あの頃も陰謀渦巻いていて平和とは言えなかったが、今の陰謀も渦巻き戦いも続いている状況よりはマシだなと思った。町は変り果てギルドも閉鎖し冒険者は皆兵士になっている。


これが健全でないことは誰の目にも明らかだった。混乱が発生すると人間の悪の部分が顔を出すんだな、とギルドのその後を町長から聞いて思う。ヨシズミ国の混乱に乗じ、新しく就任したギルド長は審査もせずに適当な人員を送り込み、多額の報酬を要求していたようだ。


新ギルド長は国にスパイを送り込んでしまった件が明るみになると、ギルドの金を全て持ち逃げしてしまったらしい。事務員も彼が連れて来ておりその人物たちも全員消えている。


ギルド運営を代行するノガミ一族も仕事が山積みだったが、なんとか対応したものの僅かな隙を突かれたという。手配したものと新ギルド長一味を指名手配しており、見つかり次第処断すると聞く。


ヨシズミ国へ増援が早く決定したのも、そう言った経緯があったからのようだ。


「ジン! お疲れ様だ!」


 もうすっかり日も登り朝を迎えており、考えながら歩いているとあっというまに教会に着いてた。長い長い夜だったなぁと思いながら、出迎えてくれたシスターにおはようと告げる。


一度寝るかと聞かれたが問題無いと答え、朝食を取った後はいつも通りの一日を始めた。猶予は一日だってないのだから、一瞬たりとも無駄にする訳にはいかない。


 テオドールとイエミアの襲撃から二、三日経ったが、襲撃以外は何事もなく過ごせていることに驚いている。こちらがわざと進軍を引き延ばしているという、噂話くらいは市井に流しそうに思ったからだ。


恐らく面倒を見るのが大変なんだろうが、クロウすらやらないことをやるからだと考え同情はしなかった。そのクロウはというと、相変わらず終始気持ち良さそうにこちらの左肩で寝ている。


シシリーも皆が心配するほど寝ているけど、こちらは偶に起きて食事をし皆とおしゃべりしていたので、心配はされるがマシな方だった。


「うほー! 先生おねがいしやす!」


 ゴリラかと思えば変な口調で下手に出たりとなんだかわからんが、嬉しくて言葉が可笑しくなっているのは理解する。ついに回復しエレミアと共にノーブルが合流した。あんまり張り切りすぎると怪我をするぞと忠告するも、大丈夫ですと鼻息荒く即答する。


興奮冷めやらぬ様子に困り、タクノに目を向けると溜息を吐きながら首を横に振った。あの様子からして今日という日をずっと堪えて待っていたのだろう。さっそく稽古をと希望されたがその前に体をゆっくり慣らしてからだと断る。


気持ちを汲んでやりたいところではあるものの、最後まで連れて行く予定なのだからここでまた怪我されたり、怪我が癖になると不味い。


「先生、私は如何しましょうか?」


 久し振りに面と向かって会うエレミアを見て、少し気恥ずかしくなり鼻の頭をさすりながら、君も同じだよと答えた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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