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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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魔女の孫の決意

「イーシャ……なぜここに!? あぐっ」


 こちらも驚いたがイエミアも驚きうろたえ隙が出来、それを見逃さずイーシャさんはボディに一撃入れる。よく見れば長かった髪をバッサリ切って短くし、凝った装飾の黒いチャイナドレスに変わっていた。


彼女の戦いに掛ける決意を垣間見た気がして見入ってしまう。


「くぅっ……傀儡ども、行け!」


 目を離したすきに腹を抑えながら指示を出したテオドールを、手加減することなく思い切り蹴り飛ばし、イエミアのフォローに入ろうとする蜘蛛やクライドさんも蹴り飛ばす。こちらが処理する間もイーシャさんは凄まじい猛攻を仕掛け、逃げようとするイエミアに一切の隙を与えない。


見た目だけでなく、以前までの彼女とはまるで別人のような動きに目を見張る。町に帰って来てその荒廃を目の当たりにし、御屋敷に戻ったきりになっていた。素質で言えばイエミアの孫であるだけでなく、冒険者としても活躍した町長と奥様の娘であり、強くなる可能性は誰にも負けないものがある。


かなりショックを受けて実家に戻ったが、そんな彼女を見兼ねて奥様や町長が鍛えたのかもしれない。故郷が破壊されたことへの想いや実戦経験を経たイーシャさんなら、なにかの切っ掛けで覚醒しても可笑しくはなかった。


除災招福(じょさいしょうふく)!」


 元々口数が少なく大人しかった彼女が感情をむき出しにしている。例え実の祖母だとしても、いや実の祖母だからこそ、愛した町を住民を傷つけたのが許せなかったのかもしれない。イーシャさんの覚悟を後押しするべく、再度この場に除災招福(じょさいしょうふく)を唱えた。


不動明王様お墨付きの邪悪な存在であるイエミアは、こちらが唱え終え場に光が広がると動きがさらに鈍る。


「お婆様……どうして」


 イエミアが両手両膝を地面に着いたところで、イーシャさんは彼女に問いかけた。事情を知っているこちらからすれば、彼女の問いにイエミアは答えられないだろう。ノガミ一族をこの星から消し去るために行動しており、そのためなら誰であろと手加減しない。


血が繋がっているイーシャさんと奥様に対し容赦なく攻撃し、重傷を負わせたことで証明されている。


「イーシャ聞いて頂戴。これは必要なことなのよ?」


 泣き落としをしようとしたのだろうが、町を傷つけられてキレているイーシャさんに対し、それが必要なんだというのは禁句だろう。両肩を掴み強引に発たせると離れたところにある木を目掛け、イエミアを投げつけた。


「ジン様、お婆様を拘束してください」


 こちらを見ずにそう言うイーシャさんに対し分かったと答え、羂索を出しながら木の下に転がるイエミアに近付いて行く。他の誰かに倒されるよりも孫娘に倒されるなら彼女としても本望だろう、そう思い縛り上げようとしたところで、三つの気がこちらに高速で近付いて来る。


テオドールとクライドさんは思い切り蹴り飛ばしたので、こんなに早く戻っては来れないだろう。カットに入ってくるとすれば、先ほどから出ている蔓の本体と蜘蛛のリーダーしかないと思った。


「イーシャさん地面から生える蔓と蜘蛛に警戒して!」

「はい!」


 とりあえずイエミアを拘束しようとしたところ、地面から蔓が伸びあっという間に彼女を包んで地面に消える。羂索を放ち追跡しようとしたものの、今度は側面から何かが飛んで来て妨害された。間一髪避け木に刺さったそれを見ると、真っ白な針のようなものが刺さっている。


嫌な予感がして急いでイーシャさんを脇に抱え逃げようとしたが、いつの間にか四方八方に蜘蛛の巣を張られてしまっていた。三鈷剣に青白い炎を宿らせ焼き払おうとするも、先ほど飛んできた真っ白な針が次々とこちらに向かってくる。


斬り払おうとした時に今度は蔓がまた地面から生え、こちらの足を取ろうとしてきた。二つ同時に処理するのは厳しく針のみを処理しようとし、イーシャさんを蜘蛛の糸に付かないよう上に放り投げ、蔓に巻き付かれながら焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)を放つ。


問題は体の自由を奪われた今、こちらに近付いてきている三つの気をどうやって迎撃するかだ。三つのうち二つはアラクネと大型花だとして、あと一つは誰だかわかっていない。トップ二人が襲い掛かって来たとなれば、シンラが直々に出て来ても可笑しくはないだろう。


そうなればこちらにとっては非常に不味い展開になる。騒ぎを聞きつけてシスターたちが来てくれれば何とかなるが


「ジン様、少しお待ちを」


 蔓の隙間からイーシャさんの声が聞こえ、少し間があった後でなんと蔓がすべて消えてしまった。いったい何が起こったのかと思い、辺りを見回すとイーシャさんが両手に青白い炎を宿していて言葉を失う。


あの炎はこの世界のものではないが、ヤスヒサ王の直系が気を上手く操り伝説の武具を使えるように、イエミアの直系だから使えても可笑しくはない、とうことなのだろうか。


「イーシャさんありがとう」

「いえ、ジン様のお役に立ててなによりです。これまでの不義理を取り戻せるよう頑張ります」


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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