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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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血が呼ぶ者

「まだだ! まだ終わらんぞぉおお!」


 三鈷剣(さんこけん)を投擲した方向から叫び声が聞こえた後で、ガサガサと音を立てながら蜘蛛に乗ったテオドールが現れる。気が付けば周囲を蜘蛛に囲まれており戻ってきた剣を掴み構えた。蜘蛛が襲い掛かってくるかと思いきや、今度は地面から蔓まで生えてくる。


足元が不安定ながらも踊るように動きながら後ろに下がるも、蜘蛛の糸が背後に飛んできてまっすぐ下がるのを妨害された。この場から逃がさないという意思を感じる。テオドールも含めこの場でケリを付けようというのか。


勝算があるだけでなく自分の望みを叶える算段を付けたからこそ、彼は強攻に打って出たのだろう。深謀遠慮の彼をして捨て身の攻撃をさせるほど、最後の敵は手強いらしい。回避しながらテオドールの元上司であるクロウを見たが、まだ肩でゆっくり寝ていた。


「逃げ続けられるかなぁ!? お前の知人であるこの男は存外腕が立つぞ!?」


 蜘蛛の糸や蔓の攻撃を避けつつクライドさんの剣も回避した。幸い攻撃を掻い潜り包囲網をズラしているお陰で、糸や蔓に絡まれず済んでいる。遅れてくるクライドさんをテオドールが蜘蛛に乗りながら掴み、糸や蔓の残骸を回避して来ていた。


下がりながらもこのままでは町に入ってしまうと考え、急ぎ顕現不動(けんげんふどう)モードに切り替える。青白い炎を出現させ剣に纏わせると地面に突き刺した。炎は地を這い糸や蔓を焼き払いながらテオドールたちにも襲い掛かる。


「私には効かないわよ?」


 あと少しというところで今度はイエミアまで現れた。敵のトップがこんなところまで出張ってくるとは、本気でここで決着をつけるつもりらしい。


「テオドール、ここは私が変わるから下がりなさい」

「御冗談でしょう? 今は私のターンのはずです」


 二人同時にくるかと思ったものの、イエミアはテオドールの前に立ち手を広げ進路を妨害する。彼らはそこから口論を始めた。あれを作ると決めたのはあなただとテオドールが言うと、イエミアは男はいつも責任を逃れようとすると反論する。


 夫婦喧嘩みたいなことをしている二人を黙って見守りつつ、深く静かに息をしながら一撃で葬り去れるほどの気を溜め始めた。すべての元凶二人が前線に出て来て目の前に並んでいるという、絶好のチャンスを逃す手はない。


一軒家を挟んだくらいの距離にいるので、素早く構え打ってから到達する速度が速い技が良い。今青白い炎を剣に纏わせているが、剣技系と焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)では動きが大きく、この距離では逃げられる。


拳技の風神拳か竜牙拳の二つのどちらかしかない。慣れて速度が上がった風神拳と、あらかじめ溜めた気で省略が可能且つ速度も速い竜牙拳、かなり迷いどころだ。どうしたものかと視線を地面に落とした時、町に近付いたがこの辺りは夜の迎撃によく来ている地点ではないか、と思い見渡す。


門の近くまで来ておりこの付近で除災招福(じょさいしょうふく)を使用した覚えがあった。悪霊系を倒すだけでなく場も清める技であり、不動明王様の加護がある状態なら威力も増すのではと考える。


幸い顕現不動(けんげんふどう)モードに移行しており、ここは自分の仮説を信じ慣れ親しんだ技で行こうと決めた。注意しなければならないのは正面の彼らだけでなく、蜘蛛の糸と蔓からしてあの二人がまだどこかにいるということだ。


二人がスパイというよりは、あらかじめ何かあった時は従うような設計になっていたのだろう。出来れば生き残らせたいところだけど、一対多数且つあの二人がいる状況では手加減は不可能だ。


「ああだこうだ言っても仕方ないわ。アイツを皆でさっさと倒してしまえば良いのよ」

「まぁ一理ありますねぇ。おしゃべりしているよりは戦っていた方が有意義ですし」


「風神拳!」


 方針が決まりこちらを向いたと同時に風神拳を放つ。踏ん張る足から力が流れ込み、いつもよりも大きく早い風が巻き起こる。全員逃げようとしたが遅く直撃したと思ったのも束の間、クライドさんがワープするような動きを見せ、テオドールとイエミアを突き飛ばし彼だけ吹き飛ばされた。


「ちぃっ……技がいつもの威力と違うじゃないの!」

「もらった!」


 突き飛ばされた衝撃で転がり木にぶつかって止まったイエミアは、寄りかかりながら立ち上がったものの、背後から何者かが現れ攻撃を受ける。彼女をフォローしに行こうとしたテオドールをこちらが距離を詰め、腹に一撃入れて足を止めた。


「くっ!? 誰なの!?」


 背後から現れたのが誰か分からず混乱するイエミアに対し、相手は答えず攻撃を続ける。見れば黒いローブとフードを身に纏っており、まだ夜明け前ということもあってか薄暗く分からない。最初誰か分からずこちらも混乱したが、攻撃方法は打撃なので限られていた。


「いい加減に、正体を見せろ!」


 隙を突いてイエミアが近距離から放った青白い炎は、顔に直撃すると思われたものの、読んでいたかのように素早く身を屈めて避ける。


「くらえ!」


 完全回避とはいかずフードにかすりローブもろとも燃え始め、正体が露になる。炎をものともせずに攻撃を続けているその姿を見て驚いた。黒いローブとフードを纏って攻撃していたのは、なんと町長の娘でありイエミアの孫娘でもある、イーシャさんだったのだ。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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