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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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クライドさんとの再会

消えた戦力をそう簡単に補充も出来ないだろうし、こちらがラの国に足を踏み入れた瞬間に発動する罠を設置したか、もしくはそのままスの国へ引き込もうとしているのかもしれない。彼の絆創膏の原因は切り札を持て余している証拠だろうし、可能性としては後者の方がありそうだ。


絶対的な自信はないので被害の件を煽って反応を見ようかと考える。もし確実なら疫病の研究所を潰された件と連続だし、いつも余裕で見透かしたように笑う男であっても、かなり堪えるだろう。


「あ、そうだ。前に山の上から焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)打ってごめんね? クロウが打てって言うからさ、打たざるを得なくてさ。あれ、大丈夫だった?」


 無表情で言ったところ声にならない声を上げて去って行った。上手くいってないんだなと呟きつつ横になるも、あの様子ではそう時間も経たずに襲撃を仕掛けてくるだろうと読み、仰向けになってのんびりと月を眺めるに留める。


「ジン殿!」


 起きてようとしたもののついうとうとしてしまったところに、下の方から呼ぶ声がしたので目を開け気を広げた。元家があった方向に大きな気が一つあり、こちらを読んだ声の主を見て了解とだけ告げそちらへ向かう。


空を見上げると夜空が薄まりかけており、朝の境目くらいだなと思いながら現場へ走る。火事に遭ってから誰も立ち入っていない様で、草が伸び放題になっており獣道に変わっていた。すべてが夢の跡と言わんばかりの光景に、一抹の寂しさを感じながら現場に到着する。


「余程こちらの指摘が効いたらしいな」


 幸せだった頃の跡地に到着すると、そこには黒い鎧を身に纏った金髪の成人男性が一人立ってた。よく見ればそれは行方不明になっていたクライド・イシワラさんで、こちらを見るとすぐに剣を引き抜き構える。


行方不明になったと聞いた時点で殺されても可笑しくは無いし、生きているとすれば普通であるはずはない。目を見れば瞳孔が開いていたので、イエミアあたりに魔法で無理やり従わされているのだろう。


それにしてもいくら手持ちが厳しいとはいえ、切り札となりそうな手札をここで切ってくることに驚きを隠せない。図星を指され冷静さを失い切り札の一つである彼をけしかけて来た、額面通りに受け取るならそうだろうがそんな素直な男ではないはずだ。


もう一つや二つ罠を仕掛けてくるに違いないと警戒しつつ、三鈷剣(さんこけん)を呼び出し構える。クライドさんと剣を交えるのは確か初めてだが、重さも早さもノーブルに引けを取らない物を持っており、別の形でこの腕前を見たかったなと残念に思った。


アの国攻略前などに仕掛けられていれば、戸惑った隙を突かれ斬られていても可笑しくはないが、今はもう状況が変わっている。どれほどか確認するため避けて逸らしていたが、確認を終えたのですべての攻撃を弾き返し彼を後退させた。


構え直し再度攻撃を仕掛けようとしていたので直ぐに距離を詰め、剣を思い切り叩きつけて左へ弾き飛ばし切っ先を突き付ける。イエミアの洗脳を解くにはどうすればいいか考えたが、ここは機能停止させシスターに見てもらうのが良いだろうと思い、拘束すべく左手に羂索を呼び出した。


「甘いですねぇ!」


 地面から手がにゅるりと生えてくると同時にテオドールの声が響く。まさか本当に冷静さを欠いてここで決着をつける気かと驚き、地面に生えた手を斬り払いながら下がる。てっきりクライドさんを捨て駒にするのかと思ったが、あらかじめ見せておき次の対戦で動揺を誘う作戦なのだろうか。


洗脳が完璧で解けない自信があるのだろうけど、手の内をこちらに見せてくる余裕があるとは驚きだった。こちらで考えられる隠し玉としては最近見ないコウガくらいだろう。彼もアリーザさんがさらわれたことを悔いていたし、名誉挽回のために偵察をしていた可能性が考えられる。


「ンフフ、色々考えていますねぇ。まぁ当たりといえば当たりですが、私の狙いとしてはお互いに最終局面ですので、スパイとかそういう邪魔くさい物を処分した方が、気持ち良く終われると思いまして」


 そのお互いの邪魔くさい物とやらをこちらは用意した覚えはないが、恐らくヨシズミ国としてということだろう。彼の言うこちらのスパイとは、アイザックさんとヤマナンさんの事だろうけど、あちらのスパイとは誰だろうか。


「我々が初めて出会った時、君と会うとは思わなかったと言ったがあれは嘘なんですよねぇ! 監視対象として挙がって来ていたし、事前にあそこへ行くと連絡を受けたのでわざわざ出向いただけでしてぇ」


 こちらが困惑しているのを見てかテオドールは楽しそうに話す。近くにいるだろうと考え気を広げてみると、少し離れた場所にある木の上に居たのでそこへ三鈷剣を投擲した。


「あなたも分かっていたはずです。私という男を知り尽くしているのであれば」


 彼の言葉を聞きテの国でウルクロウたちを捕えた時の、蜘蛛の巣が頭を過ぎる。あの蜘蛛の巣はシシリーだけでなく、体を借りているとはいえこの世界の神であるクロウを捕えた。彼の作った世界のこの星で生まれ育ったものに、果たしてそれが可能だろうかと考えれば難しいと言わざるを得ない。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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