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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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圧倒する力

どうしても変身しないなら仕方がない、また日を改めてと思っていたところで森の中から突風が巻き起こる。


「こうなったらもう手加減はしてやれない。死ぬ気で来い、ジン」


 発言から察するに最後の切り札として取っておきたかったようだ。知らないので無理もないかもしれないが、まだモードを二つ残しているんだよなと思い苦笑いしてしまう。何が可笑しいと言いつつ司祭は殴り掛かってきた。


変身した彼が強いのは変わらないものの、ライデンとの稽古や田上コウさんとの稽古を経たことで、顕現不動(けんげんふどう)モードでも余裕で対処出来ている。


自信満々だった司祭も違和感に気付いたのか動きが一瞬鈍り、その隙を突いてこちらが腹へ蹴りをいれると距離を取った。これまで外殻装着して負けたことはないだろうし、前回の対戦でも圧倒的だったので動揺するのも分かる。


司祭は自らを奮い立たせるように声を上げてから、再度攻撃を仕掛けて来た。フェイントを混ぜ動きのパターンを変えたてきたが、動揺が動きにも反映されてしまいあっさり捉えて殴りつける。


シンラに負けたことを経験として生かしていれば、動揺は最小限に抑えられた気がした。振り返ることなく動揺を抑えきれないまま攻撃を仕掛けてくる。


避けては攻撃を続けながら、もはや立場は逆転し最強で相手のいない自分ではない、そう実感する切っ掛けになってくれればと思った。


司祭は師匠とニコ様の子なのだし自分よりも若いのだから、自分が最強という誇りを捨て去ればきっともっと強くなれる。


「司祭、自分の全てをここで出せ! あなたはもう最強じゃない!」

「黙れ!」


 地面に叩き付けられ少し転がったところで踏ん張り立ち上がると、そのまま突っかかって来た。冷静さを欠いた彼のパワーは山に穴を開けかねないほど凄いが、避けてしまえば問題ない。


避け続けているうちに地面がへこんだのを見て、自然への被害を減らすべく拳を空へ逸らしつつ腕を取り放り投げる。叩き付けられる前に戻って来て攻撃し、こちらはそれを逸らせて投げるを繰り返した。


外殻装着した司祭相手に動きも力も最低限で済んでおり、白蓮花モードを出さずに終わりそうだなと思うと感慨深くなる。以前なら攻撃が通らず一方的にやられたのに、多くの助力を得て立場は逆転した。


司祭も早くに強敵と相対していれば、別の道があったんじゃないかなと思うと少し悲しくなる。以前圧勝した相手に圧倒されるのは屈辱だろうし辛いだろうが、死ぬよりはマシだろうと考え容赦なく追い込む。


攻撃が通らないことに苛立ったのか、彼は雄たけびを上げながら風神拳を放って来たものの、左手を思い切り突き出して掻き消してみせた。


あまりにもあっさり掻き消されたのを見て、彼は放心状態になったのか構えたままで止まっている。もはやこれ以上は無意味と考え、当初の目的を果たそうと思う。


自分はライデンのところまで吹き飛ばされたが、目的に沿うなら吹き飛ばす先は一か所だけだ。上手く出来るか自信が無かったものの


―右手方向へ木の上あたりへ向けて、気にせず思い切り


 という思念が飛んできた。初めて思念を受けたが身内が言うならそれが良いのだろうと思い、ゆっくりと司祭に近付く。


「もうすぐ最終決戦が始まる。これで会うのは最後になるがどうか元気で」


 微笑みながら丹田に集中し気を増幅させた。大地が震えると同時に構えを解き背を向け逃げ出したが、回り込みボディに一撃入れ背を丸めたところで懐に潜り込み、右腕を取りシャイネンへ向けて背負い投げをして放り投げる。


抵抗する気力も無くなったのか力なく回転しながら消えてく。自分より格下だと思っていた者に二回も続けて負ければ、さすがに応えるだろう。これで貸し借り無しだなと考えていた時、覚えのある気が一つこちらに近付いてきた。


「あれで良いかな、シスター」

「ぬはは、バレたか!」


 いつも通り豪快な笑い声をあげながら木の陰からシスターが出てくる。謝罪するのも変だし何と言ったものかと悩んでいたものの、あれで少しはマシになってくれることを祈ろう、そう彼女が笑顔で言ったのでこちらも笑顔で頷く。


個人的に気になっているのは、彼女と司祭は両親が同じだが受け継いだものも同じなのだろうか、という点だ。今日彼女から受けた一撃からすれば、外殻装着は出来なくともそれ以前であれば止められた気がした。


兄を止めたいと願っていたのに、一度も戦っていないというのも気になる。自分が最強であるという矜持を妹に折られれば止められただろうけど、その衝撃に耐えられるかと言われれば耐えられるとは言い切れない。ひょっとしたら兄を気遣ったのではないだろうか。


「シスター、ひょっとしたら君は彼より」

「そんなことはないぞ! 思い過ごしだ!」


 こちらの言葉を遮ってそう言い、笑いながら森の中へと消えて行った。今日司祭はこれでもかと折られたのだから、それ以上は無粋と言うことなのだろう。彼より強い可能性があるとなれば、稽古をもっと本気でやらなければと気を引き締めつつ、鉱山事務所の避難所へと戻る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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