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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第一章 営生を探して

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魔法少女たちと再戦

「これからどうします?」

「俺たち狩人や弓兵は塀の上に立ち遠距離攻撃を仕掛ける。お前たちは油や岩を塀から落とし町に侵入しようとする奴らを退けてくれ。ある程度片付けば門を開けて攻勢に出るだろう」


 ヤマナンさんは仲間に声を掛け塀に登り、俺は兵士の詰め所から出て来たダンドさんの指示に従い塀に掛ける階段の設置を手伝う。完成すると油の鍋や岩を運んで塀の上に行く。俺は他の人より力があるので攻撃では無く後方支援に全力を注いだ。


「ジン!」


 何往復目か忘れた頃、入り口近くから呼ぶ声がしたので見ると町長が手招きしていた。ダンドさんからもこっちは大丈夫だから行ってくれと言われ、他の冒険者からも何故か握手を求められながらそちらへ移動する。


「後方支援御苦労だったな。今回の功績は大だ」

「いえいえ、力が偶々他の人よりあったので運ぶ方が役に立てるだろうと考え行動しただけです」


「矢が無ければ弓兵も役に立たないのと同じ。お前が運んだからこそ敵を大分掃除出来た。敵とて無限にゴブリンを召喚出来ない」


 町長はある程度引いたので門を開け掃討作戦に移ると言う。だがまだ他の場所もあるので全ての兵士を出せないようだ。冒険者ギルドとも話し合い、国から許可も下りたので追加で緊急依頼を出し冒険者に先陣を任せると言う話になったようだ。


「お前は敵を見ている筈。町の近くの敵は他の冒険者に任せ森へ行け! そして敵を見つけたらソイツを最優先で討て! 本当なら私がこの手でやってやりたいが、今回はお前に譲る」

「分かりました。頑張ります」


 そう告げて門の前に移動。程なくして門が開き、俺は森へ向かって走る。まだまだゴブリンが居るが他の冒険者たちがゴブリンをしっかり処理して進んでくれているので、俺は盾でぶっ飛ばしながらも森へ向かって突き進む。


「ジン!」


 ゴブリンを倒しながら森を移動していると、シシリーがこちらへ飛んで来て肩に座った。突然の出来事に逃げるのが精一杯だったのか肩で息をしていて顔色が悪い。空いている右掌をシシリーの前に風を遮るようにして立てながら走る。


「少し休んで居てくれ。俺がコイツらを倒す」

「頼むわ。何かあったら教えるから」


 出会って初めてシシリーの弱弱しい声を聴く。しがみ付くのも辛いだろうと考え、ゆっくり鎖骨と鎧の隙間に押して入って貰う。大きく見れば同じ妖精だと言うので何かしらの影響があるのかもしれない。


妖精がこれだけ可視化されて溢れている状況が正常で無いのは俺でなくても分かるし、日本の鬼を緑にしたような妖精であるゴブリンは獰猛で機敏、見境なく頭を狙って躊躇なく攻撃し死を量産する。妖精でなくても気分が悪くなるだろう。


草むらを見ると、偶々居合わせたであろう人間が撲殺されているようで足だけ見えていた。森の空気が淀んでいるし血の匂いで鼻が可笑しくなりそうだ。こんなものが町の中にまで入られたら堪らない。俺は襲い掛かってくるゴブリンを躊躇なくぶっ飛ばしていく。


「ジン、あそこ!」


 ゴブリンを思い切り殴り飛ばし続けていると、シシリーが声を上げ指さす。流石に町の近くで召喚するほど愚かな連中じゃないとは思ったが、案外近かったので驚く。ひょっとするとゴブリンをしっかりコントロールで来ていないんじゃないか?


召喚者は別の人間なのか魔法少女はスライムの皮のようなもので自分を覆っており、その近くにはゴブリンが転がっていた。こうなると町の為だけじゃなく近隣の為にも早く召喚者を潰さないといけないと考え襲い掛かる。


「チッまたお前か!」

「久し振りだな! 引いたんじゃないのかヘンテコ杖!」


 魔法少女はスライムの皮で自分を覆うのに集中していて目を瞑っており、ヘンテコ杖がこちらを見て口を開くと紋様を浮かび上がらせた後、岩が飛んで来た。俺はそれを粉砕し挨拶をする。


「私に挨拶は無しかにゃ?」

「無いね!」


 口調はいつも通りだが、ゴブリンを退けたりするのに力を使い過ぎたのか顔色が魔法少女も悪い。ヘンテコ杖が岩を出し、魔法少女杖を振ると先ほどよりも素早く飛んで来たがしっかり見て粉砕し間合いを潰す。


「貴様……何か違うな!?」

「そんな訳ないだろう!」


 勿論嘘だがわざわざ真面目に答えてやる義理は無い。近寄らないよう岩を次々放ってくるが、粉砕すれば良いだけなので霧に比べたら大分楽だ。脇を締めてボクシングするように構え、粉砕しながら距離を詰める。


「ジン、危ない!」


 シシリーは鎖骨と鎧の隙間から飛び出て耳を引っ張ってくれたのでその方向へ飛ぶ。草むらへ入り元居た場所を見ると氷柱が刺さっていた。恐らくこれはこないだ農家の近くで村の自警団団長を捕らえた時に、団長を逃がすべく攻撃を仕掛けて来た奴の仕業だろう。


―レイメイ、ジロウよ……さっさとソイツを倒すのだ。ゴブリンが減っている―


「は、はい!」

「分かっとる!」


 氷柱を放ってきた声にレイメイ、ジロウと呼ばれた魔法少女と杖は返答し動き出す。恐らく魔法少女がレイメイで杖がジロウだろう。草むらから様子を窺っていたが、手当たり次第に攻撃をし始め木が倒れ小動物たちも巻き込まれていく。このままでは森が破壊されてしまう。俺は堪らず草むらを出て攻撃に打って出る。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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