舞い戻る二人
「まぁドジってばかりな上にシンラも倒され、重要な仕事からは見事はずされた。テオドールはお前さんにターゲットが映りこっちは無視されとったから、その間に組織に必要じゃいうていろんな場所に連れ回したんじゃ」
世界に触れ組織のやり方が正しいのか迷いが生まれたものの、シンラに対する母性とも恋とも付かない感情から離れられず、その気持ちを人質に取られハチと融合したらしい。元々彼らのやり方に不満を出だしていたし、シンラらしくないとも思っていたためこちらの説得に応じたようだ。
対してジロウはそんな彼女を護るため、離反を疑われないようテオドールに加担する。最悪自分が倒されたとしても、もう娘は一人で生きていけるだろうと信じ覚悟を決めていたという。助かって良かったなと言うとお前のお陰じゃと返したので、不動明王様のお陰だよとさらに返した。
「ワシみたいなもんがまさか仏様の慈悲に与れるとは思わなんだ」
「罪を悔いて真っ直ぐ生きたご褒美かもしれないな」
「ご褒美か……娘が生まれたのと同じくらい胸にくるな」
ジロウは誤魔化すように声を上げて笑い、こちらもそれに付き合って笑う。しばらくして落ち着いた彼にここ最近の不調の原因は何かと問うと、レイメイとの波長の調整をしていたと話す。不動明王様の加護を得たことで、杖の時とは違う調整が必要になったそうだ。
何度も挑戦したものの上手くいかなかったが、今日突然合うようになったので明日からは存分にいけるという。
「お前への恩義と仏様への恩義に報いるため、ワシもここから全力で行くからの! 皆で生きて帰ろうや!」
元気になったジロウに対して頷き、すべてが片付いたらその時は奥さんの話でもしてあげたら、と勧めると余計なお世話じゃ! と怒られる。こうしてあるものは問題が浮かび上がり、あるものは問題を解決し一日が終わって行く。
翌朝食料調達から始め戻る時に鉱山の管理事務所に顔を出す。アイザックさんが居たので挨拶した後、ここから少し離れた場所で稽古をしたいが良いか、とたずねると問題無いという。今は鉱石を掘るよりも町の復旧が最優先なので、鉱夫たちもそちらに回っておりここは空いているらしい。
許可を得たので食事を終えてからさっそく稽古を始めた。ジロウが復調したレイメイだったが、独鈷での戦い方に迷っている。話し合った結果、二人で修業し模索するという結論に達しパーティを離れていった。
「ジーーーーン!」
稽古ばかりでは煮詰まってしまうなと思い、切り替えるために復興作業を昼から手伝っていたところに、凄まじい声が遠くから飛び込んでくる。顔を見ずとも誰か分かったが、手を振りながら二人ともお帰りと負けじと声を出してみた。
凄い速さでこちらに突っ込んで来たシスターに対し、お相撲さんのように構えて受け止める。こちらも相当パワーアップしたはずだが、異世界人と竜人の親を持つ彼女のパワーはすさまじく、元の場所からだいぶ下がらざるを得なかった。
「おお! ジンもかなり強くなったな!」
今はなんの形態にもなっていないので、この状態ではシスターにはまだ勝てないらしい。最近パワーアップしすぎて人間離れしていたかと思ったものの、こうして普通の状態ならまだまだ上がいると思うと安心する。
シャイネン側の使者としてヨシズミ国との調整を行っていた二人は、目処が付いたために返って来たという。テオドールたちの思惑通りとなってしまって悔しいが、周辺国の復興は諦めてヨシズミ国にすべての人材資材を投入し、早期復興を目指すそうだ。
ネオ・カイビャクからも治安維持ギリギリの人数を残し、こちらに救援に来てくれるらしい。見れば町には多くの人たちが入って来ており皆城の方へと歩いて行く。二人もそちらに行くのかと問うと、ジンも私たちも他にやるべきことがあると答える。
たしかに二人の言う通りで暗闇の夜明けを野放しにしては、復興したところでまたいつ襲われるか分からない。復旧作業をある程度で終わらせ、皆で稽古を再開すべく鉱山へと移動した。鉱山周辺は原因不明だが麓が広く枯れており思い切り稽古が出来る。
「アタイからやるぞ!」
誰からと言った瞬間にシスターがさっそく手を挙げた。イサミさんを見ると私は次でいいというので、今日が初日の二人のうち一人がいいというならそれでと告げ、シスター相手ならと白蓮花モードへ移行し気を放出する。
こちらを見て彼女は奇声を上げ飛び跳ねると、二度目の着地後即突っ込んで来た。田上コウさんとの修行によって攻防の修正が出来たのをみせるべく、シスターの攻撃を捌きながら彼女の肩などを押して突き飛ばす。
最初は楽しそうにしていたシスターも徐々に顔が真剣になる。こちらとしても本気は望むところなので、さらに気を丹田から増幅させ身に纏う。彼女はこちらを見て距離を取りそれまでの猛攻から一転足を止めた。
荒々しい気を発しさらに右拳を大きく引く。モーションが大きいのは彼女も当然わかっている。大ぶりの一撃を受けて見せろということなのだろう、と解釈しこちらも最大の防御技で迎えるべく、手首を合わせ手を軽く開きながら突き出す。
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