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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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ジロウの反省

「こりゃあ人生をやり直すチャンスかと思ったんじゃけどな。まぁ辛抱無しじゃから上手いこといかんかったわい」


 元々腕っぷしが強かった彼はそれを生かし、この世界で自給自足をしながら生活をし始める。偶然来たことからチート能力は無かったらしく、やがて行き詰まり元の世界と同じような生活になった。元の世界なら逮捕され裁判にかけられ懲役となるだろうが、この世界にそんな制度はない。


デラウンの近くの町で盗みを働いた際に捕らえられ、各町からの手配書もあったことから町長より斬首刑を言い渡される。もう終わりかと思った時に、身柄を預かると名乗り出てくれた人がいた。なんとその人物とはうちの師匠である、ゲンシ・ノガミその人だという。


ジロウはその時どんな人かも知らず、なぜ自分を預かると言うのかと問いかけたところ、根性がありそうだからと言ったらしい。理解出来ない理由で重犯罪人の自分を引き受けた人に心底やられた、地獄の底までお供しようと決めたと話す。


師匠に稽古を付けてもらいながら共に彼は全国を行脚し、次第に他人のために何かをする役に立つ感謝されることに、見たこともない光が見え始める。行脚すること三年が過ぎたある日、珍しく長くいた村である女性と恋に落ち所帯を持つこととなった。


稽古をしながら旅するの身であることを、奥さんになる女性は応援してくれたと言う。人生で初めて尊敬でき信じられる大人に出会い、愛し愛してくれる女性にも出会えたことで、彼はこの世界を護るために身を捧げようと決意する。


「恐らく先生はワシの実力ではこれ以上無理やと思ったんじゃろな。所帯も持ったことだしキリが良かろう思うたのか、ある日突然いなくなってしもうた」


所帯を持ったことで別れて住むことになり、しばらくして朝迎えに行くと”卒業”とだけ書かれた紙を置いて、師匠は居なくなっていたらしい。一瞬捨てられたのかと思ったものの、人生で初めて受け取った卒業証書に涙し、師匠に誇れる人間でいようと心新たに暮らした。


畑を耕し冒険者代行のような仕事をしつつ暮らし、やがて娘も生まれすべてが順調に言っているかと思われた直後、村を原因不明の病が襲い始める。人が次々亡くなり自分たちもと思った時に、ある男が村を訪れこういった。


”あなたの血液からワクチンが作れる。協力してほしい”


今や自分の命よりも大切な娘にも感染する危険があったため、二つ返事で受け男について行く。


「妙な技であっという間に知らん建物の中におった。お前はこの世界の人間か、と聞いた時のアイツの顔は忘れん」


 意図的に相手を困難な状況に陥れ、ターゲットに危険が及ぶ直前くらいで現れる。あの男の手口は昔からそれなんだなと思うと呆れてしまった。異世界人かどうか知らなかったかもこうなると怪しいが、それを確認する術はない。


ジロウはテオドールとの先ほどの会話の後で意識が途切れ、目が覚めると身動きが取れず自分の体も見れなかったらしい。周りを見れば妙な形の武器や防具が並べられ、どうしてこんなところにいるのか理解出来なかったという。


彼が自分の身に起こったことを知ったのは、テオドールが再度目の前に現れた時である。少し遅れて来た少女が指をさしながらこの杖何と言った時だった。人間が杖になるのかと思ったのも束の間、ニヤつきながらテオドールがジロウを掴み、少女に渡した時に悟る。


あまりの出来事に泣き叫びテオドールに抗議をしたが、少女を遠ざけた後彼は言う。あの娘はお前の娘であり、喚き散らせば死ぬことになる黙って協力しろ、と。絶望に絶望が重なりジロウは考えるのを止め大人しく従った。


娘と共に活動していて驚いたのは、可愛かった娘がいつの間にか反体制運動に傾倒し、破壊活動に手を染めていたことだったと話す。聞けばジロウ失踪後に妻は病で亡くなり、テオドールを介して裏ギルド所属の魔法使いに養育されたようで、これが教えだと嬉々として危害を加える娘を目の当たりにする。


愛する娘を助けるためにこの身を捧げたのに、他人を傷つけて喜ぶ人間になるなんてと夜な夜な泣いたという。


「師匠と出会う前のワシは、元の世界でもこっちでも碌な人間じゃないのは分かっとるし、自分が罰を受けるのは構わない。じゃけどな、愛した妻との間に生まれた娘が見るも無残な人間になってしまった、これほど堪えたことは人生初めてじゃ」


 それでも活動している中で見せる、妻譲りの優しさが根っこにあることを知り、なんとかせねばと思ったジロウは彼女の任務を意図的に失敗させた。やがて組織では孤立し下っ端となったが二人きりの時間が増え、彼女と色々なことを話し関係を強化する。


転機が訪れたのはお前との戦いだと彼は回顧した。最初に顔を合わせた時に、ジロウはたしか世界の改革と志を説いてきている。どうやらそれは組織のお題目と娘が信じていたことだったらしい。代わりに代弁し打ちのめされたことで彼女は気付きを得たと言う。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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