表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/616

ゴブリン襲撃戦

「……覚えたその日に魔法設置物に対して使うとは。色々飛ばして教えてしまった弊害を、まさか翌日味わう羽目になるとは思いませんでしたよ」


 微笑んでいるティーオ司祭の眉間に血管が浮き出てるのは気のせいだと思いたい。シスターは面白くなって手で口を抑えている。何も面白くないと睨みたいところだが自業自得なので仕方ない。小学生の頃、先生に職員室に呼び出され向かい合っている時のように立ち続けた。


「飛ばして教える代わりに密度の濃い内容にしましょうね」

「マジっすか」


 穏やかに話すので怒られなくて良かったと思ったが、段々厳しくなってきた鍛錬の密度を更に増すと言われゲンナリする。早速言葉通り気を扱う上での危険性などを身をもって体験する授業がスタート。覆気(マスキング)した俺に対してティーオ司祭の拳が飛んで来た。 


気合を入れて踏ん張るもあっさり覆気(マスキング)をかき消され吹っ飛ばされる。覆気(マスキング)をしていても過信すると如何に危険かというのをこの日は徹底的に学ばされた。更には魔法についての講義も始まり眠気に耐えながらなんとかこの日は乗り切る。


「今日からこの感じで行きますからね!」

「は、はい……」


 あれだけこってり絞ってもまだ怒りの冷めない司祭に追い出され、二歩歩いたところで深呼吸した。本当にきつかった……鍛錬だけならまだしも勉強はかなりくるものがある。元々好きじゃないから高校を卒業して直ぐ就職活動したってのに、異世界に来てまた勉強するとは思わなかった。


「あら気付いた?」


 背後に違和感を感じ振り向くと、シスターが教会から出てこちらに音を立てず近付いて来ていた。覆気(マスキング)の鍛錬を多めにしたからなのか、近付く前に気付けたのでシスターも驚いて笑い合う。


「ご苦労様、ジン」

「お疲れシスター」


「まぁそうしょげなさんな。兄様は意地悪じゃなく心配して厳しくしてる。力ってのは良い部分だけじゃなくて危険な部分もあるからさ。武器もそうでしょ? 使う人間によるのは気も同じ。だから体だけでなく精神も鍛えるのが教える人間の役目。そして魔法設置物に関しては例えば叩けば爆発する物があったとして、それを知って叩くのと知らないで叩くのでは大きな違いがある。今回のように運に頼らず除去出来れば皆幸せだ」

「反省します」


 翌日も魔法に関する徹底講義と実戦形式の鍛錬が行われた。依頼の方は牧場を警備していた兵士が二人、王族の警護に至急回される為に国からその穴埋めをするよう言われ、一週間牧場の警護の仕事が入ったので収入面も確保出来て鍛錬に集中出来る。


「ジンは居るか!?」


 鍛錬をしてから警備をしてと言う日々が一週間を過ぎた朝。いつも通り教会で鍛錬を行っていると、町長が慌てた様子で入って来た。話を聞くと村の方からゴブリンが大量に押し寄せて来たと言うのだ。兵士たちは町の防衛をする為前に出れないので、冒険者に緊急依頼を出したと言う。


「すまんがお前の力も借りたい。女性の冒険者は町の女性たちと万が一に備え牧場の近くに移動して貰っている」

「分かりました行って来ます」


「ジン、気を付けてくださいね。ゴブリンは男なら躊躇わず殺しますし、その数となると暗闇の夜明けが後ろにいる可能性があります」

「そうだな。私も国に上申してはいたんだが、村に対する調査どころか森の調査すら許可が下りなくてこの有様だ。上にも伝令を出して兵を出すよう言ってある」


 苦い顔をしながら町長はそう言って溜息を吐いた。長年他国からの逃亡者を受け入れて来た村と言う特殊な場所は、今はもう国ですら手を出し辛いのか。そんな自国の中に他国を作っては幾ら天然の要塞を持つ国とは言え、じわりじわりと侵略されて仕舞には全部乗っ取られるだろう。


俺が分かるくらいだから分かっている人も多い筈。となると国の中枢に村に手を出させない人物が居ると考える他無い。暗闇の夜明けの仕掛けについて知っているのに必死に探そうともしないのも気になっていた。


「中々上の方もきな臭いですね」

「何とも言えんなそれに関しては。ジン、それを知りたいなら功績を上げるが良い。今回の事件はその手始めになろう」


「私たちも行きたいところですが、国に今日は前から呼ばれている会議があります。参加がてら直接この件を訴えて来ましょう。これまでの鍛錬を試す良い機会ですから、しっかりと教えを思い出して生きて帰ってきてください」

「頑張れジン!」


 俺はティーオ司祭とシスターに見送られ、町長と共に教会を出て町の北入口へと向かう。街中も混乱しているが、行く先は決まっているので皆慌てずしかし迅速に移動していた。それを見ていると、前の世界と違い襲撃等の事態に慣れているんだなと感じる。


まだまだ知っているこの世界は狭く、他の国に行けばもっと危険で寝るのも大変な場所があるのかもと思うと知りたい欲が湧いて来る。いつか冒険者として他の国にも訪れてみたいものだ。その為にも先ずはここを切り抜けないと。


「ジン! それに町長!」


 北入口に着くとギルドの守護兵士(ディフェンダー)ヤマナンさんが居て手を振る。町長は陣頭指揮があると言って入り口近くの兵士の詰め所へ移動した。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ