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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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アイザックさんとアイラさん

「しかし驚いたね……あのザックちゃんがまさか二重スパイとは」

「アイラ殿、もうその話は」


「なんだい? まさか私を守るために二重スパイを引き受けたとでもいうのかい?」


 場は静まり返り気まずさを増していく。クロウと関係がある辺り、アイラさんが思う以上にアイザックさんの立場は複雑だ。助け船を出そうにも良い方法が思いつかない。


「事のついでだ。基本はこの国を守るためだがな」


 あっさりアイザックさんは認める。いつもの軽い感じの雰囲気であれば疑いようもあるが、今の彼はいつもと違い真剣な顔をしていた。本心を語っていると感じたアイラさんが掴みかかろうとし、シンタさんと共に腕を絡めて抑える。


「思い上がるなよ小僧!」

「それはこっちの台詞だアイラ。お前は確かに凄い魔法使いかもしれないが今は現役じゃない。捨ててしまった世界の奥にはお前が知らない世界があるんだよ」


 クロウと知り合いの彼からすれば、この星の人間皆が居ないと思っている神がいることを知っており、暗闇の夜明けを知っていれば理解不能なものを多く見ているだろう。自分が守りたい人のために出来ることは、チート能力でもない限り限られていた。


神と話し交渉する機会を得られたのは強運であり、その結果としてアイラさんの平和は保たれていたのかもしれない。出来れば墓場まで持っていきたいだろうし、ここは下手に口を出さず見守った方が良い気がする。


「帳簿の件に関しては私も宰相閣下も陛下も承知しておりました。寧ろアイザックさんは出費に関しても細かく記載してもらっていましたし、本物はもう提出済み且つ決裁されています」


 スパイとしての立場を維持するために酸いも甘いも嚙み分けた結果、例外を除いてすべて割り切った姿が軽い感じになったのだろう。本物の帳簿はこまめにしっかりつけ、ダミーは見た目通り雑にして置いておく。


暗闇の夜明け相手に二重スパイなどという、一歩間違えば全て終わりの役割はただのお調子者では務まらない。抑えても暴れていたアイラさんは大人しくなり、離してと小さな声で言った。大丈夫だろうと考えシンタさんにも目配せし離すと、そのまま踵を返して走り去って行く。


「先ほどアイザックさん自身も言ってましたけど、これ以降は相手も決死の覚悟で向かってきます。戦わせたくないなら、アイラさんをしっかり抑え込むのに専念してください」


 二人の関係とか思い出とか分からないが、ブレたまま戦場に来ればかならず死ぬ。向こうも切り札の完成が成った今、最後に必要のない者たちすべてを動員してくる。勝つしか生きる道が無い相手に迷いは禁物だ。


もうスパイが入り込む余地もないだろうし、戦いが終わるまで自分の思うようにして欲しい。シンタさんもこちらの言葉に頷き、我々は国を守ることにのみ専念しましょうと告げ解散となり、三人で鉱山管理事務所へ戻る。


事務所の裏手には鉱山から出た鉱石を置く倉庫が三棟あり、そこがすべて解放され住民たちが避難していた。ひとつずつ探していたところ最後の倉庫でレイメイたちを見つける。遅かったと少し苦情を言われたが謝罪し、すぐに修行に移ろうと言うと許してもらえほっとした。


「ジン、必要なことはすべて伝えてある。すまないが後は頼んだ」


 後ろにいたアイザックさんがそう言うので振り返ると、自分の左肩を指さして頷き去って行く。クロウに伝えたと言うことなのだろうと思い、こちらの左肩を見ると気持ち良さそうに寝ている。見ればシシリーも寝ており、二人ともお疲れのようだった。


そっとしておこうと思っていると早く修行をと急かされたので、どこか広い場所にと思ったが数名居ないことに気付く。イーシャさんにシスターそれにイサミさんが居ない。レイメイにそのことを尋ねたところイーシャさんは屋敷に、シスターとイサミさんはシャイネンと行ったり来たりで不在だ、と教えてくれる。


シスターとイサミさんは着た時に見掛けたら声を掛け、イーシャさんはショックが大きい今はそっとしておこうと考え、今いるメンバーのみで蓮の池近くへ移動した。


「よし、一人ずつかかって来てくれ。今の腕を知りたい」


 軽装さったので破邪顕正(はじゃけんしょう)モードになり、遠慮なくどうぞと言うと我先にとかかってくる。最初はベアトリスが斬りかかってきたが、素早く側面へ回り込み突き飛ばす。次にルキナが掛かってきたが白刃取りし放り投げ、ハユルさんが斧で薙いで来たので後ろへ下がって避けた。


「もらった!」


 ウィーゼルが間髪を入れずすり足で近付き振り下ろしたが、三鈷剣(さんこけん)を呼び出し受ける。やはり目的があるからか、彼女の太刀筋や動きは緩むどころか鋭さが増していた。止めを刺せず連れ去られたことからしてまた妲己は現れる。


弱っていた彼女をテオドールがただ治療して出してくるか、と考えれば有り得ないと即答できた。最後の切り札の最終調整のために、間違いなく強化して出てくる。今度こそ自分の手でと意気込むウィーゼルの姿に頼もしさを感じた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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