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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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鉱山管理人アイザック

「シンタ、心配するのは結構だがジン殿の嫁さんが死んだ風に言うのは失礼すぎるぞ」

「「アイザックさん」」


 前の方の茂みから突然アイザックさんが出て来て驚き、シンタさんと声が重なった。驚いたのは貸さなかったからもあるが、シンタさんが親しみを込めた感じで彼を呼んだからだ。近付き足を止めると改めてジン殿久し振りと言われたので、御久し振りですと返す。


「みっともないところを見られちまった。あれは駄目なんだよなぁ近所のガキどもの姉みたいなもんでよ。子どもの頃からあんな感じでさ」


 少しうつむきながらアイザックさんは後頭部をさする。清掃の指示はまだしも帳簿は駄目じゃないですか、というとシンタさんを見た。見られたシンタさんが頷くのを見てから、帳簿に付ける暇が無かったという。


暇が無かったでは済まされないだろうと思ったものの、彼には調べ物をお願いしていたとシンタさんが助け舟を出してくる。表に出せない繋がりがあるのかと思っていると、アイザックさんはまぁそういうことだと言いながら、左肩を一瞬指さした後さすり出す。


なんのことだろうと思いこちらの左肩を見るとウルクロウがいた。ぐあとわざとらしくウルクロウが鳴いてみせる。思い返せばクロウを吹き飛ばすために使った風来石(ふうらいせき)は、鉱山でガイラたちと交戦前に彼がリュックに忍ばせたものだ。


アイザックさんがクロウと協力関係だとすれば疑問が生じる。石があったからこそクロウを次元の隙間の彼方へ吹き飛ばして倒せたし、彼は今も漂流し続けていた。わざわざクロウを倒し得る可能性があるアイテムを渡すだろうか。


「なんにでも都合よく行く場合と行かない場合がある。帳簿然り、な」


 自嘲するようにアイザックさんは笑う。クロウに思念を飛ばし説明を求めるも、彼の言った言葉がすべてだと言って終わりにしようとする。説明したがる方なのに露骨に話を切ってきたので、面白くなり答えになってないと返すと、サラティ救出後は壊れるまたは破壊される予定だったと白状した。


雷光石(らいこうせき)は先にクロウがミサキさんに渡しており、彼女を助けるには対になる風来石(ふうらいせき)が必要だった。本来の仕様では魔法使い以外が使用した場合、一度で壊れる製品だという。


今も残っているのはどういうことだと聞くと笑って誤魔化す。どうも最後まで油断ならない奴だなと思いつつ、今は味方だから悪いことには使わないだろうと考え追及を止める。話を変えアイザックさんとの関係を聞くも、それは二人の時に彼から聞くと良いと言って拒否した。


あのクロウが配慮するなんて、何かとんでもない裏があるのでは!? と心の中で驚いていたが、面白くないし説明が面倒なだけだよと言う。いつもと違い歯切れが悪いので具体が悪いのかと思い聞いたところ、何でもないと答え大丈夫かと確認したが答えない。


具合の悪い神様がいるとは思えないが、体を貸しているウルの体調が心配になってくる。ウルは平気なのか問うが何も言わないので視線を向けてみたら、目を閉じ寝始め露骨に拒否した。方針を変えて答えるとも思えず、今は諦めようと思い話を自分の中で戻す。


「帳簿が上手くいかない場合と言うのは何でしょうか」

「お前さんももう分かってると思うが俺は二重スパイだ。相手もこちらも知っている上で行動している。さすがに金も無しじゃ何もできないんでね。シンタも亡くなられた宰相閣下も御存知のことだ」


 あっさり教えられ驚きを隠せない。風来石(ふうらいせき)を貰った経緯を思い出した際に、アイザックさんを怪しんだがまさか二重スパイとは思わず戸惑う。


「しかしなぜアイラさんに帳簿の件が?」

「宿舎の掃除に来てくれたのは有難いが、俺の机の引き出しまで開けて掃除し始めたんだよ。あの中だけは見られないように魔法まで掛けて施錠しておいたのに……これだから最強の魔法種族は困るんだ」


「ダークエルフと聞きましたけど、種族として魔法を使う力が最強なんですか?」

「攻撃においてはエルフにも勝る。特にアイラはマスタークラスの魔法使いであり、シグマリンは同族でそれを知ってるからまともに戦わなかったんだ。アイラが鍛冶屋になったのも、自分の思い通りにならないのが面白いかららしい」

 

 凄い人だとは思っていたが、まさかマスタークラスの実力の持ち主とは思わなかった。今回の襲撃の際も迎撃に参加してくれ、ガイラとシグマリンを抑えてくれたという。ここに来て色々衝撃の事実が立て続けに明らかになり、驚いてばかりだ。


胃に優しい話題はないものかと考えていると、アイザックさんは出来ればアイラを戦いに巻き込まないでくれ、と言ってきた。


「あれはそういうのが嫌で村を出てこの町に来た。出来れば暗闇の夜明けとは距離を置いた生活を送らせたい」

「物凄く気を使ってくれてるねアイザック」

 

 こちらが返答を考えていた時に後方から声が飛び込んで来る。振り向くとアイラさんが仁王立ちして立っていた。


「私に生きる希望を与えてくれた町があんな目に遭わされた。黙って大人しくしてろってのかい?」

「この先はもう普通の者たちは立ち入り不可だ。連中はお前が考えているほど甘くはない」


「シグマリンたちを抑えた私でも?」

「あの二人は……」


 なにか言いかけたアイザックさんはその先を言わずに視線を逸らす。ガイラたちと最後に会ったのはリベン攻防戦だ。正面の門を護っていたがエルフの村の実験施設を破壊した礼として、戦わずに撤退していったのを覚えている。


シグマリンの相棒であるガイラは元エルフであり、同族から無理やり実験体として惨い実験を行われ、挙句廃棄されたが運良く逃げ出していた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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