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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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クロウに与する勇者

「悪いが今回はこちらも竜族と戦うことを想定していないで来たから……というのは言い訳だ。お前を舐めていた。人間族が俺と対等に戦えるわけがないと高を括っていた」


 ライデンは続けて本来なら殺されても文句は言えないが、友として貸しにしておいてくれという。チート能力を得て彼と互角というのは納得が行かず、この強さには事情があり期間限定だと言うも、よくわからんが頑張って維持してくれと言い始める。


タイミングが悪かったか俺の運が悪かったかと嘆き、なんにしてもさっさと木っ端共との戦いを終えて、一緒に竜族の大地へ行こうとも言い出した。若干戦闘大好き状態になってはいるものの、生きていたらシシリーとの約束を守りたいし、出来ればフルドラも探しに行きたい。


ライデンには悪いが先約が多くあると言うも、今回の戦いには参戦してやれないがそれには協力するからと粘る。あまり先の約束はこれ以上できないというと、そんなに強いお前でも難しいのかと問われた。


ただ相手を倒すだけなら問題ないのだろうが、相手を救うことがメインとなる戦いなので、より難易度は上がっている。そのまま話したところ、わざわざ自分で難易度を上げても勝つという、そんなお前だからこそ戦いたいと言った。


勝つと言った覚えは無いが何としてでも相手を助ける、自分の命と引き換えにしてもという覚悟はある。否定せずに黙っていたこちらを見てライデンはなぜか頷き、背を向けまた会おうと言って去って行った。


勝つと確信して去ったのかは分からないが、こちらとしては能力を確認するどころかさらにパワーアップしてしまい、どうやって底を確かめたら良いのかと途方に暮れる。もう一日半経ったしなにより寝ていない。


こうなったら寝ずに走り回り戦って底を見るしかないだろう、そう覚悟を決めて走り出した。半日前になったら戻り始めようと考え走っていると、小柄で紋付き袴を着た異様に長い刀を持つ剃髪のお爺さんや、両肩に竜の頭をあしらった鎧を着た髭の長い人など、ライデンに負けず劣らずの達人が途中から続々現れる。


「やぁ初めまして。なんでも修行相手を探しているとか」


 なんとか切り抜けてそろそろ帰ろうかと思ったところで、真打登場と言わんばかりの気を発する人が立ち塞がった。漆黒の軽鎧に身を包み、二本の剣を背負ったボサボサ頭の人物だ。鼻頭が御団子のように丸く、野性味のある男は柔らかな笑みを浮かべながら剣を引き抜く。


右手に真っ黒で飾り気のない剣を、左手には対照的に鍔に装飾が施された黒い剣を持っており、切っ先を地面に向ける。剣を持っていなければ人の良さそうな男だったが、剣を引き抜いてからは殺気が場を覆い尽くした。


一瞬呼吸の仕方を忘れて立ち尽くしてしまうも、男はこちらの様子に気付いたのか殺気を緩める。明らかに気を使われたが、格の違いを感じて空笑いしてしまい怒ることも出来ない。これだけ凄い殺気は感じるのに敵意は感じず、違和感を感じたので感謝の意を示した後で聞いてみた。


「あまり詳しくは言えないけど、とある偉い人から君の修行相手になるよう言われたんだ。俺も異世界から来た人間だから、君のことを聞いて力になりたくてね。殺気を緩めたのは気を使っただけじゃない。こちらは君を知っているのに、君は俺を知らないのはズルだから緩めたんだ」


 彼の話で依頼主が誰であるかをすぐに理解する。あれだけ投げ飛ばしたところで意味はなく、こちらの動きを常時監視していると言うことか。君の思う通りだとこちらの考えを読んで相手は告げた。どうも考えを読まれやすいなと思い、読みやすいですかと聞いてみるも、状況を考えれば一人しかいないと思うけどと言われる。


もしクロウの連れ合いに読まれているとするなら、それは相手の術中にはまって思うように進んでいるからでは? とも付け加えた。たしかにここまではズレはあれど、テオドールたちのシナリオ通りに進んでいる。


限られた情報だとは思ったが、相手もこちらとだいぶ変わらなくなってきたと言うことだろうか。


「まぁでもクロウが俺をここに呼んだのは意外だったよ。こんな星には興味が無いと言っていたのに、急に今すぐ来いというのだからね」


 同じ異世界人と聞いたが、クロウの悪行を知らないのだろうかと疑問を抱き、彼は良い神様ですねと笑顔で言ってみる。これでそうだと言えば彼は騙されている可能性が高いし、そうだとすれば気付く切っ掛けを与えらればと思った。


「あれはひねくれすぎてねじ曲がり、千切れて再構成を繰り返して今に至っている。悪意を持っていないところがまた質が悪い。神様とかいう御大層な代物などではなく、自分の息子に執着し続け子離れでずに死ねないおっさんだ」


 あまりにもはっきりと言い切るので、こちらの方が慌ててしまう。あれでも一応神であり、恐らく心底頭に来れば指先一つで消滅させることも可能だ。大丈夫なのかと問うも、どうせもう元の世界では死んでるし、やりたいことをやり続けたので後悔もないと答える。


「クロウに協力したのもこの世界で目覚めた星を救ったあとで、個人的にはやりきったから暇つぶしみたいなのものでね。気に入れば依頼を引き受けるが、気に入らなければ拒否しているよ……そうだ自己紹介を忘れてた。俺の名前はコウ、元の世界では田上コウという名だった男だ」


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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