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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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VS大妖怪

「まさに勇者VS悪って感じ? 良いわねそういう明確なの。お姉さん好きよ?」


 地割れから出てきたかと思ったら、そのまま地面に降りずに宙を浮き始めた。ゆっくりとこちらへ向かって来る妲己に対し、ウィーゼルは身を屈め抜刀の構えをとる。ようやくはっきりと見れたが、ウィーゼルよりもきつめの美人顔で髪は銀色、十くらいかんざしを挿し十二単を着崩れさせずしっかりと着ていた。


「別にやるのは構わないけど、自らの未熟そして弱さのせいで他人に迷惑を掛けるのは感心しないわね」


 刀が届く範囲まで来て移動を止めた妲己は、上から見下ろしつつそう告げた。技を放つかと思ったウィーゼルは構えを止め、やっぱり死んでいなかったのねと呟く。腰まである長い髪を右手で掻き上げながら、あなたの母親である女はあの時死んだけどねと妲己は答える。


妲己は元々妖怪族の中でも突出した能力を持つ妖狐一家で、国とも対等にやり取りしていたという。以前大和で乱があり、その際に妖狐が参加しヤスヒサ王に討伐されてから事態は一変した。人では届かず獣人でも及ばない妖怪族が、ただの人間に敗北する。


前代未聞の出来事を切っ掛けに、人々は妖怪族を恐れなくなってしまった。恐れが無くなり妖怪族と積極的に交流しようという流れが出来、妖怪族からも国に与し要職に就く者が出てきたことで、融和ムードもでき始める。


家を守るためにと父親から言われ、妲己は国と近い関係にあったウィーゼルの父親の元へ嫁ぐ。彼の交渉により妖狐一家は見逃されたものの、妖狐一家は復権を狙い機会を窺っていたという。時は過ぎヤスヒサ王が亡くなり、チャンスを虎視眈々と狙っているところにテオドールが来訪した。


「どこで聞き付けたか知らないけど、妖狐一家には自己蘇生術が代々伝えられており、私が一度だけそれを使えるのをあの男は知っていたのよ」


 妖狐一家の自己蘇生術は一度だけ死んでも生き返れ、さらに蘇った際には能力が倍加する効果が付与されるらしい。普通に行ったのでは国にバレ討伐されかねないので、千子宇(せんごう)一族の禁忌を行ったと見せかけるために刀になっという。


予定通り国に納められ吉綱公が手に取っていれば、そのまま乗っ取り国をめちゃくちゃにしようとしていたようだ。なぜかウィーゼルの父親に勘付かれ封印され、テオドールの手引きでやっと最近計画通りになった、と妲己は語る。


「憑りついてからはなるべく存在に気付かれないように、ひっそりこっそり気と魂を吸い続けた。村正が大した能力を持っていなかったのは、そこに私がもういなかったから。あなたたちが余裕で倒せたのもそれが理由なの。まぁお陰で私は更なる強化をして復活できたから感謝するわ」


 千子宇(せんごう)を潰したことにはなんの公開も無いのかと聞くも、村正を差し出していれば潰れる必要はなかったと一蹴した。妖怪族の世が再び訪れるチャンスだったのにと吐き捨てた瞬間、ウィーゼルは斬りかかる。


迎撃されるのは目に見えていたので、こちらも急いで斬りかかるべく飛び上がった。浮遊していた妲己はこちらを見下ろしながら、刀が届く寸前まで待ってから大きな扇子を出して薙いでくる。直撃を避けるべく急いで三鈷剣(さんこけん)の剣腹に腕を当てそれを受けた。


なんとか押し留められその間にウィーゼルが妲己を斬りつけるも、もう一本扇子を出されてしまい刀ごとウィーゼルは弾かれる。細身に見えるのにどこにこんな力があるのかと驚いているうちに、ウィーゼルを弾いた扇子でこちらを攻撃してきた。


急いで押していた三鈷剣の力を抜いて寝かせ、剣腹を蹴って下へ降りる。間一髪挟まれるのを逃れたものの、今度はそのまま二本の扇子を振り下ろして来た。宙に浮いていた剣が急いで戻って来てくれたのを受け取りつつ、横へ転がって即立ち上がり追撃して来た扇子を受け止める。


「お前のような男は私は好きだよ? 血に寄らず国に寄らず己が一人最強として立つ、それでこそ神の使いであり勇者様だ」


「残念ながら皆に助けられてばかりの未熟者だ。俺以上に一人で立つ最強は多くいる」

「誰を挙げたところで神を退けたような者はおるまい?」


 鍔迫り合いをしながらそう言われ、あれこそ多くの人の助けがあったこそだと答えたものの、助けを借りても神は退けられんよと鼻で笑われ弾かれた。一呼吸置くのかと思いきや、再度扇子で殴り掛かってきたので応戦する。


最初は妲己の現れ方やウィーゼルの母親と聞いて動揺したが、切り結ぶうちに感覚は研ぎ澄まされ二本の扇子をスムーズに捌いていく。こちらの動きを見てなぜか妲己は目を輝かせて喜んでいた。相手が強いのはそんなに嬉しいのかと聞くと、お前は違うのかと返され即嬉しくないと答える。


「もっと戦いを楽しむがいい勇者よ。生き物は命の終わりまで戦わねばならないのだから、これを楽しまねば苦痛以外何も残らんぞ?」


 消耗しきった状態で戦えば勝ち目はないと思うほどの厳しい攻めで、そんな相手に最強だとか言われたくはないと思った。最強って言うのはてこずることなく誰でも倒す、そういうチートのような強さを持った人物だろう。


テオドールの思い通りに時間を消耗している自分が最強であれば、超最強とか上位称号があってしかるべしだよなと心の中で呟く。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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