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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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テの国

「なにかの地震で陥没したんですかね……」


 皆で覗き込んでみると崖の下には家の残骸があり、右の方を見ると少し先に円形にえぐれた場所が見える。イーシャさん曰く、以前町長や奥様と旧テの国に来たことがあるので方向に間違いはないという。


―これは本格的に僕も対策を考えないと不味いかもしれない。


 左肩でもぞもぞしがみつく位置を直しつつ、ウルクロウは思念を飛ばしてきた。以前神を作ろうとしていたというウルクロウの話を、イエミアは強制的に終わらせるために攻撃し逃走している。対策を考えないと不味いという言葉からして、この地震の跡は神を作ろうとイエミアたちが試みた結果なのだろう。


「取り合えず下へ行ってみるか?」

「そうだね、一応安全を確認しないとシャイネン軍を進ませられないし」


 抱えていたイーシャさんを下ろし、近くに太い木を探しロープを括りつけ崖を降りる準備をした。幸い真下に高い建物があり、そう長くないロープでもいけそうだったので、皆に安全に気を付けて行こうと声を掛け降りていく。


降りながら瓦礫を見て思ったが、テオドールはなぜ地震の跡を見せたのだろうか。こちらの心理的な圧迫を狙ってのことだろうが、クロウがこちらにいると分かっていれば、なるべく隠しておきたいと考えるはずだ。


イエミアと対峙した時の発言から、クロウは人間が神を作るなんて無理だと考えていたので、気付かせなければ隠し玉として十分使える。クロウと敵対する立場を鮮明にしていたイエミアからすれば、完成に近づいているのであれば痕跡など見せたくないはずだ。


イエミアではなくテオドールの立場で考えると、神を作れた場合にクロウに利点があると思い見せたのかもしれない。


―いや、僕は僕以外の神を求めてないよ? ここは僕が作った世界だし。


 テオドールが使えると思っても要らないのかというと、イエミアが手を付けた者は要らないと即答する。元々イエミアは復讐のため、クロウは息子に対する懺悔のためにこの世界にいた。考えるとよく手を組もうとしたなと首を傾げる。


―野上家の呪術の力が欲しかっただけだよ。引きこもりを勧誘するより早いから良いかと思ったけど、やっぱり地道こそが正義だと思い知らされた。


 心底懲りたと言わんばかりの声色で言い、最後には溜息を吐いた。どうにも胡散臭いので注意しなければならないが、今のところは信用しておく他無い。


―相変わらず信用無いなぁ。君がアリーザを助けた時には、もっと早くから信用しておけば良かったと思わせる自信があるのに。


 他人の嫁がさらわれる原因を作ったくせにと言いたいところだが、口論をするのも疲れるので止める。建物の上に降り立ち近くの屋根へ飛び移り安全を確認し、皆を呼び寄せ足場がしっかりした地面を目指して移動を開始した。


移動し続ける間に気を探ってみたものの、生きている者は動物どころか昆虫すらもいない。神を作るなどという禁忌に触れた結果、何者をも近付けぬ土地にしてしまったのではないか、と感じる。シシリーに体調は問題無いか確認するも、ここ最近なぜか強くなったので多少のことなら問題無い、と力強く答えた。


―なんかその妖精変だよね。どこで見つけてきたの?


 依頼を受けている時に偶々森で出会ってから一緒にいると答えたが、ふぅんと納得いかない感じで言う。こちらがなにかしていると思っているのかと突っ込んだものの、それはさすがにないから気にしなくて良いと話し、周辺に全く生気を感じられないねと話題を変えてくる。


「イッツショウターイム!」


 シシリーの何が気になるのか問い詰めようとしたところで、甲高い声と低い声で抑揚をつけた叫び声が木霊した。急いで頭を切り替え周囲を探るも、相変わらず気配を消していてつかめない。


「ここですよ、こ、こ!」


 少し離れた竜の像が屋根にある、竜神教の教会の上にテオドールは現れる。ウインクしながら腰を直角に曲げ、左手は腰に右手はオッケーマークを作り頬に近付けていた。薄気味悪いおっさんがあのポーズをどうしてやろうと思ったのか、小一時間問い詰めたいがどうせ煽るためで終わるので止める。


「まぁそうですけどね否定はしませんよ、ええ。ちなみにその妖精がパワーアップしているのは、おそらくジン・サガラの気の変化による相乗効果的なものと思っております。とても珍しいサンプルですよそれ!」


 こっちの考えを読み淡々と認めたかと思いきや、少し興奮気味にシシリーについての見識を早口で言う。情緒不安定な男に付き合っていられないので、問答無用で斬り捨てようと距離を詰めたものの、地面から現れた吉綱公に遮られてしまった。


相変わらず白目を剥き口の端から血が垂れていたが、テオドールの駒としてはその方が都合がいいのだろう。操り人形になるくらいなら一刻も早く解放してあげたいと考え、シシリーにウルを遠くへ連れていってもらい改めて構える。


「今回は前回と違って長く遊んでもらいますよ? そのためにここまで来てもらったんですからねぇ!」

「クロウに自分たちが作った神を見せたいからじゃないのか?」


「まだお披露目まで到達してないんですよねぇ!」


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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