表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

483/616

天敵

 コイツも邪神も他人の思考を覗き過ぎだろと抗議したい。いくら邪神やマッドサイエンティストだとしても、頭の中を覗かれては戦いになっても読まれて終わりだ。なんとか対策を立てなければ危険だと考え、この件が片付いたら真剣に皆に相談しなければと強く思う。


「ちなみに思考を読んだだけで覗いたわけではないですよ? まさか当たったんですか!?」


 わざとらしくテオドールは両手を頬に当て目を丸くする。そんなに読みやすい思考なのかと頭を抱えそうになるのを堪え、吉綱公を回収しに来たのかと問うとそうだと答えた。せっかく倒したのにまた出て来られてはキリがいない。一気に距離を詰めてテオドールごと叩き斬るべく走り出す。


「もちろんそうくることも予想済みでしたー」


 棒読みで言いつつ倒れた吉綱公と共に、身動き一つせず後ろに下がりこちらの斬撃を避ける。もはや理屈を考える気にもなれず、妖怪というのはこういう奴のことを言うんだ、と心の中で吐き捨てた。滑ったあとには血が続いており、万が一に備えそれを避けて間合いを詰め再度斬りかかった。


振り下ろしテオドールの頭をあと少しで捉えるというところで、吉綱公が立ち上がり村正で受けられてしまう。顔を見ると白目を剥いており呼吸もしてないように見える。意識が無いのにテオドールの攻撃を防いだということは、師匠やアリーザさんと同じように乗っ取ったのかもしれない。


もう一つの可能性として、テオドールが中から出て来て今も傍にいることから、糸のようなもので操っているか気を使っている可能性も考えられた。


「逃すか!」

「逃がしてもらいたいねぇ!」


 素早く後ろに回り込み糸か気を断ち切るべく斬りつけるも、その前に地面から吉綱公が出て来てまた防がれる。気取られないよう斬るまで気を最小限にしているが、行動を読んでいるかのように攻撃を難なく処理されてしまう。


一人では埒が明かないと考え、協力を求めつつフェイントの意味も込め皆へ視線を一瞬送った。釣られないかと思ったもののテオドールの視線が動く。ただの兵士の参戦なら気にもしないだろうが、イサミさんやウィーゼルが動くなら見ない訳にはいかないだろう。


ただ斬ると避けられると考え、反対方向へ動いたあとでヘソあたりを狙い薙ぎ払った。これは避けられないだろうと思ったものの、テオドールと吉綱公はブリッジしながら避ける。もう一度と思ったところで、ウィーゼルとイサミさんが挟み撃ちになるよう詰めて来ていた。


二人とタイミングを合わせて攻撃しようとするも、テオドールたちはこちらへ向けて飛び蹴りを放ってくる。出来れば腕を交差させて受けて反撃に転じたいところだが、彼らに触れれば何が起こるか分からないので余裕をもって避けた。


イリョウの病室での戦いはテオドールに逃げ場はなかったものの、外では変則的な動きを存分に生かされてしまい捉えにくい。


「今回は運が無かった、ということで諦めて貰えませんか?」

「今回どころか毎度運が無いだろう? アの国は一人も救えず、マの国は時間をかけて治療して治るか不明だ。どこに運が良かった要素がある? そっちの持久戦にこれ以上付き合いきれない」


 懐にいるシシリーにウルを連れて離れるよう頼み、離れたと同時に破邪顕正(はじゃけんしょう)モードに移行し切っ先を向ける。


「どうやらだいぶお怒りの御様子ですが、こちらも二国を短時間で奪取され計画に支障が出ていましてね。とは言えもはや無傷で逃げるなどとは思っていませんよ、ええ」


 テオドールは思い切り口角を上げて微笑むと、両手を掲げて指を鳴らした。音から数秒後、地面から手が生えてくる。先ほどと同じかと思いきや、今度は手だけでなく吉綱公が地面から出てきた。どういうことかと思い本人を見るたが思い切り血を吐いている。


魔法に馴染みのない吉綱公がなぜ魔法を覚えさせられたのか、少し違和感があったが今理由が分かった。当人がしっかり使える必要は無く、テオドールなりイエミアなりが必要な時に使えるようにする。


二人なら吉綱公の気質を理解していただろうし、野放しにしているほうが可笑しい。もっと早く気付くべきだったと自分に怒りを向けながら、出てきた吉綱公の分身みたいなものをどうするか考えた。


確実にこちらを足止めするために出されたものだが、一人ひとり吉綱公と同じ腕前だと見た方が良いだろう。砕破拳(さいはけん)でどれだけ巻き込めるかチャレンジする前に、除災招福(じょさいしょうふく)でどこまで退けられるかやってみよう。


「除災」

「させるかぁっ!」


 三鈷剣を掲げて招福させようとした瞬間、吉綱公の吐いた血を地面から救い上げこちらへ放り投げてくる。やはりあれは何某かの効果を持っていたのかと考え、急いで焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)を放った。


血は掻き消されさらに吉綱公の分身のような者たちも消し飛んだが、煙が発生してしまう。晴れた頃にはテオドールと吉綱公の陰すら見えず、急いで気を広げるも追いつかない。


「ジン、このまま追いましょう」


 逃げ足の速さに苛立ち地面を殴ろうと振り被ったところで、ウィーゼルが肩に手を置きそう提案して来る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ