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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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果たし状

「ジン!」


 しばらくの間は皆と組手をしつつ、攻撃と回避の隙間を埋めるために励む。早めにテの国を攻めたいところだったが、マの国の処置が終わるまでは攻めるのを控えて欲しい、というニコ様からの伝言をシスターが持ってきたので控えることにした。


「元気そうでなにより」


 一週間ほど休んだことで少し落ち着いたように見える。家族が囚われの身となったり離反したりすれば、穏やかでいられるはずも無い。こちらの提案が功を奏したようでホッとし、改めて皆に紹介した。


レイメイやイーシャさん、ハユルさんにウィーゼルは初対面なのでぎこちない。普段なら時間をかけてゆっくり互いを知ってもらいたいが、あいにく戦いは近いし戦場で背中を預ける相手になるので、

いきなりではあるが組手をして知ってもらおうと提案する。


皆快く提案を受け入れてくれ、順番に組手が始まった。シスターは他の皆よりも強いが、こちらの意図を汲んでくれて受けに徹してくれる。組手が終わると互いに讃えつつ、シスターはこういうところが良かったなど声も掛けてくれた。


 皆との組手が終わるころには硬さも取れており、丁度お昼時でもあったので全員で町に食事に出ることにする。今は戦争のせいで観光客は全盛期より減ってしまったので、地元へ貢献しようと空いているレストランを貸し切った。


皆思い思いの席に着いたのを見てから空いてる席に着いたところ、ノーブルが駆け寄り目立つ場所に座って欲しいと言ってくる。シスター合流記念みたいなものなのでと断ったが、じゃあとシスターと共に皆と向かい合う位置に移動させられた。


なんだか就職活動してた時の面接を思い出しとても居心地が悪い。さらにノーブルが音頭を取れと言ってきて倒れそうになるも、年長者だから仕方ないと立ち上がり挨拶をする。せっかくの食事会なので簡素にしようと心掛け、ベアトリスの人となりなどを話しこれからの戦いを共に頑張ろう、と言って締めた。


次いでシスターも挨拶したがこちらに釣られて堅苦しくなり、喧嘩仲間のベアトリスやエレミアから良い子ぶるなとヤジが飛ぶ。最初は黙って続けたシスターも我慢ならなくなり乱闘が始まる。当時と同じように本気ではやらないが大暴れし始めた。


二人なりの歓迎だと考えお店の備品を壊さないよう移動させつつ、離れたところで他のメンバーが食事の注文をし始める。互いに捨て台詞を吐いて試合終了となった頃には、すでにある程度食事が運ばれ終えた。


元々あった位置に備品を戻し終えてから食事が始まると、一気に賑やかになる。シャイネンで流行っているのもだとか、リベンでの流行りとか最新の知識をシスターから聞き、シシリーは細かく教えてくれとせがむ。


なぜか皆でこういう物を作れば売れるのではないか、という商売の話になり次第に食事そっちのけになった。戦争の最中なのにと言われるかもしれないが、戦争が終わったあとのことに思いをはせるのは、前線で戦う者たちにとっては必要だと思う。


誰よりも命を危険に晒すからこそ戦った先が知りたい。楽しそうに話す彼女たちを見守りつつ、お腹が空いたので美味しい料理をお腹いっぱい食べた。店を出る頃にはすっかり空は夕焼け色に染まり、夜の稽古をしてから就寝する。


 食事会の日以降鍛錬にシスターが加わり激しさを増した結果、二週間ほど経った頃には全体のレベルがかなり上がって驚いている。特にウィーゼルは鬼気迫るものがあり、ノーブルすらも時には圧倒するほどに成長していた。パーティの戦力アップは喜ばしいものの、自分自身の弱点を克服出来ずに悶々とした日々を送る。


なんとかテの国攻略までに目処を付けたかったが叶わなかった。鍛錬をしていた時に城から呼び出しがあり、出向いたところシャイネン軍が襲撃されたという報告を受ける。場所はマの国駐屯地と聞き、急いでシスターを加えたテの国攻略先発メンバーと共に赴く。


「ジン! よく来てくれたでござる!」


 襲撃されたと聞いたので急いで来たが、駐屯地に入ると兵士たちはのんびりしていた。混乱しつつ近くにいた兵士にマテウス隊長はどこかと尋ね、宿舎に案内してもらう。大きなテントの中で他の兵士から報告を受けていたマテウスさんは、こちらに気が付くと急いで駆け寄ってきて手を握る。


見たところどこも怪我をした様子もないので、襲撃を受けたと聞いて急いで来たというと大きく頷いた。兵士たちに椅子を用意させ、全員着席するとマテウスさんの説明が始まる。どうやら襲撃があったのは事実だが、死傷者どころか怪我人も居ないという。


マテウスさんたちも戸惑ったところで相手はこう言ったそうだ


―虫けらなぞに用はない、ジン・サガラを連れて来い。


と。それを聞いてウィーゼルを見ると小さく息を吐いた。改めて襲撃方法はどういったものだったのか聞いたところ、無数の手が森から伸びて来てあっという間に得物を取り上げられた、と教えてくれる。


元将軍でありながら、人を従えるのが嫌いそうなあの人ならではだなと思った。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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