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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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攻撃と回避の隙間

―個人的にも早くテオドールに会って離反させたいんだけど、なんとか接触できる手立てはないかねぇ


 まるで他人事のように言うので、共犯者なら思念飛ばして呼び出せるだろう? というも、共犯者ではなく協力関係だよとなぜか悲し気に訂正してくる。言い方からしてこちらを暇つぶしに煽ってるんだろうから、聞いても無駄だろうが違いを尋ねてみた。


―僕は彼の技術や知識経験は欲しいだけだし、彼はその見返りに自分の神を復活させたいだけだよ?


 今この世界の混乱はその協力関係のせいで起こってるし、こちらの被害もそのせいだというもそれは結果論だという。僕も彼も最初はこうじゃなかった、とさめざめと語り始める。本当かと思いながら聞たが中身の無い話をし始めたので、シシリーにウルの相手を頼むと言って黙らせた。


宿に着くと皆基礎トレーニングを終え、こちらが帰ってくるのを待っていたようだ。宿から少し離れたところに元家があった場所があり、今は更地になっていたのでそこを使って組手を始める。エレミアやタクノそれにレイメイなどは、魔法の稽古を始めるために少し離れた場所に移動した。


「先生、よろしくお願いします!」


 全員と組手はするものの次回先発メンバーが優先となる。さっそく一人ずつ組手をと思ったところで、イサミさんが妙なことを言いながら前に出てきた。一瞬誰のことを言っているのかと思い周囲を見渡したが誰もいない。


まさかと思って自分自身を指さしてみると頷く。最近は質の悪い冗談が流行っているのだろうかと思いながらも、先生宜しくお願いしますと返しながら構える。今日は組手をするということで、いつもの眼鏡を掛け赤いヘアバンドというスタイルにプラスし、ポニーテールにし白い道着と黒い袴を履いていた。


イサミさんは母親がエルフなので魔法の扱いに長けているが、父親はあのヤスヒサ王なので武術はお手の物だ。復気(リペア)に関して手解きをしてもらったのもイサミさんだし、その人から先生と呼ばれるのは冗談としか思えない。こうして向き合っていてもイサミさんの凄みを感じる。


「では生徒から行きますね!」


 にこりと微笑んだもののすぐに真顔になり、突きを繰り出してくる。素早い突きに驚いたが、こちらも相手の速度に合わせて半身になり避けた。イサミさんは通り過ぎる前に態勢を変え、胴目掛けて左足で蹴りを放ってくる。


迂闊だなと思いながら受けてその足を抱えようとしたところ、寸前で足を畳み少し飛んで右足で頭部目掛けて蹴りを放ってきた。エルフ特有の身軽さと柔らかさで、人間族とは違う戦い方をしてくる。感心しながら中腰になりながら避けると、右足のかかとを頭目掛けて下ろして来た。


腕を交差し受け止めようとしたものの、足は降りてこずにいつの間にか身を屈め、頭突きを腹部目掛けて繰り出している。交差させた腕を下ろして受け止めるも、威力がありそのまま吹き飛ばされた。なんとか勢いが止まると着地し再度身構える。


イサミさんを見ると大きく手を広げて構えていた。どうやら次はそっちが仕掛けて来いということらしい。改めて攻撃を受けてみて今日のテーマが決まる。出来れば司祭との戦い以来偶に出来る、完全回避モードから攻撃を仕掛ける切っ掛けを掴もう。


先程イサミさんがやったように、こちらも突きを真っ直ぐ繰り出しかかと落としまでやってみた。最後の頭突きをイサミさんは跳び箱を飛ぶように避け、後ろに回り込み攻守交代となる。気を丹田に集中し力を抜き、全身のセンサーを研ぎ澄ませた。


彼女も察してくれたのか、先ほどよりも一段早く重い攻撃を仕掛けてくれる。すべてを回避し腕を掴めるチャンスが来たと思って掴んだが、逆にイサミさんに掴まれ投げられてしまった。


「……先生、一つ宜しいでしょうか」


 再度身構えたところでイサミさんは手を上げて発言を求める。先生は止めて下さいと言ってからどうぞ、と言うと


「なぜ攻撃の時、回避の時、と頭を大々的に切り替えているのでしょうか」


 そう問われ驚いた。回避に集中するためにすべての力を抜いたが、攻撃するなら力を入れなければならない。切り替えなければ、となってしまうのは自然では無いのかと問い返してみるも、そうであったとしてもあまりにも大きいと指摘を受ける。


「指を右から左に振る程度ならわかるのですが、立っているのと突きを出す動作くらいの差があって驚きました」


 そんなに大きければ誰でも分かる、と彼女は言いたいようだ。せっかく完全回避出来ていても、攻撃に移る時に攻撃に移るぞ! と大きな声を出せば、誰でも避けれて当然だ。これまで皆そこを突かなかったのは、こちらの動きに驚いていただけだろう。


特に師匠は次同じことをすれば確実にその弱点を突いてくるに違いない。今回の組手でその部分が明確になったのは、とても有り難いことだとイサミさんに感謝した。


「いえ、感謝とか結構ですから全力でお願いします」


 真顔でそう言いながら手を立て横に振る。これは中々手厳しいと思いつつ、指摘された部分の改善を試みながら組手を続けた。さすがに一朝一夕で改善はならず、この後皆とも組手をしたが読まれてしまい苦労することになる。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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