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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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盗まれた古着

「またお一人で国を一つ救ったと宰相殿から伺いました」


 食堂に到着し椅子に座らされるとそう切り出してきた。一人で報告に行ったが、戦い自体はシスターや司祭も一緒だったといったところ、お集りの皆さんは悲しそうな顔をしていらっしゃる。一応無駄っぽいけど事情を説明した。


「散歩してたら国一つ救っちゃいました、って勇者そのものじゃないですか……僕がやりたかったっ!」


 言われてみたら確かにその通りだなと今は思う。ラノベのタイトルじゃないんだからと心の中でツッコミつつ、申し訳ないと平謝りする他無い。各人から御小言を頂き終わったところで、今回の件はこれで収めると言ってもらいほっとする。


「では皆さま、さっそく次の国に参加するメンバーを決めてしまいましょう」


 イーシャさんがいつの間にか準備していた複数の棒を手で握り、高々と掲げた。決まったメンバーは逃げないようこちらを取り囲むという、プライバシーもへったくれもない追加ルールを設定される。抗議したいところだが、皆さま痛くご立腹の御様子でしたので黙っておく。


「やった!」

「やりました!」


 イーシャさんとイサミさん、そしてウィーゼルが先が赤の当たり棒を引きあてる。イーシャさんとイサミさんは喜んだものの、ウィーゼルは浮かない顔をしていた。どうしたのかと声を掛けると別にとそっけなく答える。


今回は残り二国ということもあり、もう一人連れて行くというとノーブルが素早く準備を始め


「おお神よ!」


 これまで不遇だったハユルさんが最後の一枠を引き当てた。人選的には後衛がイサミさんだけになってしまったので、タクノもどうかと誘ってみたがノーブルのお世話があるから、とキッパリ断られる。


前衛が多いので自分が後ろに下がりつつフォローすればいいか、と考え皆に鍛錬の指示を出す。次の日くらいに先発メンバーを連れてテの国の偵察に出ようと考え、薬草などの準備のためシシリーとウルクロウと共に教会を訪れた。


「あら、タイミングの良いところに現れたわね」


 ユーさんの診察室を訪れるなりそう言われる。薬草の調達ですかと尋ねるも違うというので、具体的な用件をと聞いたところ、以前教会に着古した物を預けたことは無いかと聞かれた。文明的には中世ヨーロッパくらいで、且つここは開拓が進んでいない地域だ。


物を捨てたりするほど溢れているわけではないため、ボロボロになるまでシャツなど衣類は着ている。ボロボロになったシャツなどは自分で再利用するか、教会や国に寄付することになっていた。当然数度教会に預けた覚えがあると答えたが、どんなものかと種類まで聞かれる。


いまいち要領を得ないままではあるものの、ユーさんが必要のないことは聞かないだろうと考え、詳しく種類だったり買った場所を話した。


「なるほど、ありがとう」


 出来れば聞いた理由を説明して欲しいと頼んだところ、教会に寄付された高めの衣服の一部が無くなっている、と教えてくれる。イーシャさんたちがイエミアの襲撃を受け重傷を負った際に、寄付されていた衣類を使い包帯を作ろうとした時に気付いたらしい。


ユーさんがなにより気になったのは、強盗であれば状態の良い物だったりとても高そうな物だったり、とにかく資金になりそうなものを盗むはずなのに、そういったものは残っていた。明らかに何か目的をもってチョイスされたのではないか、と思ったのでこちらに詳しく聞いてきたようだ。


シオスの町は上位ランカーが少ないので、高い衣服の寄付も教会へ直接は少ないという。


―随分回りくどいね、彼女は


 思念を飛ばしてくるクロウに視線を向け、解説を求めると分かりきっていることを聞かないでくれという。なに一つ分からないから聞いてるんだと思念を送ってみたが、そっぽを向いたので肩を下げて脅かしてみる。


「どうしたの?」

「いえ、その後の話が無くてずっこけてしまいました」


 誤魔化しつつ睨んでくるクロウを無視し、ユーさんの考えを尋ねてみた。まだ寄付した全員に聞いていないのでわからないと前置きしつつ、昨今の動きからしてジン・サガラの衣服を意図的に盗んだのではないか、とみていると言われる。


おっさんの衣服を盗むなんてどういう趣味なんだと思い、シシリーと首を傾げながら見合った。ユーさんもなぜ盗んだかまではわからないという。引っ掛かるが現段階では答えが見つからないので、今出来ることをしようと切り替える。


ユーさんに薬草や包帯の手配をお願いし、教会を出て宿へ戻るべく歩いていると


―イエミアこと春原來音(すのはららいね)は元々国の研究施設で働いていた。


 ウルクロウが再度思念を飛ばしてきた。呪術の研究のためだろう? と思念を飛ばし返すとそれも一部だと答える。遺伝子が及ぼす影響なども研究しており、その中には偉大な陰陽師の遺留品から細胞を採取し、クローンを試みていたこともあるらしい。


どうなってんだ日本と思ったが、クロウ曰く日本はオカルトとの親和性が高く、裏で生きる魔術師会との係わりもどの国よりも深いと話す。


―君の細胞を手に入れるなら、アリーザを使えばすぐに見つけられるし楽勝だ。ただ痕跡を残さないようにするくらいできたのに、なんでしなかったんだろうね。事と次第によっては僕の逆鱗にも触れるのになぁ。


 また急に顔を出てきた身内設定はスルーしつつ、想像通りならこちらが一番嫌な事を隠し玉としてやってくるだろう。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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