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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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神の陰

暇つぶしに来られても困るなとは思ったが、このまま放置しておくと裏で暗躍するのは目に見えていた。仕方なく着いて来ることを了承したものの、はぐれないようにと念を押す。コイツが姿を消した時は暗躍している、というのはこの世界の常識である。


ウルに憑依したクロウことウルクロウは驚いたように目を丸くし、神様がはぐれたって話は聞いたことが無いよとすまなそうに言う。こちらの思考を読めるくせに的外れな返しをして来るあたり、煽るのがデフォルトなのかもしれないなと思った。


「君もわかっているだろうが、僕は身内に対してとても過保護なんだ。許容範囲を超えてきたら君の物語に関係なく連中を潰す」


 突然身内カテゴリーに入ったと思ったら、過激なお父さんが出てきて困る。真面目な顔をして言っているあたり本気っぽいが、これ以上触れるとヤバいことを言い出しそうなので、取り合えずマの国の人を助けようと言ってみた。言ってみたというのはこれまでのことからして、どうせ無駄だとか言い出すだろうなと思ってのことだ。


少し首を傾げた後でこちらを向き、助けるってこの人数でどうやってと問われる。無駄だと言って来ないのに驚きつつ、イエミアによって変えられた人たちを除災招福で治すと答えた。ウルクロウは鼻で笑った後で、その必要は無いよと言って小さな指をさした。


見ると遠くの方に倒れている普通の人がいる。どういうことなのか分からず首を傾げたところ、マの国だけに強烈な幻術をかけたのだろうとウルクロウは言った。幻術というのは幻を相手に見せる術かと聞くとそうだと答える。


アリーザさんの群れに襲われたように見えたが、あれもこちらが幻術にはまっていたからかと問うも、イエミアがマの国の人々に強烈な幻術を掛けていたという。紫色のドーム型の結界は、幻術を確かなものとする為の苗床だったとクロウは話す。


「皆自分がアリーザと思い込み、また人を超えた何かになったと思い込まされた。脳に元々備わっている認識や境界線、抑制力の破壊に重点を置いた実に彼女らしい攻め方だ」


 思い込ませるだけなら催眠術で事足りるが、姿形まで変えた点からしてだいぶ時間をかけたのだろうとも言った。使用者のイエミアが逃げ結界も崩壊した今、幻術の効果は解かれているので元に戻るだろうが、後遺症は免れないという。


自分というアイデンティティを強引に捨てさせ、別人や人でなくなったと認識した脳を元に戻すには、途方もない時間がかかるだろうと言われ呆れ果てる。


「かなり入念に準備したものを簡単に捨てさせたのだから、もっと誇っていいよ?」

「前哨戦なんだから意味無いんだろう?」


「戦い自体に意味はなくとも、彼女の私兵は間違いなく潰した。相当計画は狂ったはずだから、彼女の隠し玉とやらは恐らく半端な状態で出てくるだろう」


 ウルクロウはテオドール顔負けの邪悪な笑顔を見せた。隠し玉が神様だとすれば、クロウとしては完成体と戦いたいんじゃないのか、と問いかけると笑われる。しばらく笑い続けた後で、仮にもし彼女に神様を作る技術があるなら、今回の件は許しても良いと言い出した。


アリーザさんを意のままに操った彼女が、はいそうですかと返すとは思えない。クロウが許すというならもう一度戦うことになるなというも、そんなことは絶対にありえないという。どんな神様を作るのか知らないけれど、神にも劣る人間がどうやって自分より上の存在を作るのか、とウルクロウは言う。


「じゃあ出てくるのは神様ではない?」

「みんな大好き”ぼくのかんがえたさいきょうのせんし”ってのが出てくるんじゃないかね。今回の幻術も魔法石による蘇生もアリーザの洗脳も、それを作るための材料に過ぎないっていうのが僕の予想さ」


 以前イエミアは記憶喪失の少女を使い、神に仕立て上げようとしたらしい。結局上手くいかずにヤスヒサ王に奪われたそうだ。前回の失敗を考えた結果、子孫を残したのではないかとウルクロウは語る。


話しを聞いて先ず浮かんだのは、誰の子かは分からないが対象は子どもだろうということだった。隠し玉の準備が整うまでというのは、仮に子どもだとすればクロウの言う材料を詰め込み終わるまで、ということだろう。自分の成育環境もあってか、鳥肌が立つと同時に強烈な殺意が腹の底から吹き出し、体全体にジワリと染み込み支配する。


―明鏡止水


 不意に不動明王様の声が聞こえて来て我に返った。邪念に囚われてはいけない。仮に子どもであったとすれば、どんな状態であろうと助けるのが第一だ。深呼吸しつつ冷静さを取り戻したのを見て、ウルクロウは舌打ちをする。


もっと感情のままに怒りを露にしても良いのにと言われたが、目的を必ず達成するにはクレバーにならなければと学んだと答える。つまらなそうな顔をしたあとで溜息を吐き、さっさと帰ろうと言って元来た道へ歩き出した。


暇だからという理由で同行し、身内だからと言って味方の振りをしているが、明らかに腹に一物あるのは間違いない。こちらの怒りを故意に誘発させようとしているなと思った際に、以前ヨシズミ国にあった家を燃やされた時のことを思い出す。


あの時クロウは魔法を与えたと言っていたのを覚えている。ひょっとすると怒りで我を忘れさせ、魔法を発動させようとしてるのではないだろうか。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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