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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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神を作ろうと試みる呪術師

「そんなに私が子孫を残したのがおかしい?」


 クロウが他にも話そうとしていたところに、タイミング良くイエミアが上空に姿を現す。やぁ久し振りだねと軽い調子で言うクロウに対し、イエミアは炎の球を投げつけた。クロウは今ウルを通して喋っているので、当たってもウルだけが死んでしまう。


思い切り拳で殴りつけて跳ね返したが、イエミアはすぐに掻き消し涼しい顔でこちらを見ている。


「いやね、ひょっとして君はおセンチな気分になったんじゃないかな、と心配になってさ」

「どういうことかしら?」


「元の世界に帰るための方法、諦めてないだろう?」


 イエミアがクロウを睨みつけたのを見て図星のように見えた。クロウに元の世界に帰る方法があるのかと問いかけたところ、彼女はその方法をずっと見つけようとしていた節があるという。春原來音(すのはららいね)はヤスヒサ王よりも前にこの星に来て、神を作る実験を繰り返していたようだ。


魂だけ帰っても仕方ないのではと聞いたが、体は元の世界で冷凍保存されているとクロウは言う。彼女が野上のすべてを手に入れた後で、今度はこちらに協力をと求め異世界に連れてくる際に、とある場所に冷凍保存したらしい。


向こうに魂が戻り、体を冷凍保存から目覚めさせることが出来れば元通りになる。ヤスヒサ王を元の世界で殺害した件についても、母親のせいということになっており問題無いという。胸糞の悪い話だなと思ったものの、クロウがそんなに優しい男とは思えない。本当に元に戻れるのかを聞こうとしたら、先読みしたのか首を横に振った。


「随分と御喋りになったじゃない、クロウ。ジンに倒されておかしくなったのかしら?」

「ジンと出会えたのは幸運だったよ。僕はまだまだツイてるって分かったからね。君はどうなのかな? 戻ったところで誰も君を歓迎しないと思うけど」


 こちらとクロウのやり取りに苛立ったのか、イエミアはクロウを煽ったものの煽り返される。さらに煽り返す余裕はないらしく、キレたイエミアは火の球を空を埋め尽くすくらい呼び出した。風神拳でせめてここだけでも防ごうと構えたが、ウルに憑依したクロウが前を塞ぐ。


手をこちらへ向けて振り下ろすと同時に、火の球が雨あられの如く降り注いだ。前を塞いだまま動かないウルを見て、身内とか言いつつ潰すつもりじゃないかと考え、横へ移動し風神拳のモーションに入った。


「まったく信用がないみたいだね……まぁ見ててよ」


 背を向けたままそう言うとウルが光り出す。火の球も迫っていたが、ギリギリまで見て駄目なら風神拳を放つことに決めて静観する。そろそろかという距離まで来た瞬間、ウルが眩しいほど輝き出した。


右目は手で押さえ左目を薄目にして見ていると、目前まで来ていた火の玉をウルは吸い込み始める。あっという間に火の球は消えてしまったものの、ウルは輝いたままだった。


「うーん、さすがにこのボディは燃費が悪いなぁ……これでも大して回復しない」

「魔法まで無効化するなんて……!」


「そりゃそうだろ。君の紛い物の魔法は、僕やミシュッドガルド先生の足元にすら及ばないよ? 姓を変えたくらいで劣化するような、先祖頼りの才能とは訳が違うんだ」

「野上はすべて私のものになったはずだ!」


「康久は僕に勝てて、君は僕に勝てない。それがすべての答えだ」


 イエミアもろくでもないが、クロウはさらに上を行く。弟を殺し母も殺し、人生すべてを賭けてイエミアはノガミの全てを手に入れた。そそのかしたのはそもそもクロウなのに、この期に及んで紛い物呼ばわりをされる。まさに邪神に相応しい所業でぶれないなぁと呆れつつ感心した。


「別に僕は邪神じゃないよ? 割と物をはっきり言うタイプだけど」


 叫び声を上げながら、先ほどより多くの火の球を呼び出しぶつけてきたものの、クロウは一歩も動かずにすべてを飲み込む。その様を見つつ、ホント神様ってズルいよなと思っていたところに、的外れな抗議を受けて苦笑いする。


「私たちに敵対するというのね?」

「君とは元々敵対してた、というか敵視してたよね一方的に」


「良いでしょう。努々油断しないことね」

「あ、思い出した。君は月読命(つくよみのみこと)と一緒に神を作るとかやってたね!」


 再度イエミアは火の球を山のように呼び出しぶつけ続けたが、結果は変わらない。彼女もそれを理解していたようで、すべてを吸収し終えた頃には姿を消していた。追跡しようと走り出したところでクロウに止められる。


イエミアはもう逃げたと言われ、そんなにあっさり陣地を捨てるのかと聞き返したが、こんな前哨戦には意味が無いという。神を作るというキーワードに関連しているのかと聞くも、ニヤリとするだけだった。


根性がひん曲がっているのはわかっているし、イラつくだけ無駄なのではいはいと言ってスルーする。このまま同行するのかとたずねると当然だという。風来石(ふうらいせき)雷光石(らいこうせき)で開けた次元の隙間に閉じ込められただけでなく、アルブラムの剣で吹き飛ばされ抜け出すまで時間がかかるらしい。要するに暇なので同行するということのようだ。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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