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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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散歩

「困ったな……元の地図をもらっても、地形の把握にも役に立つかどうか」

「暇だったら散歩でもするか?」


 城下町とシオスの間にある草原で足を止め、シスターは腰に手を当てながらこちらを見てニヤリと笑っている。武闘派シスターであるティアナ女史的には、集団で行動するより二人位で暴れる方が気が楽なのだろう。


戦いが終わるまではまだ先が長く、皆には生き残るためにも出来るだけ経験を積ませたい、と考えていた。敵地に入るので戦闘になる可能性が高く、誰か連れて行きたいところではある。


「散歩に行くだけだからな? 危ないと判断したら即撤退だ。無茶はしないこと」

「もちろん。相手は素直に殴り合いに応じてくれないからね。罠があると思って行動するよ」


一度失敗してもノーカンにしてくれるなら全員を連れて行くが、そうではないなら安全策を取らざるを得なかった。基礎能力はシスターの方が断然上なので、なにかあっても二人でなら対応しやすいという考えに至る。


ちなみにシシリーさんは疲れが溜まっていたのか、胸元に自ら作ったポッケでスヤスヤしていた。なるべく起こさないように、町には戻らずそのまま草原を西へ向かって走り出す。一気に山を駆け上がり山頂に着くと周囲を確認する。


巨大なハチの巣が崩壊したお陰で、アの国があった場所は広い範囲で更地になっておりわかりやすかった。そこから左へ視線を動かすとあからさまに変な場所が見つかる。


森から突き出た紫色のドーム型のバリアのようなものが、広い範囲でそびえたち恐らくあれがマの国だろうなと思った。山を下り怪しげなバリアに近付くべく森に入る。


「来るぞ!」


 侵入を感知したのか、スイカ大の火の玉が五つほどこちらへ向かって飛んで来た。風神拳で返そうとしたものの、あくまでも偵察というか散歩なので気付かれては不味いと考え、一つずつ殴って消滅させる。


シスターはそれを見て随分便利な物を持ってるな、とこちらの身に着けている篭手を触り感心した。ミシュッドガルドさんと言ってもわからないだろうから、知人から頂いたものだと話すとさらに驚く。


魔法の炎であれば剣などの金属に宿らせることも可能であり、魔法自体が珍しい中でそれを消せる武具は珍しいから驚いた、とシスターは教えてくれる。製作者であるミシュッドガルドさんは、この世界の神に魔法を教えた人であり、対魔法使い用に風神拳を編み出した人だ。


風神拳はミシュッドガルドさんからヤスヒサ王、そして師匠へと受け継がれて来た技だ。この篭手に見覚えはあるかとシスターにたずねたものの、見覚えは無いという。ノガミの物なのかと聞かれ、実はヤスヒサ王の師匠に当たる人から貰った、と話すと嘘だと言われ笑われた。


「ジンは強い上に冗談も上手いとは、流石アタイが見込んだ男だ。ならばここは一つ、こちらも見せねばなるまいな!」


 笑い終えるとシスターは赤い気を纏い、地面を足で踏み鳴らす。ゴッという地鳴りがしたあとで大きく地面が揺れる。何が起こるのかと見守っていると先へ進もうと促された。進んで行くうちに、先ほどの揺れがなんであったのか判明する。


あちこちにトラバサミなどの罠が閉じた状態で転がり、感知式の魔法によって作動した罠と思われる残骸も見つかった。さっきのは何という技なのかとたずねるも、ただ地面を揺らすだけのものだから名前は無いと話す。


ただ地面を揺らすだけと簡単に言うが、並みの者ではこんな真似は出来ない。司祭も強いがシスターも強いな、と言うと嬉しそうに笑う。


「デートに来たのなら場所を変えなさいな」


 声が聞こえて直ぐに両腕に気を集め、彼女にこちらに来るよう言いながら手首を合わせ、上へ向け蓮の花を作る。炎の矢が雨あられと上から降り注ぎ、攻撃は防いだものの森が火の海に変わっていく。せめて自然くらい大事にしたらどうだ? と上空に浮かぶ人物に対して忠告した。


「あら、ナチュラリストだったとは意外ね」

「臆病者ほど多くのものを傷つける、とジンは言いたいのではないか?」


 ゆっくりと降りてきたイエミアに対し、シスターは思いきり言葉で殴りつける。そこまで考えて言ってないなと思いつつ、こちらを睨んだイエミアに対して苦笑いして誤魔化した。


「随分とご機嫌じゃないお嬢ちゃん」

「難しいな! アタイは人間と比べたら長生きしているが、半竜人としてはまだ若い!」


 彼女がまたこちらを見たので首をすくめるにとどめながら、シスターは案外天敵なのかもしれないなと考える。元々イエミア自身血の気が多いので、天敵となれば戦いを有利に進められるかもしれない。期待を胸に黙って見守ることにした。


「あなた名前は?」

「ティアナだ!」


「あっそ。ティアナ、あなたひょっとして馬鹿なんじゃないの?」

「そうだな!」


 笑顔で元気良く返事するシスターに対し、イエミアは徐々に血管が浮き出てくる。聞いたわけではないが、シスターは感覚で自分は相手にとって苦手とする存在だ、と感じている気がした。考えてみれば彼女はノガミでもヤスヒサ王の直系であり、イエミア的には遺伝子からして天敵なのかもしれない、と考えるに至る。


対するシスターは馬鹿なフリをしながらも、相手をじっと観察していた。兄妹だけあって司祭にそっくりだなと思ったところで、イエミアがいると言うことは師匠もいるのではないか、と考え気を探る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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