次戦の準備を
全員を抱えて疾走し、何事もなくその日にヨシズミ国へ帰国した。検問に入国希望者と共に列へ並び、順番になったところでいつものように誰それ呼びますとなったが、自分で行くのでお構いなくと告げて中へ入る。
シスターとレイメイを宿へ連れて行き、ジョルジさんたちに紹介して後を頼み城へ報告へ行こうとしたが、シスターは一緒に来るという。ニコ様からゲマジューニ陛下に伝言があるというので、シシリーと彼女を加えた三人で城へ向かった。
城の受付で陛下との面談を申し込むとすぐに通され、応接間にて入り陛下と宰相に帰国の報告をする。陛下からは申し訳ないが前線はジンに任せ、こちらは国の防衛と共に消滅した国の管理をすると言われた。
アの国をこのまま放置しては確実に野盗が住み着くので、兵士を監視管理に派遣しなければならず兵士を回す余裕が作れない、と宰相が説明してくれる。少数精鋭でここから先も戦うしかないですね、と言ったところでシスターからニコ様の伝言が伝えられた。
曰く、シャイネンから兵を派遣する用意があるという。人口比率からして兵士を全て解放した国に置くのは、ヨシズミ国自体の運営に支障が出ると読んでいたらしい。陛下は頷き、さっそく委任状を作るから届けて欲しいと頼まれる。
ヨシズミ国としては人口も爆発的に増えているわけでもなく、経済も戦争のせいで消耗する方が激しくて、領土拡大をする余裕が現在全くない。広げるにしても山を挟んだ西側は管理が難しいので、シャイネンの方でお願いできるなら、現状お願いしたいと陛下は言う。
アの国はハチの巣を生成した結果、建物は崩壊し財宝も無く人もおらず、勝った分だけ損をする形になってしまっていた。これから先もその状態は続くだろう、と陛下も宰相もシスターもそして自分も考えている。
暗闇の夜明けはもう後のことは何も考えていない。目標を達成するためならすべてを滅ぼしても構わないと思っているのが、戦いが終わったあとのアの国を見ればわかると陛下は言った。これはもう戦争などというものではない、人類対天災の域に達していると宰相も話す。
戦後の処理に兵士を派遣したが、誰もがあまりの光景に言葉を失ったと報告を受けたという。アの国を前から知っている者ほど言葉にならなかったそうだ。陛下はシャイネンの兵士にだけ、そんな辛い状況へ送り込むのは忍びない、と沈痛な面持ちで語る。
宰相からの提案で、宿や食料の提供や派遣の協力は惜しまないとも書状に記そうとなり、書き記した後でこちらに渡した。さっそくシャイネンへ向けて出発するため、シスターと共に町を出て走り出す。
さすが師匠とニコ様の娘だけあって、顕現不動モードに偽・火焔光背を出して飛ばしても余裕で付いてくる。あっという間にシャイネンには付いたが、すでに陽が落ちようとしていた。
ニコ様に面会を求めたがこちらでもすぐに会うことが叶い、陛下からの書状を渡すとすぐに読んでくれ、読み終わると派兵の指示を出し準備を始めてくれる。一礼してヨシズミ国へ戻ろうとしたものの、ニコ様から今日はもう遅いので泊って行きなさいと言われた。
時間も掛からず帰れますので大丈夫ですと返したが、彼女は笑顔のまま何も言わずにいる。結局泊って行くことになり、城で夕食を取ることになった。とてつもなく大きな丸いテーブルが用意された部屋に入り、山のような料理が運ばれてくる。
パーティでも始まるのかと思い落ち着かず、きょろきょろしているとシスターにどうしたのか聞かれた。雰囲気的にパーティが始まるようだけど慣れて無くて、と伝えたところ首を傾げられる。今度はこちらがどうしたのかとたずねたが、パーティの予定はないけどどういうことかと聞き返された。
山のような料理を見てそう思ったと伝えるも、足りなかったかったらお代わりもあるぞと言われる。結局誰も来ず、ニコ様とシスターの信じられない食欲を黙ってみる羽目になった。聳え立つ料理はあっという間に二人の胃袋に収まり、さらにお代わりまで頼み始める。
二人の喰いっぷりを見てるだけでお腹いっぱいになってしまい、高そうで美味しそうな料理を少しだけ頂きごちそうさまをした。お持て成し頂きありがとうございましたとニコ様にお礼を言うも、少し運動をしましょうといって別の部屋へ招かれる。
応接室の戸棚をずらし現れた扉を開け、階段を下りて行くととてつもなく広い部屋に出た。物は何一つなく床だけ灰色あとは真っ白な部屋で、ここはどういうところなのかとたずねると鍛錬場だと言われる。
「私はジンと手合わせしたことがありませんでしたね。是非私と手合わせしましょう」
笑顔でそういうニコ様に対し、やりましょうとは言えない。女性を攻撃するのはたたでさえ躊躇われるのに、師匠の奥さんでありお世話になっているニコ様と手合わせとなると、二の足を踏まざるを得ない。
こちらが返答せずにいたものの、ニコ様はローブを脱ぎ始めた。一瞬ドキッとしたが下には白の上着と袴を身に着けており、ほっとする。
「我が夫、ゲンシは私の知る限り最高の戦士です。サラティ様も強いですが、彼はその上を行く。世が平和になったことで自然と力を抑えてしまっていました」
ニコ様曰く、師匠には何度も本気で司祭と戦うよう勧めたが、最後まで首を縦には振らなかったそうだ。司祭も師匠の本気は凄いと思っているので戦いたいと望んでいた。成長した今、師匠と修行すればその凄さがわかるかもしれない。
凄さと修行で思い出したが、自分が司祭に半殺しにされ飛ばされた先に居た、ライデンの話をするとニコ様は目を丸くする。
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