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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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取り戻すために

「おーい、ジーン!」

「ジンの字!」


 セットが板についてきたシシリーとジロウが、魔法学校の方から飛んで来る。レイメイの容態について聞いたところ、魔法医学士の検査を経てもやはり問題なしという判断だった。クレティウスとは違い、レイメイと融合していた女王バチは自ら分離出来ている。


元々レイメイを操る計画だったので、分離が出来るよう細工をしていたと考えるのが妥当だろう。何にしても問題無いなら一安心だ。いつでも退院できると言われたので、ジンを探しに来た、と言われ二人と共に病院へ向かう。


騒ぎで犠牲者は出ておらず病院は空いており、受付で面会の手続きをする。シシリーたちに二階の角部屋にいると教えてもらい、さっそく病室へ向かった。ニコ様たちに比べ、レイメイは伝えたところで忘れることなどないだろうから、まだ気分的には楽な方である。


病室の前に着くとノックをしたが、返事がない。返事を待とうとしたが、シシリーたちが扉を開けて中に入ってしまった。居るじゃない! とか なんで返事をしないんじゃ! という声が聞こえてきたので、着替え中とかではないと分かり安心して病室へ入る。


レイメイはベッドで上半身だけを起こしており、こちらを見たが直ぐに目を逸らした。ひょっとするとシシリーたちが前もって話くれていたのかもしれないな、と思いながら近くにあった椅子に腰かける。


具合はどうかとたずねると別にとだけ答えた。まったく問題ないみたいだよと言うも、今度は返事がない。ヨシズミ国へ帰ろうかというと返事が無かったが、しばらく間があってから私の帰る場所じゃないと答える。


今の彼女に対して嘘や誤魔化しをすると余計傷つけてしまう気がした。一呼吸置いてから、シンラを止めるには戦うしかないと告げる。彼から君を頼まれた、自分を忘れるように言っていたが忘れられるのか、と問うと首を横に振った。


「ならここで寝ている場合じゃない……必ず救うためにも鍛えなきゃ。今のままじゃシンラを救うどころじゃないだろう?」


 色々あって少し休みたい気持ちはわかるが、ここで立ち上がらないと心が折れてしまうだろう。アリーザさんが命を止められた時もさらわれた時も、足を止めずに走り出したからこそ今も走り続けられている。


自らの不幸を呪い泣き叫んで暴れたところでなにも変わらないということを、両親に捨てられた小さい頃に学べたのも大きかった。辛くない訳ではない悲しくない訳ではないけれど、自分で立ち上がり歩かなければ誰も助けてくれない。


歩き続けているうちに多くの人が手助けしてくれ、不動明王様まで力を貸してくださっている。恐らくだがジロウが独鈷になったのも、不動明王様のお力によるものだろう。救いの手は差し伸べられている、あとは本人が歩くかどうかだけだ。


「ジロウ、レイメイのことは頼む。もし何かあればヨシズミ国へ来てくれ」

「ジンの字……」


 席を立ちレイメイの相棒であるジロウにそう告げ、病室を後にした。後から来たシシリーにあれで良いのかと聞かれたが、レイメイならきっと自分の足で立ち上がるよと答える。俺にシシリーがいるようにレイメイにもジロウがいるしね、と付け加えるとシシリーは左肩に降りて仁王立ちし胸を張った。


病院を出てそのまま南門へと向かい、検問を終えて外へ出るとシシリーを胸元に入れてから気を溜める。時間がかかった上に戦況は悪化しているので、のんびり散歩して帰るわけにはいかなかった。一気にヨシズミ国まで駆け抜けるべく、顕現不動(けんげんふどう)モードになり偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)を背負って身構える。


「シシリー、しっかり掴まってろよ」

「はい!」


「ゴーゴー!」


 なにか声が一つ余計に聞こえたので、周囲を見てみたらシスターが後ろからこちらへ向かって来ていた。ニコ様はもう良いのかと聞いたが、当の本人からシスターに行くよう勧めたという。次にシャイネンを襲う時はノガミとの全面戦争になる、そうなる前にお父さんもティーオも止めて来てと言われた、と教えてくれる。


スの国まで来いとイエミアは言っているが、それは隠し玉を調整するための時間稼ぎだ。隠し玉がしっかり機能すれば、彼女の目的であるノガミ殲滅に向けて一直線だろう。手始めにシャイネンを襲い、次にリベンへ向かうのは間違いない。


弟子として師匠に同族殺しをさせる訳にはいかない、必ず止めてみせるとシスターを見ずに誓った。先ずは帰国しマの国へ向けた情報収集を、と言いかけたところでなにかが上から落ちてくる気配がする。見上げるとレイメイとジロウが空間を割って現れていた。


「いったた……ここどこかしら」

「……ジンの字、すまんの」


「いいから退いてくれ」


 なんとか仰向けに倒れながら二人をキャッチする。別に慌てて来なくてもと思ったが、レイメイの顔を見ると少し元気が出たようだった。急いでこちらから退き、早くヨシズミ国へ行って修行をしましょう、と言って気合を見せる。


空元気でも沸いたならそのまま突っ走るのがいい、そのうち空元気から元気に変わるだろう。二人の準備も万端になったとみて、立ち上がりながら出発しようと告げた。なぜかレイメイがこちらの前に立ち腕を広げる。


なんのつもりかと思い首を傾げたが、レイメイも首を傾げた。理解出来ずに歩き始めたものの、ずっと同じ姿勢で人の前を歩いている。ジロウがジンの字すまんの、と言い出したのでどういうことなのか説明を求めたところ、抱えて走れといっているらしいと言い出した。


魔法医学士の検査でも問題ないのだからと言い終える前に、レイメイは暗い顔をして俯く。病み上がりだしシンラのこともあるからここはひとつ、とジロウに頼まれる。二人で結託して楽しようとしているなと思ったが、ここで時間をかける訳にはいかないので抱えることにした。


「わーい楽ちんだ」


 レイメイがこちらに来たので、抱えようとしたところシスターがレイメイを突き飛ばし、抱えろというので抱える。シスターは自分で走った方が早いのでは? とたずねたが無視された。そこからレイメイとシスターとでよくわからない口喧嘩が始まり、しばらく経って二人から折衷案が出される。


なんとレイメイを負ぶりシスターを抱えて走れということらしい。どちらにも偏らない案というのが、こちらに両方乗っかってくるというのは納得が行かない。指摘したい気持ちを剛力で押さえつけ、営業スマイル全開でやらせていただきます! と返事をし案通りにして走り出す。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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