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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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新生シンラ

とうのイエミアの反応はないものの、師匠たちも攻撃をいったん中止しイエミアを隠すように立ちながら身構えた。


「なにか用かな? 僕は今忙しいんだ……嘘つきを殺さなきゃならない」

「まだ嘘と決まった訳ではあるまい? 乗っ取ってすぐ解放出来たらそれはそれで凄いが、ゲンシ・ノガミはそんな軟弱な男ではないと思うが」


「なにが言いたいのかな。あいにく機嫌が悪いんだ。さっさと用を言ってくれ」

「この勝負は俺が預かる」


 司祭が返答する前に師匠とアリーザさんが攻撃を仕掛けてしまった。見ればイエミアはいつの間にか立ち上がり、二人を捨て駒にして逃げ出している。まだ外殻装着すらしていないが、司祭の気を間近に感じていたら逃げ出したくなる気持ちは理解できた。


司祭もイエミアが逃げ出すのを見ていたものの、追いはせずに師匠とアリーザさんの手首を掴み地面に叩きつける。すぐさま両拳に紫の気を溢れんばかりに集め、止めを刺さんと振り被った。なんとかしなくてはと気を纏い司祭を止めに飛び込もうとしたところ、ワインレッドのローブを着た人物が先に飛び込む。


「なら君が先に死ね」


 右拳がワインレッドのローブを着た人物へと向かい、それを掌を重ねて受け止めた。拳は止まったものの衝撃でローブが破れる。現れたのは細面に所狭しと紋様を彫られている男だった。体を漆黒の鎧で覆い、背中に蝙蝠の羽を生やしていたので一瞬見間違ったかと思ったが、シンラに違いない。


「シ、シンラ……何故ここに!?」

「久しいな、ジン。レイメイを助けてくれたこと、礼を言う」


 笑顔で礼を言う彼の姿に違和感を感じる。以前共闘して態度が軟化したとも考えられなくはないが、それでも敵同士には違いない。なんといってもこちらは一度彼を倒しているし、彼の目標達成を邪魔している、自分で言うのもなんだが張本人だ。


「世間話をしたいらしいが、それなら他所でやるといい。お前たちに今は用が無い……僕が用があるのはあの嘘つき女だ」

「流石ノガミ最強の戦士ティーオだな。お前たち一族の傲慢さを象徴するような言葉遣いだ」


 ゴゥッと唸りを上げて紫の気が司祭から発せられ、周囲の木を薙ぎ倒す。修行のお陰で余裕をもって立っていられるがシンラも余裕で立っており、間違いなくパワーアップしていた。自分と同レベル以上の人物が、相手側にも居ると思うと戦力差は余計大きく感じる。


改めて目を見ると白目が赤くなっていて、完全に人間を捨てたんだなと思った。無差別テロ作戦や救いのない化け物を生み出したことなど、シンラには聞きたいことが山ほどある。少し聞いてみようと思った時、刺すような殺気が向けられた。


見ると司祭はニヤリと笑い、さらに気を増幅させ周囲を破壊し始める。師匠とアリーザさんは吹き飛ばされたものの、追うわけにはいかない。今追って行けば間違いなく背中から攻撃を受けるだろう。


イエミアがキレさせておいて処理せず逃げたせいで、こちらに矛先が向いたのは確定だった。


「君を支援していた僕に対してそういう態度を取るのはどうなのかね、シンラ」

「それが傲慢だというのだ。貴様はノガミでなければ支援など出来なかったとは気づかないのか?」


「僕のこの強さを見てもまだそう思うのかい?」

「強さだけで人は付いてこないというのは、コイツを見ればわかるはずだ。大した強さでもないのに俺やお前よりも後ろに人が居る」


 大した強さでもないと言われるとちょっと傷付いたが、暗闇の夜明けという組織を率いているシンラと比べたら少ないに決まってる。さすがに持ち上げ過ぎだと抗議しようとしたところ、シンラへ向かって司祭が飛び込んだ。


シンラはそれを避けようともせず、蝙蝠の羽と両手を広げ再度攻撃を受けるべく身構えた。彼の動きに対して司祭は雄たけびを上げて殴り掛かる。一撃必殺の拳が飛んで来る中で、シンラは顔色一つ変えずそれを流し、受け、弾いた。


元々強いとは思っていたがとんでもなくパワーアップしており、目を丸くしながら見入ってしまう。魔法とか出るのかと思いきや、一切なく肉弾戦で司祭と対等に渡り合っている。魔法の天才だった男が、肉弾戦をさせても天才の域に達してしまったかと思うと呆れる他無い。


何度も言っているがこういうのこそがチートなんだ、最強で無双し続けるのが異世界転生なんだ。自分のこれまでの道のりを振り返るだけで、気分が落ち込みそうになった。目の前で異次元の戦いをし続ける二人を見て、あとでどっちも倒さなきゃいけないのかと思うとため息が出る。


腐っている場合じゃないと頭を切り替えた時、師匠とアリーザさんを思い出す。今司祭はシンラを相手に全力でこちらを見ていない。今なら二人のところへ駆け付けられるはずだ、とは思ったものの、駆け付けてどうすれば良いのか分からず途方に暮れた。


乗っ取りを解除するような技ってなんだろう、と必死に頭の中の引き出しを開けまくる。


復気(リペア)は傷治しや相手の気の補充のみじゃない。復気(リペア)の文字通り気で修復を行うものだ。修復をするにはどこが損傷しているのか知らなきゃできない


 復気(リペア)を復習した時の言葉が頭を過ぎった。ひょっとしたら復気(リペア)で解除できるかもしれない。隙を見計らいその場を離れ、師匠とアリーザさんのところへ走る。上手くいけば師匠だけでなくアリーザさんを取り戻せ、やっと本当の再会が出来るかもしれないと胸が躍った。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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