表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/616

襲撃者の正体

「申し訳ない、ヤバいもので刺されたら困るから止めないとと思って持ってたのを投げてしまって」

「良いのよ私も確認しないで攻撃しちゃったし。よく見れば貴方愛嬌のある顔してるから森を荒らしたりしなさそうよね」


 愛嬌のある顔かぁ……元の世界でもガキっぽい顔と言われた覚えはあるが愛嬌のある顔なのだろうか。いや多分いきなり襲ってしまった引け目を感じて言ってくれてたに違いない。


「気付かない内に森を荒らしてる可能性もあるから何とも。取り合えず町に来ないか? そのヌメりを取ったり服を乾かしたりした方が良いと思うんだけど」

「本当に大丈夫だから気にしないで、自分の家で乾かすから。それより貴方お名前は?」


「俺はジンだ。この近くの町で冒険者をしている」

「そう……さっき言ったのは本当?」


「さっきって森を荒らしてる奴を探してるって話か? 勿論だ。色んな人の為にそいつらをどうにかしなきゃならないと思ってる。ただその術が無いんだよなぁ……紋様も見つけられないし魔法も対抗手段が分からんから結局殴り掛かるしか無いし。何時まで通用するやら」


 頬杖を付きながらゲンナリした顔で上を見ると、まだ霧があるのを見て魔法少女を思い出し立ち上がる。


「取り合えずシシリー、気を付けて家に帰ってくれ。まだこの辺に魔法使いが居るかもしれない」

「……! 危ない!」


 シシリーが俺の後方を指さしてそう叫んだ。失礼だとは思ったがシシリーを左手で掴んで飛び退き、転がりながら草むらに身を隠す。元居た位置に矢が刺さっていた。となると魔法少女じゃない奴が狙って来たのか。じゃあこの霧の正体は何だ?


「この霧の正体は何だろう」

「魔法の匂いがするわ……でもこないだこの町の端で感じた危険な感じじゃない」


 こないだの件をシシリーが知っているのを意外に思いつつ、なるべく居場所を特定されないよう這って移動する。霧が攻撃の意思がない目くらましと言っても、それを出してる相手ではなく別の奴が矢を放ってきたとなれば、魔法少女の仲間の可能性があるな。とっ捕まえて話を聞きたい。


「シシリー、良かったら協力してもらえるかな」

「良いわよ私も巻き込まれたみたいだから。で、何をすれば?」


 皮の鎧の隙間にシシリーは入ってもらい、矢を放った人間の捜索に協力して貰いたいと告げる。するとシシリー曰く、妖精は木に草や花から情報を得られると言う。攻撃的な感情を露にしていれば直ぐわかるようだ。早速草むらに隠れながら方向を支持して貰い進む。


「次の草むら」


 俺の耳元でそう囁く。慎重に近付きながら隙間から見ると、そこには意外な人物が居た。シシリーを見ると大きく頷くので間違いないらしい。個人的にも狙われる理由はあるので信用し少し離れた木の陰に隠れる。


「そこに居るのは分かってるぞ!」


 急にそう言いだして驚く。まさか見つかったのか!? と思ってシシリーを見ると首を横に振る。どうやら当て勘らしい。


「私が注意を引くからその隙に」


 耳打ちしてからシシリーはその人物の近くへ飛んで行き、援護すべく直ぐに別の方向へワザと音を立ててながら移動した。


「そこか!? 痛っ!? な、なん」


 音の方向へ向いた瞬間シシリーが針で首元を攻撃、直ぐに首に手を当てながら反対側を向いた。それを見逃さず盾をフリスビーのように使い投げつける。見事側面の足の付け根にヒットしその人物は倒れる。地を這って逃げ出そうとしたので急いで間合いを詰めその足を掴んだ。


「な、何をする!? 離せ!」

「どうも御久し振りです自警団団長。今日は何の用でここまでいらしたんでしょうか。まさか狩りをしに来たなんて言わんでしょうね」


 そう、矢を放ったのは初めに訪れた村の自警団の団長だ。前にゴブリンの件で村を再訪した際に、元不死鳥騎士団の盾について尋ねられたので知人からもらったと答えると、驚愕していたのを覚えている。あの時は何故かと不思議に思ったが、自警団の団長が暗闇の夜明けと何か関係があるとすれば不思議ではないのか。


まさか不死鳥騎士団の関係者だと疑ったのか? 記憶喪失というていで村を訪れたっていうのは確かに怪しまれても仕方ないし、その上盾を持っていたら疑惑は深まるか。その疑惑を訂正しようかとも思ったが、何を言っても信じないだろうから今はこの人を町に連れて行くのを優先しよう。


「な、何の話か分からんな!」

「え、どういうことですか? 何の用でここまで来たのか、狩りにしてもここは農家の近くで獲物は殆どいないし村なら他に狩場ある。そして弓を持ってうろうろしているのは何故かと聞いているんですが、分からないとは何が分からないんでしょうか。まさか不死鳥騎士団の関係者だと思って暗殺しようとしたんじゃないですよね?」


 冷静に淡々と指摘するも自警団団長は顔を地面に向けたまま藻掻いている。どうあっても答えないか。この調子だとこの問答に意味は無いどころか時間稼ぎをされてしまう。どうしたものか。


「大変よジン、この人魔法に侵されて居るわ」


 シシリーがそう言うので視線を向けるとこちらに飛んで来ながらニヤリと笑った。俺はそれで察し


「そうか! 団長は魔法におかされてしまったんですね! それは大変だ! 急いで町まで連れて行かないと団長の身が危ないっ!」


 と乗っかって大袈裟に演技をしつつ団長を引き摺りながら農家へ移動を開始する。あの村の兵士を纏める団長を遠くから狙撃したり殺害すれば、自警団はバラけて動かし辛くなるし騒ぎは大きくなる。


村への注意を引きたくない連中は必ず取り戻しに来るはず。戦闘になるなら森の中がやり易いと考えゆっくり移動しているが来ない。案外人望が無いのかと思いながら森を出た。


「ジン!」

「おいおいマジかよ」


 ゲンナリしたくなるような光景が森を抜けると飛び込んで来る。何と村の自警団の兵士たちがそこに居てベアトリスを人質に取っていたのだ






読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ