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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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勇者たちの戦い

「先生!」

「どうした!? そこから出てくると危ないぞ!」


 巨大スズメバチたちの猛攻を凌いでいる時に、ノーブルの声が飛んで来る。問いかけに対する返事がないので声がした方向を見たが、ノーブルが下から出て来て戦い始めてしまっていた。不味いと焦り急いで駆け寄ろうとするも、相手の数が多くて捌くのに手一杯で近付けない。


奮戦してはいたが徐々に相手の速度に遅れ始める。巨大スズメバチは、ルキナたちが二人がかりで倒す相手であり、いくらノーブルと言えどこの数では無理があった。死んでは後に託すものが居なくなってしまう。


「どけぇ!」


 身に纏う焔を気によって増幅させ、近付く巨大スズメバチを包みこんで灰に変えていく。一国を丸々巨大スズメバチに変えただけあって、減っている気がしない。精神的に疲弊するも、そんなことを言っている場合じゃない。


ノーブルのところまであと少しとなったところで、彼を見兼ねたのかルキナやベアトリスまで下から出て来しまい、ノーブルと共に戦い始めてしまう。光景に唖然としたが、皆が放っておけなくなる辺りさすが勇者と見込んだ男だ、と呆れながらも感心する。


やはり勇者と言うのはああでなくてはならない。自分のように臆病で奪われた者を取り戻すことに執着するようでは、世界は守れないだろう。砕破拳(さいはけん)焔祓風神拳(ぜんふつふうじんけん)を駆使し、半数以上を急いで殲滅し彼らの様子を見守った。


ギリギリではあるが、それでもなんとか力を合わせて巨大スズメバチを撃退している。先のことを考えれば、本当に命が危なくなるまでは静観が正しいだろう。数が減ったことで多少の余裕が出来たのもあり、速度を落として戦いつつ勇者たちの奮闘を見守った。


―随分と余裕じゃのぅ小僧!


 小僧と言われノーブルのことかと思い警戒したが、口調を聞いてそれがノーブルに対するものではないことに気付く。間一髪前へ飛び込み難を逃れ、先ほど立っていた場所を見ると床からなにかが這い出そうとしている。


すぐに迎撃をと思っていると巨大スズメバチがこちらに密集してきた。捌きながら這い出てくる者を見ていて唖然とする。出て来たのは水晶の体に剣を四本背負い、槍と盾を持つ巨大スズメバチだった。


「随分会わない間に変わったな、水晶の杖」

「そんな名前じゃないわ! ワシの名前を忘れるたぁなんて奴じゃ!」


「話の流れは把握しているか? ジロウ」

「知ってるなら名前で呼ばんかい!」


 レイメイがいるのだから、しゃべる水晶の杖であるジロウがいないわけがない。かなり久し振りでそれになかなか気づけなかったが。ジロウに謝罪しつつ改めて確認をしたが、話の流れはわかっていると言う。


なら戦いは終わりにしようと告げるも、それは出来ないと拒否される。下からレイメイも出て来てこちらに駆けよってきた。彼女も止めるよう説得を試みたものの、ジロウはそれを拒否し自分は元々レイメイのお目付け役だったと告白する。


「計画に支障がある時には、お前を殺ることになっていたんじゃ。ワシはテオドール様によって作られた道具なんでな。あの方に指示された任務を遂行させてもらう。悪く思わんでくれや」


 言い終わるや否や、手に持っていた槍をレイメイに向けて投擲してきた。三鈷剣で弾くと灰になって消えたが、その間に水晶スズメバチのジロウは四本の手に剣を持ち、こちらに迫ってくる。レイメイの前に出て剣を構え切り結ぶ。


テオドールの邪悪な意志が混ざっているお陰で、水晶の剣はこちらの剣に当たると灰になった。結局剣は全て灰になり、ジロウは武器を失う。まだやるつもりなのかと彼に問うも、どちらかが死ぬまで止まらないという。この戦いが終わればレイメイをシャイネンに連れて行き、分離可能かどうか魔法で施術してもらうので、一緒に来ればいいと提案したが首を横に振る。


持ち手である主のために忠を尽くすのが道具の役目と言うので、その理論でいくなら今の主はレイメイだろうと指摘すると止まった。彼自身の迷いが言葉に出たのだろうが、出会った時から変わらずポンコツで少し安心する。


「ジロウ! お願いだからもうやめて!」

「そうはいかんのやレイメイ。ワシは役目を果たす」


「私たちはシンラ様のために戦って来たはずよ! テオドールだってそうだと言ってたのに、私たちもジン・サガラも騙してここに来させた。このままじゃシンラ様のためじゃなく、テオドールに利用されて死んじゃうんだよ……そんなの間違ってる!」

「ワシは元々お前を騙してた側の者じゃ」


「そんなの私は信じない!」


 レイメイの叫びにジロウは動きを止めて立ち尽くす。なんとかジロウがここで戦いを止めてくれれば、恐らく巨大スズメバチは大人しくなるはずだ。テオドールが思考を失っていると言っていたのに、こちらを的確に追って囲って攻撃して来ていた。誰かの指示があってこそだろうと考える。


事前に攻撃目標を設定した、もしくはテオドールによる遠隔操作の可能性も捨てきれなかったが、ジロウかレイメイに違いないと思った。二人のどちらかだろうという結論に至ったのは、二人が足を止め話をし始めた瞬間、巨大スズメバチたちの動きが鈍りだしている。


「ジロウ、別に俺との決着をつけるならこの場でなくても良いだろう? どうせスの国で皆と決着を付けなきゃならんらしいし」

「それは……」


―そりゃあんまり面白くない結論だね……私的に否決させてもらう。廃物処理はしっかり頼むよ、ジン


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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