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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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テオドールの過去と願い

「語尾に”にゃ”はもう付けないのかな?」


 皮のジャケットに皮の胴鎧、膝まである白のスカートを履いたツインテールの少女のレイメイは、初期に戦った魔法少女だ。語尾に”にゃ”を付けているのが特徴的で、相棒のジロウという喋る杖と共に苦戦させられたのが懐かしい。


「この戦いがすべて終わったら、皆で新しい目標に向かって戦う日々が始まる。その時には戻るわよ」


 どうやらシンラはこの戦いの終わりを、自らの目標達成と定めているようだ。目標達成は魔法の普及を意味するが、どうやって叶えるつもりなのだろうか。現状で強引に普及させるなら、魔法を使わざるを得ない状況にし止む無く一般人にも教える、と言う形以外に方法があるとは思えない。


一般人に教える形にするなら、アの国を占領し大型スズメバチと人を融合させ、それを魔法によって分離できるようにするだろう。仮に魔法で分離可能だとすれば、全面攻撃をかけると宣言せずにこちらに来るよう促し、様子見させるなり先に潜入してる者を使えばいい。


なぜそうしなかったのかとレイメイに問うも、全面攻撃をかけるとは自分は言っていないと答えた。そんな話はどうでもいいと言われるが、こっちからしたらどうでも良くない。テオドールかイエミアかはたまた両者に、シンラが騙されてる可能性がある。


考えをそのまま口にするとレイメイは戸惑ったものの、自分はここでお前たちを倒す役目があると言って身構えた。戦いは避けられないとしても、このままではシンラもレイメイも捨て駒にされるだけだ。レイメイに対し、このままシンラの夢が無残に仲間によって踏みにじられても良いのか? と問いかけるも、うるさいと一喝されてしまう。


「アの国の人たちを俺も倒してしまったが、分離できる可能性があるなら試させて欲しい。今からシャイネンに行き、ニコ様たちに掛け合ってくるから待っててくれ」

「……本当に信じていいんでしょうね」


「シンラとは真っ向勝負でケリを付けたい。このまま行けば横やりが入りかねないからな」

「分かったわ、少しだけ待」


―おや、仲良しこよしな展開かなぁ?


 まるで待っていたかのようなタイミングで、嫌らしい声が中に響き渡る。辺りを見回すも見えないが、近くにいるのは確実だと考え皆に警戒するよう促し身構えた。気を広げ直ぐに対応できるようにしてその時を待つ。


「テオドール、恥ずかしがるような関係じゃないだろ? こっちに来て話をしないか?」


―このままでも話せるが、何の話かな?


 一応問いかけには反応し、テオドールであることも否定しないようだ。話もしてくれるようなので、気になっていることを聞いてみようと思う。シンラの体を強化したり人型花を作成したりしているが、その目的がなんなのか分からずにいる。


アリーザさんが暴走させられた時、メッサーシュミットとかいう飛行機の話をしていたことからしても、テオドールも異世界人だ。クロウと結託し先生と呼び、アリーザさんに心臓代わりの魔法石を埋め込んだ張本人でもあった。


死んだ人間に魔法石を埋め込み蘇らせる実験をし、人間に似た者を作る実験をする。ひょっとするとするとテオドールは、向こうで死んだ人間をこっちに呼び込もうとしているのではないだろうか。


―どうした? 話が無いなら


「テオドール、あなたは向こうの世界からこっちの世界に誰か呼び込もうとしているのか?」


 こちらの問いかけを聞くと少し間があってから、どうしてそう思うのか聞かれ考えたことを話した。なぜ向こうの人間なのかと問われ、クロウと手を組んでいるにもかかわらず、未だに成し遂げていないようだからと答える。


こちらの世界の人間なら、こんなに長い時間かけることなくクロウなら蘇らせられるだろう。目的を果たしているのなら、シンラにこだわる必要は無いように思えるとも付け加えた。


―なるほどこちらも露骨ではあったかな。まぁ君の読みは当たりだよ。私はあっちの世界で医者をしていた


 そこからテオドールは懐かしそうに前の世界でのことを語り始める。小さな村に生まれ、猛勉強の末に医者になったらしい。医者になってからしばらくして戦争が起き、軍医として戦争に参加。戦争が終わり医師業を再開し、金銭を稼ぐべく富裕層の患者を増やすべく営業したそうだ。


富裕層の顧客が増えれば金銭に余裕が生まれる。戦地では医薬品が足りない状況を目の当たりにし、且つまたいつ戦争になるか分からない世界情勢だったため、余裕が生まれた金銭を製薬会社に投資したかったと懐かしそうに言う。


―思えばそれこそがあの方との出会いの始まりだった


 営業の甲斐あって徐々に投資に回すことが出来、順風満帆だったらしい。このまま投資を続け医薬品が増えれば、助かる人も増えると楽しみにしていたある日、患者の一人から依頼を受ける。どうしても診て欲しい人が居ると言われ、出向いてみると国の最高権力者だったそうだ。


失敗すれば命が危ないとは思ったが、自分の経験と勘を信じ診察する。症状を見抜き自信をもって診断を下し、自分が投資していた製薬会社の薬を処方したところ、劇的に改善することに成功したらしい。幾度も呼ばれ診察をしていくうちに気に入られ、テオドールは最高権力者の主治医となった。


自らの全てを投げうち、患者の体の不調全てに対応し彼は最高権力者を支え続ける。しかしなぜか周りからはヤブ医者呼ばわりされ、薬漬けにしているだけだと非難された。理不尽に耐えきれず自分から主治医を下りたいと言うも、世界最高の人物は私が信じているのだから気にするなと言い、主治医で居てくれと頼まれる。


テオドールは涙が出るほどうれしく、より一層信頼に応えるべく懸命に使えたそうだが、再び戦争が起こってしまう。国は劣勢に陥りいよいよとなった時に、最高権力者はテオドールに逃げるよういったという。献身を尽くして来たのだから共に残るとテオドールがいうも、診察が終わる時間になったんだよと言って強引に引き離された。


―最後まで御奉公することも出来ず、惨めに生き残った私はやがて病で死んだ。死にゆく中で願ったんだよ、生まれ変われるならもう一度あの方に尽くしたいと。そうしたらクロウが私の前に現れた


 異世界に招いたクロウはテオドールの願いを聞き入れ、自分に協力するなら君の最高権力者の魂をこちらに呼ぼうと約束したという。話が終わったので居なくなるかと思いきや、外へ出る正面の穴の前に、手を広げながらテオドールは現れる。


「長話に付き合ってくれてありがとう、諸君。御礼と言ってはなんだが、レイメイが動かそうとしてた巨大スズメバチを使い、ひき殺してあげよう」


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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