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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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アの国到着

急いで来た道を戻り、関所に着く頃には徐々に空が夕焼け色に染まり始める。


「ただいま……うぉ!?」


 関所の周りに張られた蜘蛛の巣に、大型スズメバチが山ほど掛かっていた。夕方になるので巣に戻ろうとした彼らが巣に突っ込んだらしい。巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)たちは糸でぐるぐる巻きにして地面に埋めている。


どうやら人間と巨大スズメバチが合わさった生き物だと説明を受け、万が一にも人間を食料と認識してしまうと不味いため、食べずに埋めているという。アラクネの配慮に感謝しつつ、ヨシズミ王からの親書を渡す。


字も読めるアラクネは直ぐに理解し、これで心置きなく戦えるわと言ってくれた。アラクネの国が出来るなというも、一時的な居場所が出来れば今はそれで良いという。情勢がいつか変われば移動せざるを得ないだろうし、梃子でも動かぬとなれば種の絶滅を招く危険がある。


ジンが国を作った時はそこに移動したいしねと言われ、苦笑いで誤魔化した。こういう時に騒がしくなりそうな問題児を見ると笑顔で頷いている。ベアトリスに指摘されるも、先生が国を作ったところでなんら不思議はないし、自分は全力でお手伝いするのでと返した。


作る予定の無い国の話をしていると要らぬ誤解を招きそうなので、話を変え食事はどうするのかとアラクネにたずねる。幸い移住した先から巨大スズメバチなどを丸めた団子を持参しており、当座は心配ないようだ。


だがのんびりできるほど潤沢ではないので急がなくてはならない。こちらもまさかこんな状況だとは思っておらず、ろくに食料を持ってはいない。一度ヨダの村に行こうという話になり、アラクネたちはここで待つと言ってくれたので急いで向かう。


「嘘でしょ……」


 ベアトリスは嘆き立ち尽くす。村に入ると人の気配はまったく無く、家を見てまわるもテーブルを触ると少し埃が付く程度で野生動物もおらず、失踪してそう経っていない感じだった。遺体は一つもなく利用するために連れ去られたのだろう。


近くの花畑でテオドールに会ったあの時から、すでにこの計画は進行していたのかもしれないと思うと、気付けなかった自分に腹が立つ。ヨシズミ国のギルド員が足止めされたりと不穏な空気が漂っていたのは知っていたし、暗闇の夜明けが各国で暗躍していたのも聞いていたのに。


考えれば上手い具合にヨシズミ国で反乱がおき、クロウが現れ不可侵領域を目指さざるを得なくなり、アの国どころではなくなっている。後発の弱さを露呈したなと思いながら、皆に生もの以外の食料を探すよう頼む。


どこでも非常食はしっかり完備されており、一週間はしのげる食料を確保出来た。食料捜索の合間も生存者がいないか探したが居らず、感謝の言葉を述べ頭を下げて村を後にする。関所に戻ると食事をとってから出発しようとなったものの、ルキナとベアトリスは押し黙ったままだった。


「いやぁ食料があって助かりましたね先生! 僕らは先生と違って弱く、食べなければあの強敵と戦えませんからね!」


 悪気なくそう言って干し肉をノーブルは頬張る。こういう時に彼の存在は有難い。ルキナたちは同族の遺体を見慣れてはいない上に、人と昆虫を合わせると言う非道さを目の当たりにし、ショックは大きいだろう。


犠牲者に哀悼の意を表すのはわかるが、まだ戦いは始まってもいない。彼らの無念を晴らすためにも確実に勝利することが大切で、だからこそしっかり食べて寝る必要があった。ノーブルはこれまでの経験からそれを学んでいる。


残虐非道な所業に彼だって憤りや怒りを感じているはずで、それを敵にぶつけるべく今出来ることを粛々と行う。彼の姿勢に習おうと自分も干し肉を口に入れた。しばらくしてからルキナたちも干し肉を食べ、腹が満たされたところで関所を出る。


いち早く目的地へ着くために、とアラクネが巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)たちの背中に乗るよう勧めてくれた。御厚意に甘え背中に乗せてもらい、一路アの国を目指す。蜘蛛たちのスピードはとても速く、馬より遅いが座る面積が広いので乗り心地は悪くない。


「ジン、敵が」


 夜ならいけるかと思ったが、相手もこちらの動きを予測していたようで待ち伏せを受ける。強行突破したいところではあるものの、挟み撃ちにされては蜘蛛たちに多く被害が出てしまう。到着は遅れるが処理して進もうと提案し、蜘蛛たちも足を止めて応戦した。


森を抜けておらず、木の間隔も狭い。掻い潜って距離を詰め上手く大型スズメバチたちは攻撃を仕掛けてくる。手間取るかと思ったところで、蜘蛛たちは巧みに木の間に少量の糸を履き、大型スズメバチたちの行動を遮ってくれた。


動きを止めた一瞬を見計らい三鈷剣(さんこけん)で斬り捨てていく。敵が居なくなると背に乗るよう寄って来てくれ、敵が現れると足を止め下ろしと蜘蛛たちとの呼吸も合ってくる。


「おや、孤児たちが虫を連れて来るとはお似合いですなぁ」


 何度か繰り返しようやく森を抜け、草原の先に大きなハチの巣が見えた。ここまで来ればあとは風神拳で吹き飛ばすのみと思ったところで、夜空から何かが目の前に降りて来る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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