スライム討伐二回目中に妖精に会う
「おう、兄ちゃんまた悪いな!」
「どうもです! 今日も同じ場所ですか?」
昨日と同じ農家の人に挨拶して早速案内を受けるが、どうも昨日とは違う場所らしい。スライムも食い尽くした場所には来ないようだ。それにしてもどういう条件で発生してるんだろうあの生き物。農家の人に聞いてもそれが分かるなら苦労しないと言われてしまった。
どうやらそう言う研究は深くされていないようだ。となるとそう言うのを調べて情報を売るって商売も出来るのか……冒険のし甲斐がありそうだと考えていると現場に到着。こないだより大分畑から離れた位置が荒らされていた。農家の人はいつもなら気が付かない場所だが、妙な気配がしたので来たらこんな有様だったと言う。
早速スライム討伐にかかるも見つけたスライムたちは何故か急に奥へと移動し始めた。農家の人には危ないのでご自分の仕事に戻ってもらい、ベアトリスと一緒に警戒しながら奥へと進む。すると徐々に霧が発生して来た。ベアトリスにこないだ会った変な連中かもしれないから様子を見てくると言うと、腰に付けていたヒョウタンのようなものを手渡してくれた。
「これは?」
「こないだマリアナさんたちと散歩に行った時に森に生ってた果実の果肉を取って乾燥させた物だよ。これに水を入れて持ち運び出来るんだってさ。一応持っておいて」
「有難う! すぐ戻るから!」
有難くそれを受け取り腰に付けて走り出す。この霧は前に魔法少女と戦った時のものに似てる気がする。引き揚げたかと思ったが復讐しに来たのか? そう考え警戒しながら前進を止めて辺りを見回してからゆっくり下がる。
「いてっ!」
何かが首元を刺して行く。まさかビグモスか!? と思って周りを見るとそれらしき大きさのものは飛んでいなかったが、何かが飛んでいるのだけは確認できた。首から手を離すと血が一滴小さく付いている。蚊に刺されるとこうはならない。となると明らかにダメージを与える為の攻撃を仕掛けて来ているのは間違いない。
あんな小さなのをどうやって捕らえたら良いか。そう考えながら何かないかと金貨とは別の革袋を漁ろうと手を突っ込んだ瞬間、ジュルっとした感触に襲われる。この感触は昨日ゲットして売り忘れたスライムの皮のジェル状のものだと察しゲンナリする。部屋に戻って直ぐ皮の鎧のメンテナンスに取り掛かったがあまりにも改善せず途方に暮れ、防具屋の親方に頼んで指導を受け遅くまで拭いてワックスを掛けていたのですっかりこれを忘れていた。
「喰らえ!」
「キャア!」
他に手段があればと思ったが無いのでそれを掴み、思い切って飛んで来た何かにそれをお見舞いしてみた。すると何とか命中し小さな悲鳴を上げて地面に落ちる。確認して見るとそこには羽を生やした小さな人がジェルに塗れていた。
「何だこれ……人形か?」
俺はしゃがんでから近くにあった棒で突いてみると、それはジェルに身動きを封じられながらも藻掻き蹴り飛ばそうとしている。どうやら生きているらしい。この生き物なんだ?
「おいお前、俺を何で刺した? シンラの命令か?」
「シンラ!? そんな奴知らないわ! それにお前って何よ!」
「じゃあ何て言うんだ?」
「……教えない」
「じゃあ仕方が無い。おいお前、何が目的なんだ? おいお前、森を破壊するのか? おいお前、スライムを呼び出してるのか?」
「お前お前五月蠅いんだよ糞人間が! 何が目的かってそれはこっちの台詞! 森を壊そうとしてるのもお前たちでしょ! スライムは自然発生してるから関係無いわよ馬鹿!」
「そうか良い奴だな。全部答えてくれて有難う」
「きぃいいいい!」
小さい人はジェルから出ようにも出られず、煽られて俺の質問に答えてしまったのが悔しいのか地面を叩く。見た感じ綺麗な服を着てるし髪も御団子二つと良い暮らしをしてそうに見えるが何者なんだこれ。
「俺はこの森の異変を調べに来た人間で、最近森に紋様を仕掛けている連中も探している」
「じゃあ何であのリスを倒したの!? あの子はただ操られてただけなのに!」
「操られてたのは後で知ったよ。アレを解く方法は分からないから今後も出くわしたら倒さなきゃならない。何せアイツらこの森と町、それに俺も狙っているらしいからな」
「本当でしょうね」
「本当だよ。嘘なら俺の目を刺しても良いぞ?」
胡坐を掻いてから小さい人が持っていた針のようなものを手に取り、自分の目に向けてそう言った。
「……私の名前はシシリー。この森に昔から住んでる妖精よ」
「妖精……?」
驚きはしたがそう言われると納得する。昔見た児童映画の大人になりたがらない少年の話に妖精が出ていたのを思い出したからだ。まさか異世界に来て妖精にまでお目にかかる日が来るとは。益々物語の中に迷い込んだ気分になるなぁ。
「そうよ。私たちは悪戯ばかりしているように見えるけど、それは森の秩序を護る為にも必要な場合があるわ。人間は雑だからやっと芽が出たところも踏み潰すし火が移りそうなところで焚火はするし、それを言って分かる様な頭してないから実力行使してやるだけよ!」
「それはやられて当然だと俺も思う。そう言う場合はドンドン悪戯してくれ。時間があれば参加したいくらいだ」
「ど、どうも……貴方悪い人じゃないみたいね」
シシリーに敵意が無い感じなので、俺はジェル状のところからシシリーを救い上げた。そして飲むように持参していたヒョウタンに似たもので作られた水筒の水をゆっくりかけ、いつもベアトリスに持たされている手拭いでシシリーを拭く。何とかヌメりがマシになるとシシリーは俺の手拭いを使って自分で拭った。
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