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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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アの国に巣食うもの

「これはいったい……」

「あまり口にしたくないが……人間と大型スズメバチを何らかの方法で合わせた生き物だろう」


 言い終える前にベアトリスが急いで茂みに隠れ嘔吐した。シャイネン近郊のエルフの村の件がなかったら、自分も吐いていたかもしれない。ルキナは妹の傍に駆け寄り背中をさする。落ち着くまで待機しているとノーブルが近付いてきて、この先刺激が強い場面が多そうなので留まるよう説得しましょうか、と言ってきた。


彼が説得に向いている気がしないものの、何事も経験だなと思い任せてみる。ノーブルの言う通りここから先は自分たちが死体の一部になるか、死体の山を歩く側になるかの二択しかない。戦いの前にある程度覚悟はしていても、実際こういう狂気の沙汰を目の当たりにすれば二の足を踏む。


そっちこそこういうのは平気なのか、とノーブルに問うもまったく気にならないという。ヤスヒサ王の遺産であるファーストトゥーハンドを受け継ぐまでに、死体は山ほど見たそうだ。特にシャイネン近郊はこの世ならざる者(アンワールドリィマン)が闊歩し恐竜もいる。


不用意に森の中に歩いて入る者には容赦なく襲い掛かり、その救援に駆り出されることもあったという。デラウン方面にはこの世ならざる者(アンワールドリィマン)は少ないが、その分野生の獣やモンスターが増え、春先は恐竜がそれらを捕食するため動き回るので凄いことになるそうだ。


「我々ネオ・カイビャクの人間が強靭なのは、そうした環境で生きなければならないからです。こちらの人たちはノガミが少ない分過酷だとは思いますが」


 聞けば聞くほどネオ・カイビャク周辺の凄さに驚く。ヤスヒサ王存命中には竜まで襲って来たというのだから、かなり難易度が高いのは間違いない。リベンには魔法学校もあるが、魔法を扱える者は今の時点でも限られていた。


シンラが魔法を解放すべきという主張をしたところで、ノガミが積極的に賛同しないのはその辺りの違いもあるのだろう。彼の主張に賛同していた者たちも、リスクをシンラが証明してしまったことでいなくなった可能性がある。


「うごっ!」


 落ち着いたのを見計らい、ノーブルがベアトリスに駆け寄り話をした。内容は聞こえなかったがベアトリスはみるみるうちに顔を真っ赤にし、最後には鳩尾に蹴りが飛んでノーブルの姿が茂みに消える。ベアトリスは肩を怒らせながらこちらの前まで来た。


「向こうで色々魔法について勉強して知識は付けたけど、こういうの見るの初めてだから。次は吐かないから」

「吐く吐かないはどうでもいいですけど、先生のように止めを刺せますか? 相手は元人間ですよ? 自分たちの悲しさを訴えられたとして一顧だにせずできます?」


 うずくまっていたノーブルが、いつの間にかベアトリスとの間に入り問いかける。彼の問いを受けて少し間があった後、父の仇を討つためには討つべきは討つとベアトリスは答えた。ノーブルはこちらに視線を向け判断を仰ぐ。


可能な限りフォローはすると決めて来たし、何よりベアトリスは初期に共に行動した相棒だ。彼女の望みを叶えてやりたい気持ちもあるので、行こうと告げて答えとした。行くと決めたのなら急いで進まなければならない。


スズメバチは午前中から昼前までは餌を探し回っている、と園に仕事に来た駆除業者が話していたのを聞いたことがある。夕方には巣に戻るので、出来ればその前にアの国に入り今の状況を確認したい、と三人に伝え共に先を急いだ。


ここまでは着たことがあったが、ここから先は未知の領域だった。地図はあるがそこまで詳細に書かれてはいない。先ほど遭遇した巨大スズメバチは、ひょっとすると花畑に餌を取りに来ていたのかもしれないと考え、花畑を通るルートから離れて走る。


「なんだあれは……」


 森を抜け緩やかな上り坂を上がっていくと丘陵に出た。先の方を見るとまだ距離はあるが、巨大なハチの巣が森の中から突き出ているのが見える。地図で見ればその場所はアの国があったところで間違いない。


アの国の人々は居るのだろうかと不安になりつつ、丘陵を下り一路関所を目指す。餌場はこちらにはないのか、幸いにも敵に遭遇せずに関所に到着した。門は開いておりそこを潜って兵士の詰め所に入ったが誰もいない。


なにか記録は無いかと探したところ、ずっと付けていたであろう記録が見つかる。最後のページを開いて見たが、王から門を開けて国へ戻るよう言われたと書かれていた。恐らくすべての関所は開放されており、そこを通ってアの国に行った人たちはあの巣にいるに違いない。


アの国の状況が漏れてこなかったのは、あそこにいる司令塔が潰していたからだろう。そうなるとこちらがある程度スムーズに進めたのは違和感が出てくる。一旦引き返したいところだが、総攻撃の勧告を受けているので引いている間に攻められてしまう可能性が高い。


状況を考えればこのまま四人でいくのは厳しいがどうしたものか、と考え込んでいた時に花畑での戦いを思い出す。あの時アラクネとその一族に助力を得て退けたんだ。シシリーにアラクネを呼べないかと問いかけたが、呼ぶ方法が分からないと言う。


ここはダメもとで大きな声でアラクネを読んでみる。


「呼んだ?」


 いきなり小屋の外にアラクネが現れ肝をつぶす。

読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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