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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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パーティ結成へ

「お前に国の都合でアリーザを任せたが、私の弟が敵を招き入れ家を燃やさせてしまっただけでなく、今度はお前の留守中に敵にさらわれてしまった。恥を知っていれば頼ることすら有り得んのだが」


 陛下は溜息を吐いてから苦笑いをする。家を燃やしたのは暗闇の夜明けだし、留守中を狙って来たのも暗闇の夜明けだ。この世界で大きく出世できたのも町長や陛下のお陰だから、恨みに思ったことは一度も無いと告げた。


今は借りも貸しも一旦置いて、我々は共通の敵を前にしっかり肩を組んで行きましょうと語り掛ける。陛下と宰相は大きくなったなと親のように微笑みながら頷いた。最初見た時、二十歳を超えて生きているのに頼りなさげで不安を覚えたらしい。


この世界ではつい最近まで、二十歳を超えて生きている人間族は厳しい環境を生き抜いてきたので、頼りないのは珍しかったという。今は体つきも変わり背筋も伸び、ただ座っているだけで強さを感じると言われる。


以前と変わらず自然としているが、皆に不安感を与えないようになったのなら十分だ。陛下たちとはこれからも連絡を密にし合うことを約束して城を出る。その足で町長の屋敷に向かったところ、入口で町長とばったり会った。


これまでお世話になったお礼を述べ、人数が増えご迷惑をかけるので宿に移ると伝える。快く了承してくれ、またなにかあったら遠慮なく頼るようにと言ってくれた。今後とも宜しくお願いしますと頭を下げ屋敷を後にする。


「遅かったじゃない!」


 宿の近くに到着すると前の通りがだいぶ騒がしく、人だかりが出来ていた。なにかと思いながらすいませんと断りつつ、人波を掻き分け前に出る。見れば宿の前に大きなテーブルを出し料理を並べていた。今日は記念日なのだろうかと思って見ていると、三角巾に白いエプロンをしたベアトリスが声を掛けてくる。


兄のルキナも同じような格好をして配膳をしており、どうしたのか聞くとお前の帰還祝いだと言われ驚いた。町の人たちを改めて見たところ、皆食材とか飲み物とかを手に持って集合している。事前にジョルジさんたちが声を掛けていたようで、知らなかったのは宿に来た面子だけらしい。


さっそく手伝おうとしたが座っていろと言われ、ベアトリスに手を引かれてテーブルのど真ん中に座らされた。ただ座っているだけというのは居心地が悪い上に、周りの町の人たちにもじっと見られていて対応に困る。


取り合えず愛想笑いをして誤魔化したが、長い時間持つわけもない。手伝わせてと頼もうとした瞬間、他の皆で料理を運び終え乾杯をしようとなった。視線がこちらに向いたので音頭を取るのかと思いきや、ジョルジさんが取ってくれるとなりほっとする。


我々の英雄が帰還した日常までそう遠くない、とジョルジさんが言うと皆湧き上がった。違和感があったものの、せっかく皆が喜んでいるところに水を差すのは良くないと思い、乾杯をして回る。町長や奥様、イーシャさんたちも来てこの日は夜中まで飲んで騒ぎ、朝方就寝となった。


「先生宜しくお願いします!」


 お酒が強い方ではないのでなるべくセーブして飲んでいたが、勧められたら飲まないわけにはいかず二日酔い気味になる。さらにシシリーにエレミアにベアトリスにウィーゼルが部屋になだれ込んで来て、賑やかに起こしてくれた。


頭の中で警報が鳴り続けていたものの、ジョルジさんに強烈な酔い覚ましのジュースをもらい若干回復する。のんびりと昼食を取っているとイーシャさんがやって来て稽古をと言われた。今日はちょっと勘弁してもらいたいというも、ノーブルやベアトリスにルキナまで稽古を付けて欲しいと大きな声で言い出す始末。


明らかに稽古しないと動かないぞ、という雰囲気を醸し出しながら周りを囲まれてしまい、仕方なく了承し外へ出る。宿の前の道路で向かい合って並んだ時、イーシャさんが”打倒ノーブル”と達筆な字で書いた鉢巻を付けているのが見えたがスルーした。


「……いつでもどうぞ」


 若干頭痛と吐き気が残っているので、極力動きたくないため攻撃してくるよう促す。四人は顔を見合った後でじゃんけんをし始める。待っている間に空を見上げるとカンカン照りだった。今日も空は晴れ渡り日差しも風も心地良く、日光浴で癒されかなり回復する。


「はぁっ!」


 こちらに向かって誰かが攻撃を仕掛けてきた。かなり力が抜けた状態で立っていたからか、振り下ろしの剣圧に押され体を少し逸らす。見ればルキナが攻撃を仕掛けて来たようだ。すぐさま右薙ぎ払いがくるも、同じように押され半歩後ろに下がる。


なにか掴める気がして来たが、二日酔いのお陰で掴めるのは複雑な気分だった。その後も同じように狭い中で対処し続けるとルキナの動きが止まる。最初は力を入れ過ぎだったが、徐々に抜けて鋭く小さくなっていって良かったと感想を述べたものの、本人は不満そうな顔をしていた。


次のベアトリスはショートソードに盾というスタイルで攻撃を仕掛けてくる。彼女を見て不死鳥騎士団の盾を思い出し、あとで回収しようと思った。師匠とも稽古をしていたのか、以前とは比べ物にならないほど厳しい攻めをしてくる。


それでもルキナの時と同様に剣圧に押されて避け、盾を押してのけん制も同じように避けた。今の自分は羽毛か紙になった気分になる。ベアトリスも手を止めたあとでアドバイスをし、ノーブルとイーシャさんにも同じようにして稽古は終了となった。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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