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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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蓮の池

行く時は声を掛けてくれというので、どこにいるのかと聞くとこの辺りで呼べば来るから、と言って司祭は去る。去った後もしばらく座禅を組んで時を過ごす。遠くから多人数の足音が聞こえて来て目を開けた時、空は星が去り陽が昇りかけていた。


門が空いたと同時に下へ降り、町長の乗っていた馬車に近付き声を掛ける。中へ入るよう言われたので入り、どうでしたかとたずねると険しい顔をした。敵兵の残存勢力を追走したものの、関所を抑えられてアの国どころか途中までしか行けなかったようだ。


町長と共に城まで行こうとしたが、朝だが睡眠をとるように勧められ町長の家の前で下ろされる。座禅を組んでいたからか全く眠くはなかったものの、家に入り借りている部屋のベッドにもぐりこむとあっという間に眠りに就いた。


―蓮の池へ


 声が聞こえて驚き目を開けたところ、目の前にシシリーが居てこちらを見ている。シシリーの声ならわかるので違うなと思い、もう一度寝ようと掛布団を持ち上げようとしたら阻まれた。どうしたのかとこちらが言い終わる前に、涙ぐみながら大の字に体を広げて顔に張り付いて来る。


生きててよかったと言いながら声を上げて泣きだした。たしかに司祭の外殻装着状態での風神拳を受けて吹き飛ばされたのに、よく生きていたなと改めて思う。これも先生たちのお陰だなと思いつつ、心配かけてごめんと言いながらシシリーの背中をさする。


シシリーが落ち着くのをそうして待っていた時、部屋の扉がノックされたのでどうぞと伝えた。失礼しますと言って扉を開けたのはイーシャさんだったので、中へどうぞと促すもなぜか戸惑っている。顔に引っ付いているシシリーが気になるのかと思い、うちの母親は気にせずどうぞと声を再度かけた。


ベッドの脇まで来ると頭を下げ申し訳ありませんでしたと言う。どうしたのかと聞くも頭を下げたまま動かない。


「アリーザさんを目の前でみすみすさらわれただけでなく、私の祖母が」


 そのことかと思い、アリーザさんを護ってくれたことに感謝をし、さらわれたのは自分の落ち度だと話す。さらにあれはイーシャさんのお祖母さんではなく、体を乗っ取った悪魔の仕業だとも伝える。


悪魔とは何なのかと問われ、この世界には居ないのかと思い悪い幽霊のようなものだよと答えた。涙ぐみながら祖母を助ける方法は無いのかと彼女に聞かれ、元の場所に帰せるよう努力すると言うのが精一杯だ。


イエミアはどういう経緯か知らないが、ノガミにただならぬ恨みを持っている。死から蘇り、さらに娘や孫に手を掛けてまで成し遂げたいのだから、説得したところで無意味だ。司祭が奪ってきた瓶の中身が不明だが、恐らくこの辺りで試しに散布して上手くいけばリベンで撒く算段だろう。


イーシャさんは私も一緒に行くというので、それは意味が無いと断った。何故かと問われたが、一度目で手加減しなかったのに二度目で手加減するはずはない点、イーシャさん自身が手間取れば人質として使われる点を挙げる。


イエミアの強さの底が分からない上に、アリーザさんという人質をもうすでに取られている状況で、さらに取られるのは厳しいとはっきりと伝えた。反論せずにイーシャさんは走って部屋を出て行く。話している間に落ち着いたシシリーに良いのか、と聞かれたが良いと答える。


相手が引くことは考え辛く、戦いを終えて生きて帰るか戦いを終える前に死んで帰るか、の二択しかない。自分以外を護れると言い切れるほど傲慢にはなれなかった。シシリーにも出来ればここに残って欲しいと伝えたが、ぺちぺち顔を叩かれ抵抗される。


まぁ誰も言って大人しく引き下がるなら苦労はしない。修行を終えて自分の能力を再確認したが、誰もいない時に走って出ればもう追いつけないと思う。妖精王モードの時も顕現不動(けんげんふどう)時もそして破邪顕正(はじゃけんしょう)モードの時も、常に欲していた地力の強さをやっと手に入れた。


向こうがどんな手で来てもそう簡単に負けはしない。改めて決意を固め、シシリーを剥がしながらベッドを出て着替えた後で外に出る。情報を少しでも集めなるべくスムーズにイエミアとアリーザさんに会うべく動こう。


下に降りた時丁度町長が居たので、周辺国の情報をもらえないかと頼んだが、今整理中でもう少し待って欲しいと言われた。その間また修行でもして過ごそうかと思っていたところ、町長からマギ先生が出来れば教会に来て欲しいようだと言われる。


薬草を頼まれてその途中で司祭にぶっ飛ばされたのを思い出し、急いで紹介へ向かう。


「あら、忘れないでいてくれたのね?」


 教会へ行くと竜神教の兵士がおり、こちらを見て敬礼したので誰か知っていると受け取り、ユーさんへの取次ぎを頼むとすぐに通してくれた。部屋に入るとこちらを見て開口一番そう言われ、深々と頭を下げて謝罪する。


ユーさんはくすくすと笑い、気にしなくていい無事に帰って来れてよかったわと言った。まるで何をしていたのか知っているような口ぶりが気になったが、あのイザナさんを呼び捨てにするくらいだから、色々見えていてもおかしくはない。

読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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