大地の果て
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「うぅ……」
苦しさに目を開け、ぼやけた視界が鮮明になると木の板が先の方にあるのが見えた。自分の体を触ってみると何かが巻かれており、見ようとしたが体が痛すぎて起こせない。せめて手を見たいと一生懸命上げてみたところ、手の先から腕まで包帯が巻かれているのが見える。
どうやら司祭の風神拳で吹き飛ばされた先で、誰かに介抱してもらい寝かせてもらっているようだ。
「よう、やっぱり生きていたのか」
左に肌が浅黒く黒髪黒ひげで茶色の作務衣を来たガタイのいい人物が、こちらの顔を覗いて声を掛けて来た。御礼を言おうとするも声も出ない。せめてうなずくだけでもしようとしたところ、少しは良くなったかと言って笑う。
「お前さんと違って俺は喋れるから自己紹介をしておこう。俺の名はライデン、他人は俺のことを雷神とよぶ」
がははと豪快に笑うライデンの周りを、バチバチッと静電気のようなものが起こる。雷の魔術か魔法を使うのだろうか。
「とりあえず元気になるまで我慢だ。良くなったら色々聞かせてくれ」
ライデンはそう言って去って行き、それと同時に意識が遠のいていく。チート能力失効のせいなのか、ライデンの名を知った日から上半身を起こし声を出せるまでだいぶかかった。やっと話せるようになり彼に礼を言うと偶々だという。
散策に出かけていた時に急に空から何かが降って来て、面白半分に掴んでみたら死に掛けの人間だったらしい。こんなところに人間が来るのも珍しいし、暇なので他の地域のことを知りたくて助けたそうだ。
かなりの重傷だったが回復するとは運が良いなと言うので、なにか薬を塗ってくれたのでは? と聞くと首をひねる。少し間があった後で治療法を聞いたところ、なんとライデンの気を送ったという。こちらにも気を送る治療法が確立されているのか、とたずねたら首を傾げた。
「人間自体あまり交流が無い上に治療など施したこともないのでな。この方法で治るか確証はなかったが、駄目なら致し方なしだろう」
豪快に笑えば良いというものではないが、助けてもらって文句も言えないので笑って誤魔化す。とりあえずここがどこか知りたいので、改めて助けてくれたお礼と自己紹介をしてみる。ライデンはヨシズミ国と聞いてもピンとこないらしい。
シャイネンも知らないというので、ならばリベンやデラウンはどうかと聞くとようやく知っていると答えほっとした。未開の地に飛ばされたらどうしようかと焦ったが、知っているなら大丈夫だろう。
「ということはジンはノガミの関係者か?」
問われたのでクロウ以外のところをなるべく短めにし、司祭に負ける手前まで説明する。話を聞き終えたライデンは大きく頷き、それなら気を送って正解だったなと言った。どういうことなのか問いかけると自分はノガミの親戚だという。
もっと言えばニコの兄だと言われ驚かざるを得ない。どんな偶然があってニコ様のお兄さんのところに落ちるんだ? 司祭はここを狙って吹っ飛ばしたのだろうか。親族となると司祭の件については触れない方が良いだろう。
「お前をそこまでボロボロにした相手が気になるな」
ニヤリとしたライデンの目は輝いている。戦闘民族なんだろうなと思ったが、さすがに甥が暴走しているとは言えず笑って誤魔化した。ライデンも一緒に笑っていたものの、回復した礼に教えろと言い出す。
事情があって言えないというも、どういう事情だと食い下がってくる。上手い誤魔化し方が思いつかず、知れば面倒なことになると警告したがそれでも教えろという。一歩も引かないという顔でこちらを見ていたので、戦おうとしないでくれというのと師匠たちには言わないでくれるなら、という条件を付けた。
良いだろうとあっさり了承したのが気になるものの、条件を飲んでくれたので渋々司祭との戦いの話をする。
「なるほどな。ティーオならそうなるのも止む無しだ」
これまたあっさりと理解を示す叔父のライデン。昔からそうだったのかと問うも、そうではなく竜人の血の為せる業だろうと言った。人間と竜人の間に生まれた師匠と竜人の子のニコ様の間に生まれたので、師匠よりも竜人よりの思考になっているのではという。
ただ人間の血も流れていることで好戦的になり、竜人特有の知識欲が強い部分に作用した結果、知るためには手段を択ばない面が強く出たのではと解説してくれる。じゃあライデンも強い奴と戦いたいのではないかと問いかけると、勿論その通りだと胸を張った。
竜人というワードが出たので気になり、ここは竜人の村かとたずねると違うと答える。リベンかデラウンの近くかと問うとそれも違うと言った。
「ここは竜人の都からさらに北にある、この大陸の最北端にして竜族の地に最も近い場所。俺は竜との戦いを求めてここに居る!」
なるほど戦闘民族だ。竜族ってこの星のヒエラルキートップの種族じゃないか、と言うとだからこそ来たのだという。ライデンは竜人族にはもう負ける気がしないので、残るは竜族しかいないと嬉しそうに話す。
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