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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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揺れる葉

クニウスとパルヴァそれに大先生(おおせんせい)は、信頼し後を任せて旅立ったのだ。いつだって見守ってくれている人たちに対して、情けない姿は見せられない。みんなの力を借りてクロウを倒したが、今回は自分一人でなんとかしてみせる。


気合いを入れ直し自らを奮い立たせ、丹田に集中し気配を捕らえるべく目を閉じ腰を落とす。あまりにも気が大きすぎて丸わかりだが、相手からすれば捉えられたところでどうということはないのだろう。


「良い感じじゃないか、ジン」


 恐慌状態からなんとか抜け出し、冷静に気を捉えて攻撃を予測し避けた。皆で戦ったとは言え、クニウスと共に前線を張った経験は得難いものだ、と改めて思う。クロウは武術家ではないし、体も他人のもので本来の全てを出していないだろうが、凄まじい攻撃だったのは間違いない。


今見た感じ二人の攻撃速度にそれほど差はない。初めて武術を習った相手であったりとか、色々あって心理的に不利だと思い込んでしまっていたものの、落ち着きクロウの時の速度を思い出せば捉えきれる。


―川面に揺れる葉になれ


 いつもと違い小さかったが、不動明王様の声が聞こえた。川面の葉っぱを思い浮かべながら避け続けてみた。右へ揺れ左へ揺れ、相手が拳を奮う度に起こる風に身を任せていたら、次第に目が慣れてきた。


避けると同時に体を一回転させて戻りかけたところで、相手の左肩ががら空きなのが見える。自然と右足が上がり、そのまま遮られることも避けられることも無く左肩にヒットした。すぐさま反動を利用して足を引き、両足でしっかりと大地を踏みしめる。


恐怖を通り越し感覚が麻痺しているのかもしれないが、気がどんどん回復しただけでなく蓄えられている感じがした。攻撃を避けながらも避けきれない時があり、なんとなく気を集中すればダメージを軽減できる気がしたのでしてみたところ、直撃したのに衝撃すらなくやり過ごすのに成功する。


ただ連続して当たると不味いと感じ、あくまで緊急用としてのみ使用した。段々と今の状況が面白くなり、相手が距離を取ろうとしたのを見逃さず距離を詰める。驚いたのか飛び退くだけだったので再度間合いを詰めるとようやく攻撃をして来た。


先ほどまでガチガチに受けて避けていたのが、今はまったく力を入れずに防げているので体力にも余裕が出てくる。攻撃をしようかと思ったものの、この感覚が消えてしまう気がしたので防御に専念した。


「なにか掴みかけているのか?」


 攻撃をしながら問いかけて来たが、首を傾げるだけに止める。正直なところ頭で理解しているのではなく、体の動きに任せていた。余計な思考を感情を一切捨てて避ける、ただそれだけを行っている。


今の境地に至れたのも不動明王様の声によるヒントのお陰だ。必要な時にヒントを出すのも先生として大事だなと学ぶ。生徒をしっかり見ていないとその瞬間を見逃し、機を逸したアドバイスは用を成さない気がした。


「気が逸れるほど暇をさせてしまっているようだね」

「いや、とても学びを得ているよ」

 

 気を悪くさせたようなので、組手みたいな感じで手を当てて逸らしてみる。改めて触れてみるとその気の強大さに驚く。最初にこうして触れていたら動けなくなっただろうなと思った。ノガミ一族の気は誰もこれくらい大きいのだろうかと考えた時、師匠の気と似ているのに気付く。


最初に風神拳を喰らった時に感じた気、あれを肌身で理解していたのが司祭の気による影響を軽減出来た理由なのかもしれない、と思う。組手みたいな感じで手を当てたが、パワーでは叶わないので適当なところで距離を一旦取る。


相手はそれを見逃さず距離を詰めて来たので、足を止めて回避行動をとった。周囲の木や茂みは唸りを上げる拳の風圧に押され身を逸らす。こちらが倒れるまでやる気なんだろうが、今のところ気は増えていて減っていない。


向こうは強大すぎて計り辛いが、増えていないことはわかる。睡眠をとらずに戦い続けたらどうなるか、暗闇の夜明けとの戦いを考え経験しておいた方が良い気がして来た。


「……随分と勘違いをさせてしまったようだね」


 攻撃を止めそう言って距離を取り、懐かしい構えを見せる。あのフォルムで放てばそれは桁違いの威力になるだろう。何よりも不味いのはこの先にはヨシズミ国があることだ。避ければ国を直撃し崩壊するに違いない。


避けることは可能でも、まだ攻撃に転じられてはいない。破邪顕正(はじゃけんしょう)モードで始めて放つが、相手を上回れるのだろうか。言わば相手は本家でありこちらは分家みたいなものだ。


「受けるがいい……これが真の風神拳だ」


 蝙蝠の羽を目一杯広げた後で、拳を突きだし右拳と右足を大きく引いた。同時に彼の体から紫の気が燃え盛る炎のように出現し覆う。こんなものが人が大勢いるところに直撃すれば、焼け野原のようになる。


「たっぷり堪能してくれ、君へのご褒美だよ……風神拳!」


 右拳と右足を同時に出し大地を踏みしめた。拳の先から放たれた紫の気が渦を巻いてこちらに飛んで来る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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