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森の隠し物

「……ジン、少し寄り道しようか」


 ヤマナンさんはそう言うと脇の茂みに入って行ったので俺もそれに続く。真っ直ぐそのまま進んで行くと崖の下に着いた。周囲を見回しヤマナンさんはある一点を見つめ、引き摺って居た盗賊の足から手を離し弓を構える。追手が来たのかと考え俺も盗賊二人を離して構えたが、矢は崖と地面の境目に飛んで行く。何も無いから牽制かなと思いきや、矢が命中すると金属に当たったような音がした。


口に中指と親指を加え口笛を鳴らすヤマナンさん。遠くの草むらがガサガサし、こちらに段々近付いて来る。一体何を呼んだのかと思っていると草むらから飛び出して来たのは白と黒の二匹の犬だった。腰のポシェットから墨と筆と短冊を出し素早く書くとヤマナンさんは犬に銜えさせ、それを銜えた犬たちは草むらに戻って行く。


捕らえた盗賊を見ながらその場で結構長い間待機していると、さっきの犬が兵士とティーオ司祭を連れてやって来た。そして金属に当たったような音がした場所を司祭が調べると例の紋様が現れる。ティーオ司祭は手をかざしその紋様を消した。


「何とか二つ目破壊しましたね。ヤマナンさんの勘は流石です」

「いやぁ偶々崖に違和感があったから見つけられただけですよ」


「森のヤマナンは健在ですね。ゴールドランク一まで辿り着いてから引退し、教員になったと聞きましたが衰えてませんね」


 その言葉に驚く。プラチナが最高位だが滅多に会えないってミレーユさんに聞いたけど、ゴールドランク一って現実に会えるランク帯の人の中でも最高位なんじゃないだろうか。そんな凄い人にまさか会えるとは。


「いえいえもう大分鈍っていますよ。それに魔法関係は私はまるでダメでしたから」


 紋様があった場所を、兵士の人たちと共に別の岩などで潰してから盗賊を引き連れて帰還した。例の商人に関しては、指名手配と共にギルドの利用を永久停止とすると発表される。うちの町以外のギルドにも早速知らせるべくヤマナンさんと教え子たちが出発した。


町長もその人物について調べると共に、俺が警護の依頼を最初に受けた件についても捜査を始めるという。ティーオ司祭はきな臭くなってきましたね、と言い残して教会へ戻って行った。俺の頭の中にはシンラの陰がちらつく。


一体何が目的でこの国を襲撃しているんだ? 俺が切っ掛けとは思えない。関連してるもので思いつくのは俺の盾の前の持ち主にして元不死鳥騎士団の団員だが、彼は死んだと言うし何より滅んだ不死鳥騎士団に拘る理由は何だろう。


疑問はしないままギルドへ報告書を出し、町の捜査にも協力してから宿へ戻る。報酬に関しては出来高部分は無いが基本給は頂けたので良かった。遅い帰宅になったのでベアトリスたちはもう寝ていると聞き、食堂で夕食を頂き御風呂に入って就寝。


 翌日教会で鍛錬をしてから宿に戻り、サガとカノンを町営の学校へ送ってベアトリスと冒険者ギルドに向かう。ギルドへ向かいミレーユさんに挨拶すると、昨日の件は全貌が明らかになるまで他言無用でと言われたので頷き、依頼書の束を受け取り席に着く。


「久し振りにゆっくり見れるみたいだね」

「そうだなぁホントここのところ忙しかったからなぁ。今日は平穏だと良いんだけど」


 依頼書を捲っているとスライム討伐の依頼があった。数は少ないので十五ゴールドだが、農家の依頼で困っているというコメントを見て受けようとなり出発する。


「でもジンは武器無くない?」

「それがさぁ最近はこの盾が思ったより使えるから行けるんじゃないかと思って」


「ジン、盾って殴る武器じゃないよ?」

「え、そうなの?」


 天気も良く久し振りに二人でのんびり移動しているので、気持ちも穏やかになり笑いが起こる。だがこれもベアトリスのお兄さんが見つかるまでの間だけろうな、と思うと寂しくなる。そして昨日の流れからしてそれはもうそう遠くない時期に訪れるだろう。


だけど家族は一緒に居るのが良いと思うから仕方ない。もっと時代も文化も進めば家族がバラバラな方が快適な時代が来るのかもしれないが、この世界ではそうではない。人間がヒエラルキーの一位では無い上に人同士も争っていると言う酷い状況だからだ。


「あそこの農家じゃない?」

「そうだな」


 おっさんとしては出来るところからやって行こうと思う。先ずはベアトリスのお兄さんを取り戻す。サガとカノンを独り立ちできるように見守る。俺自身まだまだなのだが、おっさんとして踏ん張れるなら踏ん張って行こうと決めたので頑張るゾイ!


「こんちわー! 冒険者ギルドから来ました!」

「おういらっしゃい!」


 腹から声を出して斜め四十五度に頭を下げ気合を入れる。農家の人に案内され畑から少し離れた森に到着。草むらだけでなく木まで溶かされていて驚く。青い色に赤い核を内包した軟体がぬるぬるしながらこちらに向かって来た。


農家の人には下がって貰い、俺とベアトリスはスライムを討伐すべく戦い始めた。ベアトリスは町を案内した際に、武器屋に立ち寄ったので鉄の剣を購入したと言う。その剣でスライムを斬り付け核を狙い一匹先ずは倒した。


スライムは倒されると中の水分は土に溶け、消化しきれなかったものと皮として機能していたジェル状のものが残った。ベアトリスが言うには運が良ければ核が残り、高値で売れると言う。俺もスライムを倒すべく盾の端を手に持ち襲い掛かる。






読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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