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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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変わる第二の故郷

眠り続けるアリーザさんに対する襲撃は、彼女を確保するだけでなく主力に近い戦力を削ぐ狙いがあったのかもしれない。そうなってくると気になるのが抜けた穴を埋めた勢力だ。陛下の掲げる帰属意識を盾に内部に入り込み、中から崩壊させようとしている可能性があるんじゃないだろうか。


「ヨシズミ国はこの辺りじゃ一番安定してたのにね。だいぶ住みにくくなって来たわ」


 国が襲撃され防衛意識が高くなった結果、周辺に常時兵士か冒険者がいるようになってしまい、モンスターだけでなく動物も移住し始めたらしい。アラクネたちもここから東に移り人が少ないところに今は拠点を移したという。


今回こっちに来たのは大型花からジンが帰ってきた、という知らせを受けたからだそうだ。彼女としては人間と積極的に関わるつもりは無いが、帰ってきたのなら多少協力してもいいと言ってくれた。騒ぎが収まり拮抗状態に戻れば住みやすくなるし、こちらとの取引も期待したいという。


シシリーが以前アラクネたちの糸を使用した商品を考えていたのを思い出し、そのためにも頑張るよと握手を求めて手を差し出す。改めてよろしくと言ってくれたあとで握手を交わしているとガサガサ音がする。


見ればエレミアとウィーゼルが恐る恐る出て来て、虫はもういないかと言い出した。ビグモスはアラクネが食べてくれたといってアラクネを見る。こんな美人が食べるわけないでしょと木の陰に隠れながら抗議されたが、アラクネが姿を変えると一目散に逃げだした。


逢えて良かったけどここには何をしに? と聞かれたので、傷付いた仲間のために薬草を取りに来たと答えメモを見せる。彼女は一緒に採取してくれるというので協力をお願いした。向こうとしても薬草が使えるので、多く取られると困るらしい。


採取しながらアラクネにこれまでの話をし、採取も話も同時に終える。相変わらず距離を取りながら付いて来る二人の籠にも入れ終えた。感謝の言葉を述べ今後ともよろしくと言うとこちらこそと言ってくれる。


エレミアとウィーゼルの態度を申し訳なく思って謝罪したが、


「私もシシリーもそしてジンも、この世界にとっては異質な存在だもの。あの子たちの反応は当然だと思うわ。あなたたちがもし人の中に居辛くなったら言って頂戴。いつでも新しい場所に一緒に行くから」


 そう言って去って行った。アラクネの言葉を聞いてこれまでのことを振り返る。思えば一般人で付き合いのある人たちは殆どおらず、ギルドに所属していたのに交流もない。自分よりも強い人たちはいるとは言え、ヤスヒサ王の血を引いていたりと特殊だ。


人の中に居辛くなったら……か、と呟くとシシリーが頬に身を寄せた。彼女の背に掌を添え、まだこの世界は広いしそれこそ冒険王にでもなろうか、と努めて明るく言ってみる。良いかもねと答えるシシリーと笑い合いながら、ティーオ司祭の寂しさを少し感じた気がした。


 教会に薬草を持ち帰るとユーさんから素晴らしいとお褒めの言葉を頂く。明日も引き続き頼むと言われ、この日は自由となる。まだ時間的には昼過ぎなので、近くの定食屋で昼食を取った。久し振りに帰ってからゆっくり町を見るが、前とは違う気がする。


甘味処にも寄ったが前に給仕してくれた人はおらず、衣料品店も店員さんが変わっていた。変わらないものなどどこにもない、という言葉を実感している。防具屋さんに顔を出すも相変わらず閉まっていた。


住居一体型の店舗だったので後ろに回ってみたが人の気配はない。近くを通りかかった女性に聞いたところ、親父さんたちは店を閉めどこかへ移住したらしい。情勢が不安定になった上にギルドの依頼も減り、冒険者相手に商売をしていたから直撃を受けたという。


女性はこの国は変わってしまったと言って去る。すべてを終えて帰ってきたのに、すべてなくなってしまった。ジョークにしても笑えるものではない。しばらく動けず立ち尽くしていたが、シシリーやエレミアに促されて大通りへ戻った。


元々故郷なんてない人間だが、この世界の故郷だと言っても過言ではない街が変っていたのは、思ったより胸にくるものがある。正直な話落ち込みたいところだがそうも言ってられない。アリーザさんを守るために怪我を負ってしまったサガたちを、なんとか回復するべく全力を尽くそう。


どこかへ行くのはそのあとで良い。心に吹くすきま風を抑えながらこの日は何となく終えていく。翌朝教会へ出向くと薬草取りを命じられ、今回は出来れば北北西辺りが良いと指示を受けた。やはり取り尽くすと後が困るかららしい。


言われた通りに北北西へ歩いて行くとアラクネが合流してくれ、今日も採取を手伝ってくれるそうだ。助かると言うも、自分としても周辺の状況を確認したかったから丁度良かったわと言ってくれる。


昨日アラクネが言っていたように、以前なら居たマゲユウルフもおらず居たのは兵士のみだった。一際装備が豪華で偉そうな兵士に道を遮られ、なんの用があって来たのかと聞かれる。マギ先生に薬草の採取を頼まれたと答えたが、身分証を見せろと言ってきた。

読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

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