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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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久々なモンスターたち

「皆気を付けて、なにかくるわ」


 黙って後ろを歩いていたウィーゼルが突然そう言って前に出る。シシリーとエレミアにも視線を送ってから、集中して気を広げると確かにこの先の方に感じたことのない気が複数あった。気で捉えつつゆっくり進んでいた時、別方向から小さな気が近くを移動する。


複数あった気はあっという間にその気を囲み、甲高い鳴き声が耳に届いたと同時に消滅した。動く者を見逃すような相手ではないと悟り、戦闘態勢に入るべく三鈷剣(さんこけん)を呼び出す。久々に人間以外且つ群れでの戦いだったため、どうするかと三人に相談する。


相手は群れで行動しているので、囮が引き付け後ろから追い削るのが良いのでは、とウィーゼルは提案してくれた。彼女の提案に対しエレミアは集めてくれれば魔法で一気に吹き飛ばすという。囮役は私がするとシシリーが張り切って言ったが、さすがに危ないので二人で行こうと提案し、彼女を肩に乗せて気が集まる場所へ走る。


見える位置まで来たところで一旦木の陰に隠れて敵を見た。懐かしい相手を見てつい声が漏れてしまう。視線は一斉にこちらに向き、居場所がバレたのか高速で移動してくる。急いで走り出し、引き付けつつ大きく円を描くように移動した。


こちらを追ってきているのは、前に司祭の依頼で薬草を取りに来た時にいたビグモスという、モスキート族の変異種だ。見つけたシスターに説明を受け倒すかとあの時聞かれたが、依頼に無いと断ったのを覚えている。


先ほどの鳴き声が上がった地点を通過しながら地面を見ると、巨大リスが横たわっていた。見れば体毛が抜け落ち毒々しい色に変色している。ビグモスはどんな相手の体液も吸うタイプのモンスターであり、感染症の媒介元となる可能性があった。


一匹だけだし生態系に影響が出てもなと当時は思ったけど、テオドールたちが疫病の可能性があるので出来れば数を減らしておきたい。それでなくともこれだけ数が居たらモンスター以外の動物が死滅してしまう。


ふとそこまで考えて、これだけ増えたのには天敵のようになっていた相手が消えたからではないか、と思い始める。走り回りながら学のない頭の引き出しを引っ掻き回した。


「ジン、後ろ!」


 シシリーが耳元で叫んだので後ろを見てみたら、ビグモスの群れの後ろに彼らよりも巨大な蜘蛛が現れ、一緒に走っている。実況をシシリーに頼みながら走り続けたが、どうやら巨大蜘蛛はビグモスに後ろから噛みつき捕食しているという。


ようやくそこで大先生(おおせんせい)から蜘蛛は益虫で家に入ってくる害虫を食べてくれる、特に蚊を食べてくれるから大事にしてねと言われたのを思い出した。先生との思い出は引き出しの奥に行っていたものの、会社で後輩に蜘蛛はなるべく殺さないように、どこかに虫が湧く原因があるよと教え自分の知識になっていたなと思う。


改めて良い先生に出会ったなと思ったが、それはそれとしてこのまま行くと一緒に食べられやしないかと焦り、なんとかしてもらおうとエレミアとウィーゼルを探すも見当たらない。まさか二人とも別の敵に襲われたのか!? とさらに焦る。


見ればいつの間にかビグモスは最後の一匹となっていて、それもばくりと巨大蜘蛛が食べ終えた。追いつかれるのも時間の問題だと考え戦おうとするも、なぜか三鈷剣が手元から消えている。どういうことだと焦りに焦り、こうなったらと大きく前へ飛びながら反転し手を大きく広げた。


口を開けて突っ込んで来たところをその牙を掴んで投げそうとしたが、なぜか巨大蜘蛛は口を閉じ目の前で止まっている。何が起こってるのか分からず、この世界で初めて目を覚ました以来の大混乱状態でいたところ


「御久し振りね、ジン」


 と巨大蜘蛛が喋った。頭の中がはてなマークで埋め尽くされている中、シシリーがあなたアラクネ!? と叫んで巨大蜘蛛に抱き着いていく。煙が発生し巨大蜘蛛が見えなくなり、しばらくすると蜘蛛と真反対の美人が現れる。


ニュアンスウェーブのかかった長い金髪に高い鼻に切れ長の目、黒のボンテージを着こみヒールが高いブーツを履いていた。以前アリーザさんが居た村の付近で出会った、巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)の個体上位種であるアラクネだと分かり、力が抜けて膝を付いてしまう。


傅くなんて偉いのねと言われ、力なく笑うしかない。何度か深呼吸をして自分を落ち着かせた後で、久し振り助かったよと礼を言うと良かったわ間に合ってと言われる。仲間が近くにいたんだけど知らないかと聞いたところ、私が横を通り過ぎたらどこかへ行ったわと教えてくれた。


まぁ昆虫は苦手な人が多いから仕方ないか、と思いつつビグモスの大量発生についてなにか知らないかとたずねる。


「ジンがこの土地を離れた後で一時的にだけどかなり平和になったわ。でもそれも長くは続かなかった」


 盗賊もモンスターも活動がなくなり、アラクネたちものんびり過ごしていたという。平穏が破られたのはヨシズミ国で謎の襲撃があった後からで、周辺国の兵士が不法侵入を試みたり見たことのないモンスターが現れたりし始めたらしい。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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