復興係
徹夜明けの目には厳しい鮮やかな色の料理がテーブルに並び、囲むようにして椅子が配置してある。全員が席に着くと食事が始まった。今日の天気など当たり障りのない話をしたあとで、ニコ様からノーブルに最近の話を振られる。
彼は真面目にすべての出来事を知る限り話し、その上で誰か一人が固定で王として統治する制度は如何なものかと疑問を呈した。言い終えるとこちらに視線どころか顔を向け、サムズアップして来る。アピールがうっとうしいものの、良いことを言ったので頷いて答えた。
師匠もニコ様も、サラティ様に背負わせ過ぎていたことに関しては反省しているという。ナビール氏の代理統治に関しても、ノガミ全体として一人に任せるのではなくしっかりと定例会議をし、単独長期政権は割けようという話になったそうだ。
これまでノガミの中でも最強と謳われたサラティ様が統治していたので、代ろうと名乗り出るものも居なかったのだろうと思う。意気揚々と手を挙げたところで、サラティ様と比較されるのだから誰も承認しないし、したところでバラバラになる可能性が高かったと考える。
今現在も不満はくすぶっているが、これまでと違い意見を出し合い話し合える雰囲気になったのは、不満を抱いていた層にとっては前進したはずだ。個人的にもあちらが落ち着いてくれれば、こちらの問題に腰を据えて取り組めるので有難い。
「今後についてなんだけど……」
話しが一段落したところでニコ様が申し訳無さげに手を上げた。なにかあったのかと思いながら話の続きを聞いてみたら、魔法学校周辺が破壊され且つマテウスさんやクルツさんがいなくなり、人材が不足しているという話らしい。
この話にいち早く拒否したのはシスターとノーブルだ。これまでの行動からしてなぜノーブルと思いがちだが、元々民衆の人気を集める器量はあるしノガミの新星は伊達じゃない。シスターは言わずもがなだ。
イサミさんも遅れたがすぐに拒否をする。ヤーノの統治をイザナさんにお願いしてまでこっちに来たのに、同じようなことをしてもと思っても仕方がない。なぜかニコ様がこちらを見ているけど、人を率いた経験がないので笑顔を向けるだけに止めた。
「とりあえずティオナにノーブル、それにイサミは手伝ってもらう。ここはノガミのアマネ地方における拠点だ。シャイネンが駄目になったらこっちでの活動が危うくなるぞ?」
指名された三人は非難の声を上げるも、ノガミの幹部としての命令だと言われ押し黙る。三人ともこっちに視線を向けたがノガミの采配には口を出せない。一応どれくらいで終わりそうですかと師匠にたずねたところ、そう時間はかからないよう努力すると言ってくれた。
渋々三人は指示に従うと返事し、タクノとハユルさんを加えた五人をシャイネンに残して一路ヨシズミ国を目指すことにして準備をする。解散となった後で師匠に少しお話をと言って離れた場所に移動し、サラティ様からの伝言を伝えた。
聞き終えると目を瞑り、少し間を開けてから師匠は大きく息を吐きつつ天井を見上げる。姉には責任を押し付けてばかりで背負ってやることも出来なかった、と涙ぐみながら嘆いた。ヤスヒサ王の娘ということで要らぬ責任も押し付けられたろうし、息子のことがあって傍にいてやれなかったと師匠は悔いる。
ティーオ司祭はどこでなにをしてるんでしょうね、と呟くと恐らく武者修行にでも出たのだろうと言った。暗闇の夜明けの幹部は、移動を短縮する魔法道具のようなものを所持しており、ティーオ司祭もそれを持っていると言う。
少し前にシスターの前に突然現れ、自分のことはもう存在しない者として扱うよう告げて消えたそうだ。魔法道具は使い方を熟知しなくとも使えるのかと聞くと、魔術魔法の素養があれば難しくないはずだと教えてくれる。起動に一定量の魔力が必要になる、魔法石を体に埋め込んでいれば別かもしれんが、という意見も付け加えた。
こちらにそういったものがあればと試しに聞いてみたが、残念ながらないらしい。起動して正常に動く保証が無く、暗闇の夜明けだからこそ開発出来たと師匠は話す。たしかに非人道的な実験を国家がする訳にもいかない。
暗闇の夜明けを存続たらしめているのは利用価値があるからだ。ヨシズミ国でも重鎮が手引きし乱を起こしたのを覚えている。誰かにとって痒い所に手が届く組織であるから潰されない。シンラにとっては魔法を普及させるために活動しているだろうが、他は別の思惑があって利用しているのだろう。
手を借りた国に脅しをかけ従わせる、という手法を取っているとも聞く。ここから先はそう言った国々が多くなるに違いない。一組織との戦いだけで済んでくれればいいなと思いつつ、直ぐにでも発ちますと師匠に告げた。
本当なら稽古を付けてやりたいところだがと言われるも、今は緊急事態ですからと答え握手を交わし再会を誓って別れる。シスターにイサミさん、ノーブルから必ず直ぐに追いかけるからと凄い圧を発しながら言われ、待っていると告げながら握手を交わした。
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