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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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自分の道を探す勇者にしてあげられること

 もしやヨシズミ国でなにかあったのかと思いたずねてみるも、マテウスさんは詳しいところはわからないという。師匠からも何も言われていないと聞き、胸騒ぎがする。思い返せば師匠にはアリーザさんのことを詳しく話していなかったと思うから、それで伝言などを頼んでいなかったに違いない。


ジンの奥方がヨシズミ国にいるでござるかと聞かれ、しどろもどろになりながらそうですと答えた。ティーオ司祭や暗闇の夜明けなど問題はあるが、復活したアリーザさんと再会出来ると信じている。この世界の創造神であるクロウと命懸けの死闘を演じたのも、彼女の復活のためだ。


世界がどうこうよりも奪われた幸せを取り戻すべく、全力で事に当たった。この世界でやっと見つけた幸せだけは奪わないで欲しい。心の中で縋るように祈りながらリベンに向けて進む。


「今日はここで野宿をしましょう」


 ヤーノを出てしばらく進んだ時、イサミさんからそう提案され了承し野宿の準備をする。だいぶ周りが見えなくなっていたらしく、気付けば夕闇が迫っていた。イサミさんに感謝しつつテントを張り終えると薪を割り、火を起こして夕飯の支度を始める。


ノーブルは手伝ってくれるものの相変わらずぼーっとしており、タクノにそれとなく確認したが駄目らしい。彼女は自分の想像であると前置きした上で、ノーブルはイサミさんたちの覚悟を見てから自分自身と自問自答しているようだと話す。


イサミさんはノーブルからすれば目上の人物で、その人が覚悟を決めて単身で他国へ行くという姿に刺激を受けたのだろう。彼の好意は今後にとっても大事なことなので、その分の仕事はこちらがやるから存分に考える時間を与えようとタクノと話し作業へ戻った。


「先生、座禅の最中申し訳ありません。是非稽古を付けて頂きたいのですが」


 皆で楽しく食事をとり後片付けを終えたあとで、女性陣と男性陣が分かれてテントに入り就寝する。寝付けないので焚火の前で座禅を組んでいるとノーブルが声を掛けてきた。どうしたものかと思ったものの、いつもと違い丁寧な声かけから頭を下げて来たので、なにかるのだろうと考え稽古を付けることにする。


何も言わずに距離を取った後、礼をしてからファーストトゥーハンドソードを構えた。こちらも応じるように三鈷剣(さんこけん)を呼び出し構える。促すようにいつでもどうぞと告げると頷き斬りかかってきた。


いつものように余計な力みが無く、素直に放たれる斬り下ろしは威力が上がっているように感じられる。適当に受けて流すだけでは失礼だと思い、一度がっちり受けた剣を斜めにし受け流す際に剣腹に手を当てて押す。


そのまま懐に入るとさらに側面へ周り、背中でノーブルの左肩を思い切り押して吹き飛ばした。姿勢を崩しても斬り返してくるだろうと考え、素早く体勢を戻し予想通りに来たので斬り払う。あいにく剣術をメインにして活動してきた訳ではないし、なんとなく自分らしくがテーマな気がしたので、クニウスから授かったジン・サガラ流で相手をしてみる。


これまでなら先生は凄いとか言って止めていただろうが、今日はやはり違うらしく何も言わずに体勢を立て直し斬りかかってきた。チート能力を失った今、通常モードではノーブルとのストレートな力勝負になった場合、いい勝負かひょっとすると危ないだろう。


こうして立ち会ってみて、彼は経験を積めば間違いなくこの時代一の勇者になるだろうと確信したし、だからこそあちらの大陸には渡ってはいけないと思う。ティーオ司祭というノガミが生んだ化け物は、その底を誰も知らない。


未来の勇者が戦うような存在ではなく、現在勇者にされているこちらが神に近い男を倒している間に、腕を磨いていて欲しいと思っている。まだまだ色々な種族がこの星に入るのだから、争いが起こらないという保障は全くない。


修行できる今のうちがチャンスだ。今回の稽古で自分なりに足りないものを見つけて、この大陸でそれを埋めるべく走り回る、という結論になるよう願いながら剣戟を交わし続けた。


「ま、参りました……」


 気持ちの良さそうな顔をしながらそう言って、前のめりにノーブルは倒れる。どうやら自分なりの答えを見つけられたようで何よりだ。ファーストトゥーハンドソードを鞘に納め、彼を背負ってテントに戻り寝袋に押し込む。すぐに寝れそうには無かったので、再度座禅を少ししてから就寝した。


 翌朝、目が覚めると皆が賑やかに朝食の支度をしており、見ればノーブルはすっかり元気になっている。ここ数日の経験はこれからの糧になるだろうし、先生と呼ばれた身として少しは役割を果たせたと思い、胸をなでおろした。


だいたい自分の中の先生たちを思い出せば、あんな凄い役割を自分が出来るとは思えない。没個性的な顔に喋り方そして能力とThe没個性って感じで、没個性でないところがあるとすれば身長がそんなに高くないくらいな自分が、先生たちと同列はおこがましい。


そう考えた時、アリーザさんはなんで自分と結婚してくれたんだろうかと急に不安にかられる。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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