この世ならざる者攻略法
「ノーブルは俺と同じくらいのことがやれるのだから、この件が終わったらネオ・カイビャク領を旅して困っている人を助けたらいい。ミサキの乱で不安になる国民に対してのアピールになるし、ノガミ一族の安泰にも繋がる」
実際蜥蜴族たちにも機会到来かと思われているのを考慮して提案してみた。少しくらい考えると思いきや、自分は先生に付いて行きますと即答する。どうして即答できるのか気になり、自分で色々考えた方がより成長できる俺もそうしてきたと促してみたが、
「自分自身の未熟は承知しています。先生にも今も迷惑をかけている。出来ればそれをお返しできるほどになるまでは付いて行きたいです」
真っ直ぐな目でそう答えた。今迷惑をかけているのがわかってるというが、それはどの部分か聞いてみたくもある。無いとはわかっているものの、万が一適当に言ってたとしたらと考え出してしまい、結局聞けなかった。
雑談と警戒をしながら駐屯地を目指して歩く。この世ならざる者に度々遭遇したが、エレミアを温存しておけるほど余裕を持って進めている。元々何の目的があって出現しているのかも不明で、わかっているのはただ斬っただけではダメージが通らないということだけのこの世ならざる者。
イリョウでヤブ医者ことテオドールが自らの意思で呼び出していたことから、シンラ絡みのモンスターであるのは間違いない。シンラ戦では思い出す余裕もなかったから聞けずじまいになってしまった。
皆が倒せるようにならないものかと考え、自分以外に倒せるエレミアとウィーゼルを呼び寄せる。この世ならざる者を他の者が倒すにはどうしたらいいかと問いかけてみた。
エレミアは魔法を使用することで駆除が可能だと言い、ウィーゼルは種族として特殊能力である妖力で攻撃しているので、似たものを使えば出来るだろうと言う。三鈷剣を使用して攻撃していたが、一度腰に差して気を拳に集めて殴りかかってみる。
動きは速いが捉えきれないほどではない。思い切りボディに拳を叩き込み浮き上がらせてみたところ、そのまま四散してしまった。
「さすが先生! 剣を持たずとも余裕ですね!」
盛り上がるノーブルに対して苦笑しつつ、気をコントロール出来れば他の人でも倒せるのではないかと思った。篭手を装備していることも影響しているのかと考え、一旦取ってエレミアに預けてからもう一度同じ方法で殴り掛かる。
先程と違い、今回は拳を入れると貫通しそこから崩れるように消えていった。気を集中することでこの世ならざる者は倒せる。答えを得てエレミアとウィーゼルを見ると苦笑していた。
戻って二人に意見を聞いてみたが、ズバリ言われる。今やったことはそんなに簡単にできることなのか、と。自分は師匠たちの教えのお陰でなんとか修得できた。他人に気をコントロールする方法を与えて見せろと言われると、確かに簡単ではない。
蜥蜴族だって気合を入れて斬りつけているのに倒せないのだ。気を練り上げるというものが誰にでも出来るならこの世ならざる者は別の名称で呼ばれ、一モンスターとしてシルバーランクの依頼になっていただろう。
天使先生がこの世界へ送る時に与えてくれた”力”とは、修得をし易くするというのもあったのかもしれない。先生に感謝しつつ、二人に意見を聞かなければノーブルのようになるところだったと冷や汗をかく。
ノーブルに視線を向けてみると、タクノがタオルを渡したり革の水筒を渡したりとかいがいしく世話を焼いている。最初の頃勇者には妖精が必要ですかとか聞いてきたが、自分に取ってのシシリーやエレミア、それにウィーゼルのような存在がノーブルにもいるではないか。
二人に自分たちが先導する間、タクノに相棒のフォローの仕方とかを教えてくれないかと頼んでみた。もっとノーブルの役に立てると言えば、彼女も喜んで協力してくれるだろう。一瞬意地の悪い顔をしたウィーゼルに対し、エレミアは上手くいけば独り立ちするかもとぼそっと告げる。
意地の悪い顔から鼻息が荒くなり、私にすべて任せなさいと意気込んでタクノのところへ移動した。エレミアも篭手をこちらに渡してから任せてと言って後を追う。ノーブルは二人が来たのを見てこちらに移動してくる。もうご用はお済ですかと言われたので、この世ならざる者を他の人も倒せるようになるといいなと思って色々思案していたと話した。
「先生の考えはわかりますが、それにはまだ時間がかかるかと。何しろあのゲンシ様や竜神教があちこち回っても難しいのですから」
自分が思いついた大発見はすでに先人が思いついている。とても気恥ずかしくなり空笑いをして移動を再開した。ノーブルに気をコントロールすることは出来るのかとたずねるも、意識してやったことはないが自然に出来ていたという。
マジックアイテムについて聞いてみたところ、確かにそれであれば多少は可能性があるでしょうがそれ自体が稀少ですよ、と言われる。ふとエレミアが魔法なら可能と言っているのを思い出し、シンラの目的が達成された場合、この世ならざる者を皆が倒せる世の中になるのかもしれない。
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