表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

385/616

蜥蜴族の想い

「イザナ様も安心してください! いざとなれば我が親族上げて先生を引き留めてみせます! 女性陣にも先生は受けがいいですから!」


 受けが良いわけがないだろうとツッコミを入れそうになるが、入れればそこから話が広がってしまうので止めた。なんだろうこの場には敵しかいない感じなのかな。面倒なのでコメントはせず、皆に駐屯地へ向けて出発しましょうと声を掛けて先導する。


付いて来てるかと心配になり振り返ってみたら、皆不満がある表情をしながらゆっくりついて来ていた。視線は急いで後ろに付いて来たノーブルに向けられている。境遇には同情する余地があるものの、不満を持たれているのに気付いていない発言はいただけない。


状況を説明していいものか迷うところだ。聞いた瞬間、相手にそのまま問いかけていきそうで怖かった。折角増援を出してくれているのに拒否されたら困る。このまま不満が積もり積もって暴発しないようにしないといけないが、どうしたらよいものか。


こういう時相談できるメンバーとしてエレミアを選択し、彼女に手招きをした。なぜかとても驚いた顔をしたが、肩に乗るシシリーに耳打ちされると元に戻る。シシリーのフォローに感謝しつつ、エレミアが横に来たところで二人にこの件について小さな声で相談した。


三人で協議した結果、関係がもう少ししっかりしてから指導した方が良いのではないか、ということに落ち着く。関係が浅いため素直に聞けない部分もあるのがちょくちょく出ていたし、二人から見ても尊敬して付いて来たと本人から聞いたものの、どうも別の事情で付いて来ている気がすると指摘される。


二人だけでの会話を教えていないにもかかわらず、聞いて答えたかような言葉に大きく頷いた。方針が決まったところで現段階で先生としてやるべきことは一つだ。イザナさんから貰った地図をエレミアに渡して先導を任せ、ハユルさんたちハイ・ブリッヂス隊のところへ移動する。


近付いて来るこちらを見て、それまで眉間にしわを寄せていた人たちは表情が和らいだように見えた。あくまでも今この集団は自分がキーになっているのは間違いない。ノーブルに問題があるにせよ、自分の立ち位置を理解し皆で揃って気持ち良く戻ってくるために動く必要がある。


笑顔で頭を下げ、歩きながら先頭にいた兵士たちにハユルさんと話をしたいと告げた。どうぞどうぞと言って道を開けてくれ、後ろの兵士たちにもジン殿をハユル様のところへと他の兵士に促してくれる。


兵糧を乗せた荷台を引く大きなトカゲに乗っていたハユルさんは、こちらを見つけると降りて手を挙げた。横へ並ぶように歩きながら、昨日から色々不快な思いをさせて申し訳ないことをした、と謝罪をする。


彼はどういった経緯でお連れになっているのですか、と問われたのでありのままを説明した。聞き終えると苦笑いし、イザナ様もノガミが可愛いですからねと言う。現在のネオ・カイビャクとネオ・カイテンの形を整えたのはイザナさんであり、ヤスヒサ王旗下での最後の仕事だったらしい。


ヤスヒサ王の軍師であったイザナさんは、カイテン内乱の情報をいち早く掴むとカイテン王族たちから話を聞くと共に、折衷案をまとめなんとか収めようとしたようだ。ヤーノとブリッヂスにも訪れ調停を行い、動かないという確約を得た矢先に乱が勃発したという。


「出ようと思えばヤーノもブリッヂスも出れたのです。カイテン王族はソウビ王健在の時とは違い、武力では我々よりも劣っていた。我々蜥蜴族はイザナさんとの約束を守り動きませんでした」

「そのことがしこりになってヤーノとの交流が不全になっていたのですか?」


「祖父たちは常々言っていました。あの時動いていれば、と。兄も私もそれを寝物語代わりに聞かされ、兄は王となると統一への意思を明確にしてしまう。ジン殿のおかげで今は関係は改善されましたが」


 ハユルさんは言葉を濁した。あの時と同じような状況が今出来つつある、と言いたかったに違いない。違うとすればノガミ同士の対立と一族の強さだ。イザナさんがヤーノに居るのも、イサミさんのことがあって見守るためにいると思う。


少し間があってから、エルフ族との交流は相性以上にイザナさんの存在があったからだと話す。蜥蜴族からすれば監視されているような気分だったこともあり、先の乱の件も合わせて交流を持つ気にはなれなかったらしい。


沼地の件を解決した際に、イザナさんから正式にイサミさんの出自が明らかにされ、後見役としてこの地にいた説明があったそうだ。蜥蜴族はその話を聞いて、エルフ族と交流を再開を決めたという。


「我々は特に衣食住に困っているわけではありません。ですがノガミより下である、という評判をそのまま受け入れるほど優しくはないのです」


 さらにハユルさんは続けて、ノガミで無い者が英雄の軌跡を辿り出したなら我々は今度こそという気持ちがあるのですと語る。ヤスヒサ王が王への道を歩み出した時、蜥蜴族はカイテンのこともありその旗下に馳せ参じるのが遅かったらしい。


イザナさんの養う諸々の話を聞いた時盛り上がったのはそれがあるからかと納得した。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ