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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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勇者の先生

「いやすまんすまん。お前が成し遂げた事の大きさに比べたら小さな悩みだと思ってな」

「クロウは運良く皆の協力を得て、遠くへ飛ばしただけです。倒しきれたわけじゃないですから」

 

 イザナさんは納得いかない表情をしていたが、クニウスたちとの絆が出来たのも妖精王の助力を受けられたのも、運が良かったからだと思っている。なにより元の世界で大先生(おおせんせい)に拾って育てて貰えたのが何よりの幸運だった。


園にいたから天使(あまつか)先生とも出会えたし、死ぬしかなかった人生にこうして先が生まれている。改めて振り返れば勇者と言うより幸運男(ラッキーマン)の方が近い気がした。


「スタートは運かもしれんが、それを掴む感覚そして土台が必要だと俺様は考えている。お前の冒険者としての歩み、そして鍛錬の積み重ねが功を奏してこの世界の神を退けた。実に勇者らしいと思うぞ? ノーブルが理解しているかどうかは知らんが、直感でそれを感じ取ったからこそ先生と呼んだのかもしれん」


 勇者とは文字通り勇気ある者へ送られる称号だが、ただ無謀なだけの者では揶揄していわれることはあっても勇者の称号は与えられない。一つ一つ実績を積み重ね、強大な敵に対して最後まであきらめず運をも味方に付けて戦い抜いた者。勇者と皆が呼ぶのはそういうものだ、とイザナさんは言う。


また自分で名乗るものではないので、他人からそう言われてしまえば受け入れる他無いとも言われげんなりする。


「お前がノーブルと同じカテゴリーに入れられるのが嫌だと言うなら、文字通り先生となって導いてやるがよい。あれも血統に合わず泥臭い努力が大好きだ。遠からずなにか成し遂げよう。このまま行けばあのまま次代勇者になるぞ?」


 提案を聞いてそれもそうかと思ってしまった。勇者という称号を認めたくはないが、自分がした直近のことを思い出しても逃れられそうもない。ノーブル君は止めても追ってくるだろうし、こうなったら成長を見守りつつ功績は全て彼という流れを作ってしまえば良いと思った。


直ぐに消えた勇者の話など他人の記憶には残らないだろうし、先生と言ったからにはこちらのアドバイスには多少なりとも聞く耳を持つだろう。


「どうやら問題解決の糸口にはなったかな」

「ありがとうございます、お陰で助かりました」


「まぁ上手くいくかどうかはこれから次第だ。上手くいったら感謝してくれ。では早速だがこちらの頼みを聞いてもらいたい」


 突然イザナさんは真面目な顔になる。大事を成し遂げたと聞いて来てくれるだろうと思い、待っていたと言う。行く先々で事件が起こるなと思いながらも、帰る前に恩返しだと言い聞かせ何があったのかたずねた。


どうやら関係が修復したハイ・ブリッヂスと共に、ヤクヤ・モリたちが住んでいた下ブリッヂス地方の安全を確保するため、兵を進めたらしい。この世ならざる者(アンワールドリィマン)のせいでヤクヤたちの村は潰されたので、クロウが撤退した今ならとイザナさんがイサミさんに勧めたようだ。


いざ赴いてみるとヤクヤたちの村にはこの世ならざる者(アンワールドリィマン)は居なかったが、残念なことに他ではこの世ならざる者(アンワールドリィマン)たちがうろうろしており苦戦しているという。


イリョウの件からしてこの世ならざる者(アンワールドリィマン)はクロウが生み出したかもしれないが、今やテオドールが自由に呼び出せる代物になっている。話を聞いてイザナさんは右手で顔を覆いながら上を向いた。


少し間を置いてから助っ人を頼みたいと言われる。助っ人をするのは構わないが、自分はこの世界で出来た最初の家族のところに戻らなければならないので、長期間は無理ですとはっきり伝えた。深く溜息を吐いたあとでそれでもかまわない、ある程度の範囲で十分だと了承してくれる。


早速エレミアたちを呼んでイサミさんたちの駐屯地へ向かうことにする。場所はヤクヤたちの村近辺だというので記憶を頼りに沼地の橋を渡り下ブリッヂス地方へと入った。


「先生、お任せください!」


 早速この世ならざる者(アンワールドリィマン)が一匹うろうろしており、ノーブルは得物のファーストトゥーハンドを引き抜き構え突撃しようとしたが止める。なぜですかと言われたので、他に仲間がいないか確認してからにしようと伝え、エレミアとウィーゼルにも協力してもらい他のを探してもらう。


エレミアはパルヴァ直伝の魔法で検索し、あれは一匹のみだと教えてくれた。ウィーゼルは気配と聴覚によって調べた結果、近くには居ないものの先の方に三匹固まっているという。先生早くと急かされるが待てと告げ、タクノも交えて話をする。


位置からしてヤクヤたちの村へはまだ距離があった。この世ならざる者(アンワールドリィマン)たちがうろついていることからして、補給線が断たれている可能性が高い。駐屯地の軍が孤立しているなら、ハイ・ブリッヂスへ繋いでもらい補給線を回復させつつ進んだ方が良いだろうという考えを話すと同意してくれる。


連絡の役目を猪武者ことノーブルにしてもらいたいと告げるも、あからさまに不満な顔をした。無理強いをするつもりはないが、そういう態度をとるなら先生と生徒の関係は解消でと告げると成立していたんですか!? と目を輝かせながら迫ってくる。

読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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