二匹目のマスコット
「え!?」
皆が同じ驚きの声を上げる。それもそのはず、石を両手に持ちながら出ろと念じて出て来たのは、犬のウェルシュ・コーギーくらいの大きさウーパールーパーだった。体高三十センチほどでペットにしたら人気が出そうな感じになっている。
洞窟での凶暴さは微塵もなく顔が愛らしいので、女性陣は興味津々恐る恐る近付きだした。リオウとクルツさんはサラティ様を警護するために両脇を固めたが、咳払いされ追い払われる。元巨大ウーパールーパーが首を傾げぺたぺた動き出すと、女性陣は歓声を上げた。
触れようとしたところでリオウがカットするべく間に立つ。まだなにもわかっていないのに触れては危ないですというも、あんな可愛いものに害がありますか! と言い切られリオウはタジタジになる。たしかによくわからない生き物なので、触れたら危険な可能性もあるなと思いながら近付き撫でてみた。
毛は無くぷよぷよしているがべたべたはしない。撫でられて気持ちいいのか体をさらに低くし地面につけ、顔を横に向けて寝るようなポーズをとる。皮膚はデリケート過ぎないようだが、なにか服を着せた方が安全な気がした。
シシリーに意見を求めると目を輝かせて自作します! と宣言する。苦笑いしながら頑張ってねと答えつつウーパールーパーぽいものを撫でていたら、女性陣が囲み始めた。なんだろうかと思って見ているとそろそろ交代して欲しいと言ってくる。
触った感じ異常はないのでかまわないよ、と言い終わらないうちにこちらを押し退け撫で始めた。ウーパールーパーぽいものは鳴き声を上げながら楽しそうに転げまわる。ぽいもの呼びは面倒なのでウルという名はどうかというも、なぜ勝手に決めるのかと御嬢様たちから叱られてしまった。
個人個人で希望の名前を口にするが、自分のが一番だと言って譲らずしまいには取っ組み合いになる。こうなったらサラティ様の一方的な試合になるのは目に見えていた。怪我しないように投げ飛ばされたエレミアやタクノをキャッチしゆっくり下ろす。
予想外だったのがウィーゼルで、サラティ様相手に格闘を挑み粘っている。タクノの挑発に乗った時に見せた消える技を多用し、ノガミを統べる者を翻弄していた。ひょっとしてと思ったものの、消えた後再出現する場所を読まれ始め捕まる。
連続して消えても捉えられ終了かと思いきや、意外にも諦めずにウィーゼルは粘った。彼女の奮闘する姿にサラティ様は微笑み、譲るのかと思ったが目を赤く染め例の紫色の気を放つ。さすがにこれにはウィーゼルも対抗しないだろうと考えたが、止める気配はない。
傍にいたタクノに勝ち目があるのかとたずねるも、以前とは比べ物にならないので分からないという。自分の知る限りだが、サラティ様はこの星で一番強いはずだ。クロウ以外裏技でもないと勝てないと思っている。
立ち向かうからには対抗策があるのだろう、そう考えてじっと見守っていた時、ウィーゼルの体の周りに青白い火の玉が浮かび出した。初めて見る技なので集中して見入っていたところ、タクノとリオウから止めろと言われる。
今後のことを考えれば何かあった時のために見ておきたかったが、お付きはともかく昔を知るタクノに止めろと言われれば止める他無い。手を前に突き出し三鈷剣を呼び出す。状況を把握したのか同時に顕現不動モードに移行し、さらに羂索が左手首に出現した。
でもちょっとだけと考え前に出ずにいたら、リオウとタクノに咳払いされてしまう。仕方ないと先ずは羂索を放ちウィーゼルを拘束してこちらに引き寄せる。問題はここからだ。サラティ様がやる気満々で気が収まらないというなら、巨大ウーパールーパー戦の時同様発散させなければならない。
彼女はこちらを見てニヤリとしながら手を掲げた。青空が歪み空間を割いて三日月を模した物が頭に付いた杖を呼び出し手に取る。どうやら収めるつもりは毛頭ないらしい、と理解し剣を構えた。久し振りに対峙しても相変わらず圧が凄い。
重責ポストから退くからか分からないが、以前と違い禍々しさが無くなっていた。少しは弱体化してくれたかと思いきやそんなことはなく、虎のいる檻の中に放り込まれた気分だ。嘆いていても事態は解決しないので、気を増しさらに偽・火焔光背も呼び出し切っ先を向ける。
彼女も杖の先をこちらに向け、一呼吸おいてから詰めて来た。受けるとお付きやエレミアたちが危ないので飛び退き広い場所へ移る。すぐにこちらへ向かって飛んで来て杖を振り下ろしてきた。横へ避け三鈷剣の剣腹で左肩を強打しようとするも、返しで薙いでくる。
体を逸らして避け、そのままバク転して距離を取るも逃がしてはくれない。明らかに怒りとかではなく楽しんでいる気がしてならなかった。すべてから解き放たれ自由を満喫するのは良いと思うが、虎を野に放ったと後の世に言われないか心配になる。
お付きはそこのところを考えているのかとツッコミたいところだ。稽古を付けてもらっていた時よりも、一層強く余裕があるノガミ一の女性に対し反撃をするべく、羂索によるおとりを仕掛けようと考えた。
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