都合のいいことは誰のため
刺したところから巨大ウーパールーパーの外殻装着が解けていき、速度を上げて体に広がりあっという間に元の状態に戻る。顔を見ると気を失っているようだったので、これで問題無いだろうと考え三鈷剣を引き抜いた。
剣が完全に抜けた後、差し込んでいたところからころんと二つ、見覚えのある石が落ちてこちらに転がってくる。あまりにも都合が良すぎて疑いたくなるが、手に取った感じは変わりなく偽物とは思えない。偽物なら起動しないだろうと考え、風来石と雷光石を巨大ウーパールーパーに向け突き出し閉じろと念じてみた。
こちらとの間にクロウを封じ込めた時と同じように空間が割れ始め、そこにズルッと巨大ウーパールーパーは吸い込まれる。吸い込み終え閉じたと同時に、三鈷剣も空間に消え顕現不動モードも解除された。当面の脅威は去ったという判断だろうと考え、ほっと一息吐いて来た道を戻る。洞窟を出ると兵士と鉱夫たちが待っており、こちらを見つけて歓声が上がった。
責任者はと問いかけたところ、筋骨隆々で髭もじゃのずんぐりむっくりな人が前に来る。シャツと短パンにブーツのみのシンプルな格好で、鉱山の達人ぽい雰囲気を醸し出していた人物は、鉱山の責任者でジャガスと名乗った。こちらも名乗り挨拶してから状況を説明し恐竜も退去させたと告げると目を丸くして驚き、我に返ると突然跪いて拝み始める。
他の鉱夫や兵士たちも同じようにし始めたので止めるよう頼む。すぐには止めてくれなかったものの、皆が立ち上がり始めたので他の皆の行方をたずねた。ジャガスさん曰く、皆はあの恐竜を外に出す方法を探しに町に行ったという。
下手に動くとはぐれるなと思ったので、ジャガスさんたちに中の状況を確認してもらうべく先導する。改めて現場に到着し、報告が真実だと分かると地響きするほどに歓喜し胴上げをされた。あまりの感激ぶりに少し引いていたが、ジャガスさんがいうには大げさでなくこれは当然の反応らしい。
ミサキの乱の間に恐竜は現れ、役人にも報告したのに何もしてもらえず、その間の給料はゼロ。さらに盗賊が居座り自分たちの道具を勝手に使い、一時は皆で廃業も考えた。明日をも知れない中でまさか盗賊を全て捕らえるだけでなく、恐竜まで退けてくれるなんて見たこともない神様よりよほど信仰しがいがある、と力強く拳を握りながら語る。
お祭り騒ぎは止まらなかったが、ジャガスさんが仕事を再開する準備に取り掛かれと支持すると元気よく走り出した。自分も外へ出ますと告げた時、ジャガスさんから是非お礼をしたいと言われたが、それはナビール様から頂きますと断り会釈してその場を去る。
鉱山を出てから少し離れたところの地べたに座り、シシリーと共にのんびり空を眺めながら仲間の帰りを待っていた。こういう場合あっさり帰ってくるものだろうなと思っていたが、陽が真上を通り過ぎていくまで待っても帰ってこない。
暇すぎたので町に下りようかと肩でうとうとするシシリーに告げた時、ようやくエレミアとウィーゼルが帰ってきたのでほっとする。皆で町まで移動し市役所や図書館で方法を模索したがいい方法が見当たらず、一旦戻ってきたという。
状況を説明するとエレミアはげんなりした顔をして溜息を吐いたが、ウィーゼルは当然だろうという顔をしていた。こちらが不審に思いじっと見たのに気付き、慌てて驚きだす。あからさますぎて吹き出してしまい、タクノが来てから調子が悪そうだと告げると歯を出して睨み威嚇してくる。
またくだらないことを企んでるのかとエレミアに突っ込まれるも、そのくだらないことをアンタもついこの間までやってたんでしょと返す。もうそれは自供しているのと変わらないのになと思い、笑ってしまった。
しばらくウィーゼルによる抗議が続いたが、閉じ込めている恐竜の件もあるのでサラティ様と合流しようと促し町へ下りる。風来石と雷光石による閉じ込めは中でどうなっているのか分からない。あまり長く閉じ込めて良いことは無いだろうから、どこか適当な場所で開放し様子を見たいと思っていた。
出来れば柵がある広い場所が良いなと思いながら移動し、市役所に到着する。中に入ると出発する前に鉱山のレクチャーをしてくれた職員の人と目が合い、こちらへ急いで駆けて来た。状況を説明すると涙ながらに手を握り礼を言われる。
元鉱夫だから現場の辛さがわかるのだろう。お役に立ててなによりですと答え、サラティ様の行方をたずねた。涙声でサラティ様は奥にいらっしゃると教えてくれたので先導を頼む。応接間と書かれた部屋の扉をノックをしてから入室したが、サラティ様たちは資料に集中しこちらを見ていなかったので声を掛ける。
声で分かり驚きながらこちらを見た三人に事情を説明した。持っていた資料を急いで片付け終えると市役所を後にする。解放する場所の条件を告げたところ、近くに市営の放牧地があるというのでそこへ向かう。
町から少し離れた丘陵にある放牧地は条件にぴったり合う場所だった。管理をしている人に事情を離し、一時退避してもらうことにする。石を手に中央に立ち、皆には何かあった時に対処してもらうため円を描くように配置してもらった。
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