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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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妖怪族のタクノ

こちらで話し合った内容を伝え、これからナビール氏の家へ向かう旨を伝えるとわかりましたと笑顔で言われる。サラティ様は政権交代の準備などでこれから忙しいだろうし、余計な心配をかけない様にしようと思いながら席を立ちそのまま宿を出た。


「おはようございます! 先生!」


 出来れば一息でお願いしたいが、元気に笑顔で二回叫ぶノーブル君。寝覚めが良くても精神的にくるものがある。ウィーゼルに視線を向けると目が座っていた。宿前大会本日二戦目が始まる前になんとかしようと挨拶を返し、どうしたのかと問いかける。


今日必ずいらっしゃると思っていたのでお出迎えに上がりました! と元気よく答えた。ウィーゼルが前に出ようとしたので遮りながら、ご苦労様もう行くから先に帰っていいよと伝える。家までエスコートさせて頂きます、と言い出したので子どもじゃないから心配ないよと断るも無視し、さぁ参りましょうと先導し始めた。


言葉一つ一つが大きく、朝のダメージを緩やかに解消していたウィーゼルの精神を刺しまくっているのは、前に出ようともがく彼女の顔を見ればわかる。常に余裕でなにか企んでいそうな人物が、真顔で食って掛かろうとしているのだから、相当なダメージを受けているに違いない。


なんとか背中で抑えつつ、エレミアも羽交い絞めにしながらノーブル君の後を突いて行く。こうなったら喋らせる回数を少なくする作戦で行こうと考えていたが、リベンでのこちらの活躍やアルブラムの剣について感動した話をし始めた。


ミサキの乱であった話をして遮るも、一回一回どでかい驚きの声を上げる。テレビの収録で呼ばれるエキストラですらそんな声ださないだろう、というくらいのボリュームでノーブル君はリアクションした。


「アンタさぁ……うるさいのよ朝っぱらから何時だと思ってんの?」

「は?」


 文字では二文字だが、声がデカいもんだから喧嘩を売ってるような感じになっている。ついに我慢ならなくなったウィーゼルは、こちらを振り払いノーブル君へ近付く。足を止めて振り返った彼よりも、少し背が高いウィーゼルは無言で見下ろした。


とんでもないプレッシャーを与えられているだろうに、まるでお構いなしに屈託ない笑顔でそれをノーブル君は受けている。さすが勇者を目指す勇者の子孫。すべてを無視してさぁ急ぎましょうとこちらに視線を向けて言い、身を翻す。


それをそのままはいそうですかとウィーゼルが大人しく見逃すはずもない。衣装が変わって腰に差していた扇子を抜きながら、彼女はそのままノーブル君の頭部へ振り下ろした。


「ノーブル様、いけませんよ背後には気を付けないと」


 頭部へ直撃する寸前で扇子が止まる。力を入れているのを見る限り、ウィーゼルの意思で止めているわけではないようだ。可愛らしい声が聞こえたので誰かと思い周囲を見回していると、ひょこっとノーブル君の陰から小型ウィーゼルことタクノが現れた。桜色の着物と白のスカートにピンクのブーツという出で立ちで、ノーブル君の横へ移動しどうですかと言いながらくるりと回って見せる。


母上のデザインかとノーブル君が聞くとそうですと答え、さすが母上だ! と言ったあとで二人は声を上げ笑い合った。元気だなぁと思う反面、ノーブル君の声の大きさに疑問が湧く。最初に会った頃から元気ではあったが、ここまで大きな声で喋ってはいない。


実家に帰省していることとか、こちらが成したことに未だに感動しているとかそういうのが関係しているのだろうか。答えを探そうとするもウィーゼルの唸りに遮られ、慌てて解こうと近付き腕の辺りを触る。触った感じでは何も巻き付いてはいない。


魔法は現在ネオ・カイビャクでも限られた者しか使用できず、この場には知る限りではエレミアしかいない。他に可能性のある者はと考えた時、タクノが妖怪族だと言っていたのを思い出す。妖怪族特有のものなのではと思いタクノに視線を向けた。


「お姉さま残念。それは力任せでは取れませんの」


 応えるようにタクノは左の口角だけ上げて告げる。やはりウィーゼルを拘束したのは彼女のしわざのようだ。なぜか分からないが明らかに煽っており、もう開戦待ったなしだと考え急いで間に入った。とりあえずここは抑えて大人しく御屋敷へ向かおうよ、と双方を見て説得を試みる。ノーブル君は微笑んでいただけだったが、タクノは拳を突き出したり蹴りを繰り出したりし始めた。


どうやらウィーゼルの腕を拘束しているなにかによほど自信があるらしい。これは不味いぞと思っていると


「やっとその気になったんですのね」


 タクノが呟く。なんのことかと思い見ていたら、ウィーゼルがタクノの前に瞬間移動している。扇子をタクノに振り下ろそうとしたがまた腕が止まった。どういう仕掛けなのかと思っていると今度はウィーゼルが煙を放ち拘束を逃れ脇へ移動する。


これまでに見たことのない技に驚くと同時に、タクノがこちらに視線を送っているのに気付く。まさかこれを出させるためにわざと喧嘩を吹っ掛けたのか? と考えながらもタクノへのウィーゼルの攻撃を止めるべく間に高速で移動した。


「そこまでです」


 ノーブル君がファーストトゥーハンドソードを引き抜き、ウィーゼルの扇子を受け止める。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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