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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第一章 営生を探して

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盗賊を抜ける者

「ホント申し訳ない。もっと早く帰ってくる予定だったんだけど」

「教会に行ってたんでしょ? なら仕方が無い。私はアレとは会ったら戦う運命だからね。それにジンはまだ帰ってくるだけマシだよ」


 食堂で手伝った御褒美として、食事だけでなくデザートや果物ジュースを頂いてから改めて謝罪をするとそう言って俯くベアトリス。町長の話によればこの国に居るのは間違いない。だが何かを探しているらしくそれが終わるまでこちらには来れないという。


恐らくそれはベアトリスたちがこの国に来ざるを得なかった理由が関係しているんだろう。そして不死鳥騎士団も関係しているし、例の魔法使いも。この国が前から他国から逃げてくるような人間たちの吹き溜まりみたいになっているって言うのも無視出来ない。


天然の要塞があるとはいえ綱渡りみたいな国だ。そんなものが積み重なれば何れ他国が攻め込んでくる理由になる、と俺如きが思うくらいだから皆思っているだろう。竜神教との同盟もそれに対する楔の一つなのかもしれないが、それはシンラたちを呼び込む切っ掛けを作った可能性もある。


「まぁ心配しないでくれ。ベアトリスのお兄さんを連れ戻すまで俺は必ずベアトリスの元に帰ってくるよ」


 そう言うと少し涙目になっていたベアトリスは微笑みながら頷いた。先ずはそこをクリアにしないと。関わった以上、俺がゆっくり冒険者家業をするには解決する必要がある問題だ。しんみりした空気を振り払うように俺は今日シスターが珍しく大人しかった話を少し誇張してすると、ベアトリスは吹き出して笑った。


お許しも頂けたし食堂を出て冒険者ギルドに行こうとすると、ジョルジさんが呼び止めた。どうしたのかと問うと、カウンターから手を少し出し手招きして近寄るよう求めてくる。ベアトリスと顔を見合わせ首を傾げたが、ジョルジさんが意味の無い行動を取るとは思えないので近寄る。


「入口から少し離れたところに、こちらを見張る者が居ます。何かお心当たりは?」

「幾つか」


 正直に答えるとジョルジさんは俺たちに受付近くにある椅子に座るよう伝え後ろの扉に入って行った。少し経ってから出てくると、そのまま待っていて欲しいと言われたのでそのようにする。


「お待たせしました。何やら子供が一人ジン殿と話したいようですよ」


 入口からいつもお風呂の管理をしているゴルクさんが来てそう告げる。椅子から立ち上がり入口を出ると、そこにはこないだ俺の財布をスろうとした女の子が居た。


「どうしたんだ? 何かあったのか?」


 すると女の子は言い辛そうな顔を暫くしていたが、ベアトリスが肩を抱き優しく微笑みかけると泣き出した。何かあったに違いないとジョルジさんを見ると頷いたので、宿の中へと入れる。マリアナさんも呼んでくれてベアトリスと二人で女の子を落ち着かせた。


「私のお兄ちゃんが危ないの! 助けて!」


 やっと落ち着いた彼女はそう叫ぶとまた泣きそうになる。マリアナさんとベアトリスが落ち着かせながら話を聞くと、どうやらお兄さんは盗賊を抜けようとして妹である彼女と町を目指したが途中で離ればなれになったという。


「ならば町の兵士に報告せねばなりませんね」

「助けてくれるの?」


 そう言われてジョルジさんとマリアナさんは目を伏せてしまう。女の子はそれを見て肩を落としてしまった。彼女と兄の状況を考えれば助けるよりも捕まえるのが町の兵士の役目になる。だがこの子たちは抜けようとしているんだから、捕える前に大人として出来ることがあるだろうと俺は思う。


「どちらへ?」

「散歩です」


「ジンちゃん駄目よ? 盗賊となるとひょっとすると裏ギルドが関わっているかもしれない。下手に手を出せば貴方が追われるかもしれない」


 マリアナさんにはジンちゃんと呼ばれているもう大分おっさんだけど。中身が幼いのか童顔だからなのか。それはさておき裏ギルド……盗賊たちに依頼を出している連中なのか? だとしたら町はそれをこそ取り締まるべきだろう。


「別に相手を殺す訳じゃないですし何とか話し合いで解決出来る場になるよう整えるだけです。ベアトリス、この子を頼む」

「ジン!」


 俺はそのまま宿を出る。盗賊に追われているとなると、前に俺が遭遇した辺りを探すのが早いだろう。急いで探さないと彼女の兄が危ない。全速力で飛ばして門まで行き、兵士の人には事情を話して外へ出て目的地に向かう。


「て、てめぇこの間の!」


 犯人は現場に戻ってくるじゃないが、またそこに盗賊が居た。俺は言葉を交わす前に相手の武器を叩き落し更に拳を腹へ叩き込んで無力化させる。これで冷静に話しが出来るだろう。


「おいお前が追い掛けてる奴は何処だ?」

「そ、それを探してるんじゃねぇか!」


「そりゃそうか。じゃあお前たちの親玉は何処だ?」

「言うかボケ!」


「死にたいのか?」


 俺はヘッドロックをし締め上げて行くと直ぐにタップしたので緩める。どうやら親玉の顔は見たことが無く、指揮しているのはほほに切り傷のある短髪の男らしい。そいつはアリーザさんの居る村の近くの山に潜伏しているようだ。


「金やるから案内してくんない? 親玉と話がしたい」

「で、出来るか! そんな真似したら殺されるに決まってるだろ!? 裏切りだぞ!?」


「それもそうか……なら帰って親玉に伝えてこい。冒険者ジン・サガラがあの子ら兄妹の安全を護る為に来た。手を出すなら容赦しないとな!」


 声を低くし耳元で言うと盗賊は身震いした。別に迫力何かないだろうにと思いながらヘッドロックを解くと、盗賊は地を這いながら逃げ出した。これで親玉も来るだろうがその前に確保しないと。




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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