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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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デラウンの喧騒

サラティ様が止めに入るのかと思ってそのまま放置していたが、彼女はエレミアやウィーゼルに挨拶し御喋りに花を咲かせていた。長い付き合いの上で止めないのであれば、こちらもそれにならうのが良いだろうと考え、他の人たちが近付かないよう警備するため距離を取る。


長い間言い争った挙句、そこまで言うなら本気でやってやるとリオウが言い始め、クルツさんも受けて立つと言い得物を抜き放った。主審のジャッジを待とうとサラティ様に視線を送るも、どうやらこれはファールではないらしい。


ならばと警備を継続するべく一般市民の方々に近付かないよう声を掛け場を整理する。やがてリオウも腰に佩いていた剣を抜き放つと二人は剣戟を交わす。リオウは自分が強いから喧嘩を吹っ掛けたのだろうが、うちの兄弟子も負けてないはずだ。


以前もリオウはクルツさんを出来損ないだと言っていたが、生まれた時から離れるまでの出来事からそう思っているに違いない。今回はリオウがいつもの得物ではないからか篭手剣二つのクルツさんに押されており、本人も少し驚いている顔をしていた。


男子三日会わざれば刮目して見よ、という言葉を思い出す。リオウも色々な物を背負って戦って来ただろうが、クルツさんも大小の違いはあれど同じだし師匠だって鍛えておかないはずはない。二人の白熱した戦いに、周囲も足を止めて見始めしまいには歓声を上げ始める。


両者一歩も引かない状態ではあったが、手数の多さを覆すまでにはいかずリオウは攻めるよりも守る方が多くなり始めた。主審のジャッジは下されず、相変わらず会話に勤しんでいる。クルツさんは鎧を着ているが、リオウは着ていない。


このまま行けば深手を負う可能性があると考え、後ろで手を組んでいたのを解きいつでも止めに入れるような態勢をとった。


「随分と面白い催しを行っているな。ジン、君の発案か?」


 歓声が不意に止んだので辺りを見回していると後ろから声がかかる。見ればナビール氏がお供を連れ人垣を搔き分けて現れた。右手を胸に当て一礼し道を譲るように脇に移動する。彼はそのまま前へ進み二人に近付いて行く。


得物を振り回せば当たる位置まで移動すると腰に手を当て足を止めた。リオウもクルツさんも気付いているだろうがまったく止める気配はない。近くにいるノーブル君に視線を向けると笑顔でその様子を見ている。


何を呑気なと思いながら視線を三人に戻した時、ナビール氏の肘から手の先までが光った。あれはなんだろうと考えている間にガチッという音が聞こえ、見ればナビール氏がクルツさんの得物を手で掴んで止めている。剣戟を交わしていたリオウの得物はどうしたのかと見たが手には無く、行方を捜して周囲を見回したところ、宙を舞いノーブル君の方へ飛んで行った。


落ちて来た剣の柄を掴み地面に突き立てたのを見て、観客は歓声を上げる。声援に応えるべくノーブル君は手を上げて愛想を振りまいていた。


「見世物としては面白いが、道端での大道芸は困る。気が済まぬというなら私の屋敷で引き続きやると良い。だが国を救い星を救った英雄を差し置いてやるものではないと思うがな。これ以上ノガミの名に泥を塗るというなら私が相手になる」


 最初の口調は優しく穏やかだったが、最後は声が低くなると同時に場が重くなるほどの気を発する。嘘ではないという意思が見え、無いとは思うが二人が引かない場合を考えゆっくりナビール氏の横へ移動した。


「すまんな、ジン。私が来るよう言った約束を守って顔を出してくれたというのに、甥っ子たちが君に迷惑をかけてしまった。いや、これまでもそうか」


 横に行き足を止めると、ナビール氏は先ほどの優しく穏やかな口調に戻り謝罪をしてくる。こちらこそ騒ぎを大きくしたようで申し訳ないですと謝罪したが、あれが止めないのなら仕方がないと小さく笑いながら言った。


あれ、というのはサラティ様のことで、恐らく彼女の方が先に生まれているだろうが、ナビール氏は親のような感覚でいるのかもしれない。小さい頃から王の娘というだけで多くを背負わせ過ぎた、と彼は小さく呟いたあとで周囲にいる市民に謝罪して回り、リオウやクルツさんそしてこちらに屋敷へするよう促した。


市役所から北西に進んで行くと住宅街が現れる。ここには市の上層部だけでなく、高位冒険者も住んでいるとノーブル君が教えてくれた。先ほどの市役所前の混雑はここに入るためのものかと聞くと、ここではなく北北東の住宅街の入居希望者を募っているという。


なにかあったのかとたずねたところ、その件でジンに相談があるとナビール氏から言われる。エレミアやシシリーそれにウィーゼルと顔を見合う。塀が見えてくると同時に大きな屋敷が現れた。ナビール氏のお供たちが先行し、屋敷の大きな鉄の門を二人で押して開ける。


中を見ると執事とメイドたちが道をはさむように並んでおり、こちらへ向けて一斉におかえりなさいませと声を上げた。



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

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