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竜神教道場

「ご苦労様でした。注文通りの量ですね」


 教会に戻るとティーオ司祭に出迎えられたが、見ると教会の長椅子を埋め尽くすほどの人がそこに居た。今日は竜神教の記念の日らしく、礼拝の為に人が集まっているという。薬草を受け取ると依頼書にサインをして俺に渡すだけで終わる。


シスターもベアトリスと顔芸で挑発し合っていたが、ティーオ司祭に襟首を掴まれ教会に連れて行かれて扉が閉まった。俺たちはこっそり窓からその礼拝を見たが、皆ティーオ司祭の言葉を手を組みながら聞いていて、ティアナもシスターらしく振舞っていてる。


何か怪しい儀式とか無いかと見ていたが、ティーオ司祭の言葉が終わると皆で暫く黙祷しその後はワイワイ食事をし始めた。それを見て御腹が空いたので俺たちもギルドへ戻り報酬を受け取ると宿へ戻って食事をしてその日を追える。


「ベアトリスさ~ん、居ますか~? 居ませんか~?」


 運良く朝焼け前に目が覚めたので手紙を書いて部屋を出る。抜き足差し足忍び足で受付まで移動し、ジョルジさんにベアトリスが目覚めたら手紙を渡して欲しいと頼んで宿を出る。


ちょっと出かけてくるとだけ書いたが、道場の門下生になると言えばベアトリスは冷静に話せるか心配だった。こないだの魔法使いみたいなのが事件に絡んでいるとすれば、彼らから教わることで対応出来るだろうと思っている。ベアトリスのお兄さんに会うだけでなく取り戻すにはそこは避けて通れないだろう。


考えながら歩いていると直ぐに教会に着き、戸を叩くとシスターが出て来て丁重に中へ案内してくれた。


「いらっしゃいジン殿。掛けて下さい」


 俺と向かい合う様に座るティーオ司祭とシスター。いつもと全然違うシスターがめっちゃ気になるんだが、そこ突くと先に進まない気がするので敢えてスルーして例の道場の件を切り出す。俺としてはこのまま力任せのままだと何れ行き詰る……だけならまだしも死に繋がる気がしていて、戦い方を学ぶチャンスがあればと思っていると伝えた。


「それは良い心掛けですね。冒険者もピンからキリまで居ますがジン殿のように何れ行き詰り、師匠に付いて学ぶ人も居ればそのまま自己流で行く人も居ます。後者の方が伸び辛いですが伸びればその流派の初代となる可能性もありますから悪くはありません。対して師に付くと戦いの術を学べるほかに人脈も広がります。例えば知識を得たい場合見つけやすくもなりましょう」


 確かに営業でもウケが良かった場合他を紹介して貰えたりした。それにイベントの穴が開いた時にも真っ先に声を掛けて貰えて、そこから長期で売り場を貰えたりってのもあったな。特にこの世界に俺は親類縁者が居ない。宗教に入るのは抵抗があるが、それとは別で人脈が作れるなら良い機会だ。


当然良い面ばかりでは無いだろうし、竜神教に入信を進められない訳はない。そこはしっかりと伝えねばと思い告げると、ティーオ司祭は笑顔で頷きそれで良いという。何故かと尋ねると、伝統を守り続けている面が強い為、誰彼構わず入信を進めたりしていないからだそうだ。


「人との相性のように、こういったものも相性がありますから無理に入信を進めたりもしません。魔法は教えられませんが、身を護る術は誰でも身に着けておいた方が良いと思っています。月謝は高いですがその分しっかり教えさせて頂きますので」

「よ、宜しくお願いします!」


 署名した紙と月謝五十ゴールドを渡し晴れて竜神教道場の門下生となった。早速戦い方を教えてくれるのかと思いきや、先ずは基礎体力の測定をするという。シスターに続いてこの町の周辺を走って来いという指示だった。


門下生になったからには俺は学ぶ側なので指示に従い走るべく外に出る。シスターは一緒に外へ出ると俺を見てニヤリと嫌らしく笑ってからいきなりダッシュした。不意を突かれたが俺も後に続くべく走り出す。


測定というだけあって手加減や気にする様子はない。これは頑張らねばと気合を入れてシスターを追う。だがしかしあのシスターめっちゃ早くて追いつけない。差を広げられないよう頑張ったが徐々に距離を離されていく。


道も当然平たんでは無いし木々を潜り抜けて進んでいる。シスターは綺麗に避けながら速度を落とさず進み、俺は急に現れる木を気にして走るので仕舞には後ろから追われた。


 その後教会に戻り腕立て伏せや腹筋背筋スクワット、木登りやジャンプ力チェックなど学生時代の体力測定の様なものをお昼前まで行い終了した。今日の結果を踏まえて明日から俺の鍛錬を始めると言うので早朝鍛錬を行う方向になるという。


「あくまで冒険者家業がメインですからね。その為の鍛錬なので本末転倒にならないようにしていきましょう。ではまた明日」


 終始態度が大人しいシスターに突っ込む気力も無く教会を後にする。一旦宿に戻るとジョルジさんからベアトリスは今調理場でお手伝いをしていると聞く。何となくこのまま行くのは気が引けたので、一旦出て花屋さんで一輪花を買いそれをもって調理場へ赴く。


「お、おはようございます」

「もうお昼だけど」


「す、すいませんでした! 早く目が覚めたのでそのまま出掛けちゃって! これホンの気持ちです!」


 三角巾とエプロンを付けたベアトリスはフン、と鼻を鳴らして片付けに移ってしまう。俺は花を持ったまま追い掛けるが皆の邪魔になっているので花瓶を一つお借りして一度部屋に戻り、鎧と盾に篭手を脱いで食堂へ戻った。


そしてベアトリスと同じ格好をしてお手伝いを共に暫くした。最初は怒られながらもお昼の時間帯の忙しい中一緒に作業をし終えると


「しょうがないオジサンだなぁ」


 と言ってお詫びの花を受け取ってくれた。









読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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