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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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神の子孫

大先生(おおせんせい)の背中しか見えないので少し横にずれてクロウの顔を見ようと試みる。彼は顔から手を放して大先生を見ていたが、一瞬白髪で皺の多い顔をした老人に見えた。目を擦るとミカボシに戻っていて幻術にでもかかっているのかと不安になる。


「彼は君の子ども……ではないね」

「面倒を見ていた子どもです。知人の勧めで園の経営に参加してみたのですが、まさかこんなことになるなんて思ってもみませんでした」


「だから彼には不思議な雰囲気が漂っていたのか」

「私だけの影響ではありませんし、私がここに居ると言うことは彼をここに送ったのも私ではありませんわお義父(とう)様」


 大先生の言葉を聞いてクロウはしばらく視線を落とした後、目を丸くし前を向く。徐々にその顔は悲嘆に暮れた表情をし始めた。


「そんなまさか……」

「お義父様は彼のことで頭が一杯だったのですから無理もありません。それに息子は生まれたばかりのころは普通の人間と変わりませんでしたし、目に入らなくても仕方が無いかと」


 生まれたての先生が普通の人間と変わらなかったという話を聞き、医者になったのはそういう経緯かと納得する。先生が最初から能力を使えていれば、医者になるよりもっと多くの人を救いに行くタイプだからだ。


園の子どもたちの面倒を見ながらも勉強を怠らず、合間に単語帳を開いていたのを思い出す。才能というより努力の人というイメージがあった。大先生も自慢の息子であり、とても仲が良い親子だ。大先生が日本に来たのも、クロウとの距離を取りたかったのかもと考える。


大先生はクロウの息子と結婚したのだから、その父親である彼のことをよく知っていた。一応顔を見せただろうが、最高の息子と比べて無能力者の孫など興味があるはずもない。息子を蘇らそうと生命の禁忌を犯そうとする義父に、何かのきっかけで息子が目を付けられたらと考え離れたのだろう。


こんなことを言いたくはないが、素材としたら彼の目指す先に辿り着くためには最高の人材だと思った。孫が無能力者でも繰り返して行けば最高に辿り着く、そう考えてもおかしくはない。三鈷剣(さんこけん)を握る手に力がこもる。


先生の話を聞いてクロウの考えが変わる可能性があった。ならば今この瞬間を逃さず空間に閉じ込めるか、銀河の果てまで吹き飛ばさなければ先生が危ない。負い目を感じた先生のことだから、きっと家族を持って幸せになろうとしてくれるはず。


この世界でのことはここだけで御終いにしなければ駄目だ。エレミアやアリーザさん、パルヴァにクニウスたち巻き込まれた人たちを完全には元に戻せないだろうが、クロウによって続いた不幸が終われば少しは救われるだろう。


 創造神は押し黙り顔も硬直したまま俯き動かない。チャンスはここしかないと考え大先生の様子を窺っているものの、間に立ったまま動こうとしなかった。どうする? ここは強引にでも仕掛けていくべきじゃないか?


自分の中で自問自答しながら動こうとした時、突然笑い声が起こる。驚いてミカボシを見ると目をひん剥いたまま空を見上げながら笑っていた。才能を見抜けなかった自分を笑っているのかなんなのか知らないが、もう語ることもないだろうし止めを刺そうと大先生の横を通り前へ出る。


「下がりなさい、ジン」


 笑うのを止めこれまでで一番穏やかで優しい顔をしてクロウは言った。なにをいまさらと思って前に出ようとしたが足が動かない。圧を感じるどころか心は平穏そのもので、なにが起こっているのか分からず剣を振ってけん制しようとしたが腕も動かなくなる。


「聞こえないのか? いけないな君は……私にとっては身内のようなものだと理解した。ならば私の指示には従わなければならない。もう一度言う、下がりなさい」


 抵抗しようとしたものの、自然と足が後ろに動き出し大先生の後ろへ戻されてしまった。自分の体が自分の思い通り動かないとはどういう理屈なのかと困惑する。


「よろしい。あとはその剣を捨てて元の姿に戻りなさい。私たちは敵対する必要は無いんだ、寧ろ手を取り合って助け合おう」


 アリーザさんを無理やり止めておいていまさら何を言ってるんだ、と怒り心頭だったが手から剣が落ちてしまい顕現不動(けんげんふどう)モードが解除されてしまう。


「素直でいい子だ。さすがあの子が残した者に繋がる子だね。安心するといい、君には最高の外殻装着を用意するし、異世界人として先に私に合流した勇者コウという者がいる。きっと仲良く出来るはずさ」


 訳の分からないことをと思いながらも体が勝手に傅いてしまう。どういうことだと思っている時、ふとこの世界の人間がクロウによって作られたという話を思い出した。この体も彼の手によるものだから逆らえないのか!?


抵抗を試みようとするも食いしばることすら出来ず、体のコントロールが不能になっている。このままではクロウをぶっ飛ばすどころかこっちが殺されるのを待つだけだ。奴を倒すために先生の名前まで出したというのに、こんな情けない終わり方じゃ顔向けできない……動け、動いてくれ!


「ミレーユなにをするつもりだ? 無駄な抵抗は止すん」


神殺槍(ロンギヌス)



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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