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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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羽が止まる

危険を察知し、激痛を抑え込んで素早く立ち上がり三鈷剣(さんこけん)を構えた。剣も感じて切っ先を左に向けたので視線を向ける。ゆっくりとした動きに見えたはずなのに、あっという間に目の前にクロウは迫ってきた。素早く剣が反応してくれ斬りつけたものの、そこに彼の姿は無い。どこへ行ったのかと考え始めるより早く、剣が右へ薙ぐようにして体を強引に後ろへ向けさせるように移動する。


いつの間にか手に持っていたクロウの竜殺し(ベオウルフ)が背中に迫っていたが、辛うじて受け止めた。踏ん張り堪えたが持たずに吹っ飛ばされる。動きが目で終えず、クニウスはこんなものとこちらが戻るまで戦っていたのかと感心する他無い。


目で終えないならばと一生懸命見ようとするのではなく、剣に逆らわずに動きつつ気を感じ取るのをメインにするため、丹田に集中し体をリラックスさせた。先ほどまで恐怖と痛みが先に立ち、剣とズレていたようで今やっと一体となった気がする。


「……意味が分からないなお前は」


 力で対抗しても持っていかれて隙が出来るので、剣と共に力を逸らすことに全力を注ぐ。今はいわば立ち上がりだ。のんびりしていたところに急に強烈な力をぶつけられ、出鼻をくじかれ後れを取ったのを取り返さなければならない。


一撃一撃受けるだけで衝撃波が飛んで来るが、強烈な攻撃なのはいまさらの話なので驚かずに受け止めた。相手のリズムに合わせつつそれを読み、先ずは完全に勢いを殺しきることが目標だ。受け流している時に衝撃波によって体が浮くのも慌てず受け入れ、変な態勢でも剣の流れを見極め体を動かす。


三鈷剣がバランスが崩れたところをフォローしてくれているのもあって、だいぶ避ける受け流すことに関してマシになっていった。ここまで見ているとクロウも体がバランスを崩しそうになった際には、羽を羽ばたかせバランスを取っている。


ちょっとやそっとであれを崩せたりはしない。ワンチャンスを逃さないようにしたいが、それを願うよりもタイミングを計ることに集中しよう。


「外殻装着も出来ず魔術や魔法の素養も無い、ただの人間のはずなのになぜ僕の攻撃を避けて受け流す!?」


 顕現不動(けんげんふどう)モードのお陰だろう。この世界の神様ではない神様が力を貸してくれているから成しえるのだと思った。剣を握ってまだ日が浅いし武術者としても年数は浅い。すべてこの世界に来て見に付けたものだから、昔喧嘩を売られて買い続けていた時が一時あったくらいでそっちの素養も無いだろう。


才能や素養のあるなしを考えると悲しくなるので置いておくとして、クロウは日本語を知っているのかというのが気になった。いや、日本を知っていてたとしても天使(あまつか)とは読まないか。特殊なこともあってクロウは気付かずにいたんだなと納得する。


「クロウ、お前は日本語がわかるか?」

「突然何の話だ?」


「天使先生の”天使”は”あまつか”と読むが、多くの人は”てんし”と読む。英語で言うと”エンジェル”だ」

「だから?」


「ラファエルは天使だよな」


 力強い振り下ろしが来たので剣を合わせず避けて飛び退く。こちらを追わずに剣を振り下ろしたまま地面を一点に見つめていた。先生の名前を出さずに終われないのは残念だが、出し惜しみ無しでなければ情けない話だが勝てない。


心の中で先生に詫びながら、動かない彼の言葉を待ちつつ回復をする。しばらく待っているとようやくこちらに視線を向けたが、目から怒りが消え子どもが迷子になったかのような表情になり明らかに困惑してた。


「正直こっちに来るまで影響があるとは分からなかったが、幼少の頃から先生のお世話になっていた。恐らく俺があなたに対抗できるのはそれがあるのかもしれない」

「そんな馬鹿な……」


 唖然とし手から剣を離して顔を覆う。圧倒的な力による圧は無くなり、別世界のような空気が周囲に漂う。こちらを見ていない今こそ風来石(ふうらいせき)雷光石(らいこうせき)を使うタイミングか、と思い胸元に手を入れる。


「お義父(とう)様、御久し振りです」

 

 突然大先生(おおせんせい)が後ろから現れクロウとの間に立った。まだ起動させるタイミングではないのだろうと察し、直ぐに胸元から手を離す。剣を握りながらいつでも対応出来るように気を張りながら、大地からエネルギーを分けてもらえないか試してみる。


「ミレーユ……君までここに来ていたのか」

「お義父様はこちらで神様をしていたから分からないかもしれませんが、あちらではもうだいぶ時が過ぎました」


 優しく少し笑いながら大先生はクロウに語り掛ける。クロウの息子であり大先生の旦那さんが亡くなってから、彼はこの世界に閉じこもっているのだろう。大先生は追う先生で、クロウに知られないよう名字を天使に変え園を運営していたと思うから、わからなくても無理はない。


お陰で今回のチャンスに繋がった。これが無かったらもっと早い段階で殺されていたはずだ。


「さっき放った魔法をジンが防げた理由がわかったよ。君がやっていたんだね」

「その通りですお義父様。こちらの世界で初めてお義父様の力を受けましたが、まだまだ現役ですね」



読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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